仮想通貨の空売り(ショート)は、価格が下落しそうな局面で利用する取引です。空売りでは、高値で売って安値で買い戻すことで利益獲得を狙います。
しかし、空売りに馴染みのない人もいるのではないでしょうか。「保有していない通貨を売れるのはなぜ?」「ロスカットとは何?」など、疑問を持っている人は多いはずです。
そこで本記事では、空売りの仕組みをわかりやすく解説します。
解説者
仕組みを理解して、ぜひ空売りに挑戦してみましょう。
※以下の情報は、すべて2022年7月現在のものです。
目次
仮想通貨の空売り(ショート)とは
仮想通貨の空売り(ショート)とは「高値で売って、安値で買い戻す」という取引手法です。
たとえば「1BTC=300万円のときに1BTCを売り、1BTC=200万円のときに1BTCを買い戻す」のも空売りです。この場合、100万円の利益を獲得することになります。
仮想通貨トレードで空売りが用いられるのは、主に「仮想通貨FX」や「無期限契約」という名前の取引を利用するときです。
仮想通貨FXや無期限契約では、実際に通貨の受け渡しは行われず、売却価格と購入価格の差額のみをやりとりします。そのため、持っていない資産を先に売ることができるのです。
なお、以下のように「安値で買って、高値で売る」という一連の取引のことを、ショートに対して「ロング」と呼びます。
ショート | ロング | |
取引の流れ | 売りから入り、買い戻す | 買いから入り、売る |
利用するタイミング | 価格下落が予想されるとき | 価格上昇が予想されるとき |
仮想通貨のトレードで稼ぐには、ショートとロングを適切に使うことが重要です。
仮想通貨の空売り(ショート)のメリット
仮想通貨の空売り(ショート)の主なメリットは、以下の3つです。
それぞれ確認して、空売りの理解を深めていきましょう。
下落相場で利益を狙える
仮想通貨の空売り(ショート)を利用すれば、価格の下落相場で利益を狙えます。空売りでは価格が高い時に売却、価格が低い時に購入することで利益を出すためです。
仮想通貨でトレードを行うなら、空売りは必須の取引です。買いから入る取引(ロング)だけでは、上昇局面でしか利益を狙えません。しかし、空売りも活用できるようになると、上昇局面でも下落局面でも利益を狙えるようになります。
仮想通貨の価格は上がることも下がることもあるので、空売りができたほうが稼げるチャンスが多くなります。
リスクヘッジができる
仮想通貨の空売り(ショート)を活用すれば、リスクヘッジができます。
価格が下落すると、当然保有している通貨の価値も下がります。また下落相場では、通常の「買って売る」という取引では利益を出しにくいです。
このように下落相場では、「保有資産が減る」「利益を出しにくい」という二つの点により、大きく不利になってしまいます。
空売りを行っておけば、下落相場のダメージを軽減できます。価格が下がるほど、空売りにより獲得できる利益が大きくなるためです。
仮想通貨は価格が乱高下しやすい資産です。空売りをしておけば、大幅な下落時でも心に余裕を持つことができます。
レバレッジをかけられる
「レバレッジ」をかけられることも、仮想通貨の空売り(ショート)を利用するメリットです。レバレッジを利用すれば、自分が担保として預け入れた金額以上の取引ができるので、少額でも大きな利益を狙えます。
レバレッジをかけるとリスクも高まるので、注意が必要です。たとえばレバレッジ10倍の場合、1万円分の損失が、10万円分の損失になります。
レバレッジを何倍にするかは、しっかり考える必要があります。何倍にすべきかわからないうちは、2倍から試していきましょう。
仮想通貨の空売り(ショート)のデメリット
仮想通貨の空売り(ショート)には、以下のようなデメリットもあります。
それぞれ説明します。
意図せず決済される可能性がある
仮想通貨の売り注文(ショート)は通常、自分が好きなタイミングで買い(決済)を行うことで取引が完了します。しかし、売り注文後に価格が大きく上昇すると、強制的に決済が実行されることがあります。
取引所ごとに決められた価格になると、自動で決済が行われる仕組みになっているためです。強制決済の価格になってしまったら、決済を防ぐことはできません。
しかし、強制決済の価格になる前なら、「預けるお金を追加する」「レバレッジを下げる」など、強制決済が起こりにくくする対策は取れます。
また「レバレッジを数倍程度にしておく」「預けた資産の一部のみを取引に用いる」などの工夫をすれば、多少の価格変動では強制決済が起こらなくなります。
レバレッジをかけすぎるとリスクが高くなる
仮想通貨の空売り(ショート)には、前項で説明したような強制決済のリスクがありますが、高いレバレッジをかけると、強制決済のリスクは増大します。
レバレッジが高いほど取引金額が大きくなり、少しの価格変化でも大きな含み損を抱えるためです。
かけるレバレッジが高いほど、取引はハイリスク・ハイリターンになります。そのため、高いレバレッジは「ここぞ」という場面では有用ですが、相場が不安定な場面では危険です。
かけるレバレッジは自分で決められることが多いので、状況に応じて設定するようにしましょう。
仮想通貨の空売り(ショート)ができる取引所|手数料も紹介
仮想通貨の空売り(ショート)ができる取引所を4つ紹介します。
各取引所ごとの手数料もまとめます。取引所選びにお役立てください。
bitFlyer(ビットフライヤー)
「bitFlyer(ビットフライヤー)」は、空売り(ショート)ができる国内取引所です。
bitFlyerでは「Lightning FX」と「Lightning Futures」で空売りができますが、ここでは自分の好きなタイミングで決済ができるLightning FXの空売りについて紹介します。
サービス名 | Lightning FX |
手数料 | ・売買手数料:無料
・スワップポイント:ポジション金額の0.04%/日 ※LightningFXでのレバレッジ手数料のこと |
最大レバレッジ | 2倍 |
強制決済のタイミング | 証拠金維持率50%未満 |
取扱ペア | BTC/JPYのみ |
その他 | – |
※2022年7月現在
bitFlyerのLightning FXでは、レバレッジ2倍までの空売りが可能です。毎日「スワップポイント」という手数料が発生するため、長期のリスクヘッジにはあまり向いていませんが、人気の国内取引所なので、空売りを試してみたい人は利用してみましょう。
DMM Bitcoin(DMMビットコイン)
「DMM Bitcoin(DMMビットコイン)」は、空売り(ショート)ができる取引所です。DMM Bitcoinで空売りができるのは「レバレッジ取引」というサービスです。
サービス名 | レバレッジ取引 |
手数料 | ・売買手数料:無料
・レバレッジ手数料:ポジション金額の0.04% ※BitMatch取引利用時は別途発生 |
最大レバレッジ | 2倍(固定) |
強制決済のタイミング | 証拠金維持率50%未満 |
取扱ペア | 28種類 |
その他 | – |
※2022年7月現在
DMM Bitcoinにおける「レバレッジ取引」は、仮想通貨FXを指しています。仮想通貨FXは短期の売買に向いた手法のため、DMM Bitcoinでできる空売りは、長期のリスクヘッジにはあまり向いていません。
しかし、DMM Bitcoinには以下のような魅力があります。
- 大手DMMグループが運営
- 取引画面が非常にシンプル
- LINEでの質問が可能
比較的初心者にも使いやすい取引所のため、「難しいものは苦手」という人は、DMM Bitcoinを利用してみてください。
Binance(バイナンス)
海外仮想通貨取引の「Binance(バイナンス)」では、以下のようなサービスで空売り(ショート)が行えます。
- マージントレード
- USDs-M
- COIN-M
ここでは人気の高い「USDs-M」の空売りについてお伝えします。
USDs-M | |
手数料 | ・売買手数料(Maker):0.02%
(BUSDで支払う場合0.012%) ・売買手数料(Taker):0.04% (BUSDで支払う場合0.027%) ※いずれも初期状態(「一般ユーザー」)の手数料 |
最大レバレッジ | 125倍 |
強制決済のタイミング | 証拠金維持率100%未満 |
取扱ペア | 100種類以上 |
その他 | ・日本語対応
・市場状況によって資金調達率の付与もしくは徴収が行われる |
※2022年7月現在
USDs-Mは「無期限契約」と呼ばれる取引です。無期限契約は長期間の取引が可能なため、リスクヘッジにも向いています。
Binanceには、預けるだけで利息を得られるサービスなどもあります。本格的に仮想通貨取引を行う人には、Binanceの利用は非常におすすめです。
Bybit(バイビット)
海外取引所の「Bybit(バイビット)」では、以下のようなサービスで空売り(ショート)を行えます。
Bybitで空売りができる取引
- 証拠金取引
- USDT無期限
- インバース先物
- USDC無期限
ここでは人気の高い「USDT無期限」の空売りについてお伝えします。
USDT無期限 | |
手数料 | ・売買手数料(Maker):0.01%
・売買手数料(Taker):0.06% ※いずれも初期状態(「VIP0」)の手数料 |
最大レバレッジ | 100倍 |
強制決済のタイミング | 以下の価格未満のとき強制決済
「参入価格*(1-必要証拠金率+0.5%)」 ※必要証拠金率=取引に使った証拠金/参入価格*100 ※参入価格=取引に使った証拠金*レバレッジ ※計算式は取引額の大きさによって異なる |
取扱ペア | 100種類以上 |
その他 | ・日本語対応
・市場状況によって資金調達率の付与もしくは徴収が行われる |
※2022年7月現在
USDT無期限は永続的にポジションを保有し続けられる取引です。ポジションの長期保有が可能なため、リスクヘッジにも向いています。
Bybitは「複数の資産運用・取引メニュー」「期間限定イベントを積極的に開催」という点でも人気であり、仮想通貨取引の幅を広げたい人に非常におすすめです。
仮想通貨の空売り(ショート)に関するよくある質問
仮想通貨の空売り(ショート)に関するよくある質問と回答をまとめます。
Coincheck(コインチェック)で空売り(ショート)はできる?
2022年7月現在、「Coincheck(コインチェック)」で空売り(ショート)はできません。
国内取引所で空売りをするなら「bitFlyer(ビットフライヤー)」、銘柄の多い海外取引所で空売りをしたいなら「Binance(バイナンス)」がおすすめです。
bitbank(ビットバンク)で空売り(ショート)はできる?
2022年7月現在、「bitbank(ビットバンク)」で空売り(ショート)はできません。空売りをしたい人には「bitFlyer(ビットフライヤー)」や「Binance(バイナンス)」がおすすめです。
仮想通貨の空売り(ショート)のやり方は?
仮想通貨の空売り(ショート)のやり方は、選ぶ取引方法・取引所によって異なります。ここでは、「bitFlyer(ビットフライヤー)」の「Lightning FX」でBTC/JPYの空売りをする方法を紹介します。
手順は以下のとおりです。
- 口座開設と入金をする
- 仮想通貨FXのメニューの画面に進む
- レバレッジ(1倍か2倍)を選択する
- 通貨ペア(BTC/JPY)を決める(※)
- FX用の口座に取引に使う資金を預ける
- 金額と数量を入力する
- 「売り」をクリックする
- 「買い」をクリックして決済する
※2022年7月現在、通貨ペアはBTC/JPYのみ
売りは「将来の価格が下落する」と予測したときに行いましょう。決済(買い)は「損切り」もしくは「利確」をしたいタイミングで行います。
はじめのうちは操作に慣れるために、少額で試してみることをおすすめします。
仮想通貨の空売り(ショート)をしたら税金はかかる?
仮想通貨の空売り(ショート)により利益が出た場合、税金はかかります。正確に計算をして、納税を行いましょう。
税金計算や税金申告の方法は「ビットコイン(仮想通貨)の税金はいくら?計算方法やツールを紹介」を参考にしてください。
なお、利益が出ても申告が不要な人もいます。申告が必要か不要かは「仮想通貨の確定申告が必要な人は?課税のタイミングや計算方法を解説」で解説しています。
仮想通貨の空売り(ショート)のコツは?
仮想通貨の空売り(ショート)のコツは以下のとおりです。
- 少額から試す
- テクニカル分析を学ぶ
- 取引ルールを決めておく
なかでも重要なのは、自分なりの取引ルールを決めておくことです。ルールを決めないと「もうちょっと含み益が増えるまで待とう」「含み損が出ているが後で回復するのでは」と、都合の良い解釈をして負けやすくなります。
たとえば、以下のような取引ルールを定めます。
- 1カ月で利用するのは1万円まで
- 価格が10%上がったら必ず損切りする
- 価格が10%下がったら必ず利確する
仮想通貨の空売り(ショート)で取引の幅を広げよう
売り(ショート)ができるようになると、仮想通貨取引の幅が広がります。下落相場でも利益を狙うことやリスクヘッジができるようになるためです。
「売りから入る」と聞くと難しく感じるかもしれません。しかし、仮想通貨でよく使われる「仮想通貨FX」や「無期限契約」の空売りの仕組みは、売りと買いの差額をやりとりしているだけであり、非常にシンプルです。
「保有だけではなく、取引でも利益を出したい」という人は、国内取引の「bitFlyer(ビットフライヤー)」や海外取引所の「Binance(バイナンス)」などで、空売りをはじめてみましょう。