仮想通貨はボラティリティが高いため、売却した際に利益が出ることがあります。仮想通貨取引で得た利益に対して、確定申告が必要かどうか、疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、仮想通貨取引で一定の利益が出た場合、確定申告が必要です。確定申告を忘れると税金が追加されるペナルティが発生することもあります。忘れずに確定申告を行いましょう。
本記事では、払うべき税金の計算方法や、課税対象となる条件などについて、詳しく解説します。
※以下の情報は、全て2022年3月現在の情報です。
目次
仮想通貨取引にかかる確定申告の基本情報
仮想通貨取引で利益がでた場合は、条件によっては確定申告が必要です。
まずは、確定申告が必要かを判断するために、仮想通貨取引にかかる確定申告の基本情報を確認しましょう。
ここでは次の4点を解説します。
- 確定申告が必要な人
- 確定申告の期限
- 確定申告を怠った場合のペナルティ
- 仮想通貨取引で得た利益の税区分
確定申告が必要な人
確定申告が必要な人は、主に次の2つです。
- フリーランス・個人事業主の人
- 会社員など1社から給与所得を得ており、給与とは別に1年で20万円以上の利益が出た人
確定申告の有無は、仮想通貨取引の利益だけでは決まらないため、自身の置かれている状況を踏まえて判断しましょう。
また、仮想通貨を保有しているだけでは、確定申告の対象所得にはなりません。
仮想通貨の売却や仮想通貨を使って商品を購入したときに、所得が発生するためご注意ください。
確定申告の期限
確定申告の期限は、3月15日です。
毎年、2月16日から3月15日の間に、前年の1月〜12月分を申請します。
確定申告を怠った場合のペナルティ
確定申告を怠り、期限を過ぎて申請した場合は、期限後申告となり、ペナルティとして無申告加算税が発生します。
無申告加算税は、納付する税額のうち50万円までは10%の税率、50万円を超えた部分は15%の税率です。
ただし、確定申告の期限から1ヶ月のあいだに、自主的に申告をすると、無申告加算税はかかりません。
仮想通貨取引で得た利益の税区分
仮想通貨取引で得た利益には「所得税」が課され、「雑所得」に分類されます。
さらに、他の所得と合算できる「総合課税」に該当します。
仮想通貨取引と似てるFXは分離課税に該当し、計算方法が異なるためご注意ください。
また、利益が大きくなるほど税率がアップする累進課税です。
税率と控除額は次の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円~ | 45% | 4,796,000円 |
▲出典:国税庁 No.2260 所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
確定申告の対象となる仮想通貨にかかる利益
仮想通貨取引で利益が出た場合、確定申告が必要であることがわかったところで、課税対象になる利益項目を具体的に解説します。
課税対象になるのは主に次の3つです。
- 仮想通貨を売却したときの利益
- 仮想通貨で決済したときの利益
- 仮想通貨で他の仮想通貨を購入したときの利益
それぞれ解説します。
仮想通貨を売却したときの利益
仮想通貨を売却したタイミングで所得が発生します。
利益計算は次の通りです。
(仮想通貨売却時の価格)ー(仮想通貨の1単位あたりの取得価格)×(売却した数量)=所得額
仮想通貨の1単位あたりの取得価格とは、ビットコインであれば、ビットコインを購入したときの1BTCの価格です。
たとえば、次のような場合が対象です。
①3月1日に3BTCを300万円で購入
②5月1日に1BTCを200万円で売却
200万円 ー(300万円 ÷ 3BTC)× 1BTC = 100万円・・・所得
売却が所得発生のタイミングであるため、保有していて含み益が出ていても所得には関係ありません。
仮想通貨で決済したときの利益
仮想通貨で商品やサービスを購入し、支払いをしたタイミングで所得が発生します。
利益の計算方法は次の通りです。
(商品の価格)ー(仮想通貨の1単位あたりの取得価格)×(決済時に使用した数量)=所得額
仮想通貨の1単位あたりの取得価格とは、ビットコインであれば、ビットコインを購入したときの1BTCの価格です。
たとえば、次のような場合が対象です。
①3月1日に1BTCを80万円で購入
②4月1日に0.5BTCで50万円相当のPCを購入(ビットコインのレートが80万円から100万円に上がっている状況とする)
50万円ー(80万円 ÷ 1BTC)×0.5BTC = 10万円・・・所得
日本円に換金していませんが、10万円の所得が発生します。
仮想通貨で他の仮想通貨を購入したときの利益
仮想通貨で他の仮想通貨を購入した場合にも所得が発生します。
考え方は、仮想通貨で決済したときと同じです。
ビットコインの価格が上がったタイミングで、イーサリアムを購入すると差額が所得になります。
利益の計算方法は次の通りです。
(購入した仮想通貨の取得時の価格)ー(売却した仮想通貨の取得時の価格)=所得額
たとえば、次のような場合があります。
①3月1日に1BTCを80万円で購入
②4月1日に0.1BTCで1ETHを取引(ビットコインのレートが80万円から100万円に上がっている状況とする)
③取引時のイーサリアムのレートは1ETH=10万円
10万円 × 1ETHー(80万円 ÷ 1BTC)× 0.1BTC=2万円・・・所得
日本円に変えていないため、課税されないように感じますが、対象のためご注意ください。
確定申告が必要な仮想通貨収益の計算方法
確定申告が必要な利益がわかったところで、確定申告する際の金額の計算方法を確認しましょう。
例えば、1BTCが50万円のときに1BTC購入し、1BTCが40万円のときに売却した場合、差額の10万円が確定申告の対象です。
このように、1年に1度しか利確していない場合は、簡単に申請金額を算出できます。
しかし、売却の回数が複数になると計算が複雑になります。
そこで、仮想通貨の利益計算には、「移動平均法」と「総平均法」2つの手法が用意されています。
計算時は、どちらか好きな方法を選択すると良いです。
ただし、確定申告の際、税務署にどちらの方法で計算したのか「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出する必要があるためご注意ください。
ビットコインを下記の日程で売買した場合の計算例と合わせて、計算方法を解説します。
1月 | 3月 | 5月 | 10月 | 12月 | |
BTCレート | 10万円 | 20万円 | 50万円 | 120万円 | 200万円 |
購入数 | 2BTC | 2BTC | 1BTC | ||
購入価格 | 20万円 | 40万円 | 120万円 | ||
売却数 | 2BTC | 2BTC | |||
売却金額 | 100万円 | 400万円 | |||
保有数 | 1BTC | 4BTC | 2BTC | 3BTC | 1BTC |
①移動平均法
移動平均法は、仮想通貨を取引し利確するたびに取得価額と残高を平均し、所得を計算する方法です。
1年に2回利確した場合は、それぞれで得た利益を合計した金額が確定申告の対象になります。
利確のたびに計算する必要があるため、計算の手間はかかりますが、年度の途中でも所得の見積もりがわかるのがメリットです。
上記の表を例に、1年間の所得額を移動平均法で計算する場合、次のようになります。
①5月に利確したタイミングの所得
(10万円 × 2BTC + 20万円 × 2BTC)÷ 4BTC = 15万円・・・1月と3月のBTCの平均レート
2BTC × 15万円 = 30万円・・・7月に売却した2BTC分の購入(取得)金額
50万円 × 2BTC ー 30万円 = 70万円・・・7月の利確時の所得
②12月に利確したタイミングの所得
(15万円 × 2BTC + 120万円 × 1BTC)÷ 3BTC = 50万円・・・1月と3月と10月のBTCの平均レート
2BTC × 50万円 = 100万円・・・12月に売却した2BTC分の購入(取得)金額
200万円 × 2BTC ー 100万円 = 300万円・・・12月の利確時の所得
③1年間の所得(①+②)
70万円 + 300万円 = 370万円・・・所得合計(利益合計)
②総平均法
総平均法は、1年間の購入平均レートをもとに計算した取得価額の合計と、売却合計金額の差額(所得)を計算する方法です。
1年に2回以上の利確した場合にも、1度の計算で済むため手間が省けるのがメリットです。
ただし、購入金額・購入時のレート・売却金額・売却時のレートの記録を忘れないよう注意しましょう。
上記の表を例に、1年間の所得額を総平均法で計算する場合、次のようになります。
(10万円 × 2BTC + 20万円 × 2BTC + 120万円 × 1BTC)÷ 5BTC = 36万円・・・購入時のBTCの平均レート
2BTC + 2BTC = 4BTC・・・1年間に売却したBTCの合計数量
36万円 × 4BTC = 144万円・・・売却したBTCの総取得額
(50万円 × 2BTC)+(200万円 × 2BTC)= 500万円・・・1年間で売却により得た金額
500万円 ー 144万円 = 356万円・・・所得合計(利益合計)
今回のように、12月時点で保有しているビットコインがある場合、総平均法の方が安く計算されます。
しかし、最終的に支払う税金が安くなるわけでなく、翌年の利益として持ち越すため、同じと考えて問題ありません。
ただし、1度選択した計算方法を翌年以降も継続して使用するルールがあるため、自身にあった計算方法を選ぶことをおすすめします。
仮想通貨取引で得た利益を含む確定申告の流れ
確定申告する金額がわかったところで、仮想通貨で得た利益の確定申告をする流れを紹介します。
今回は、国税庁が発表している「スマホで確定申告(暗号資産編)」を参考に、確定申告の流れを解説します。
手順は次の3ステップです。
- 年間取引報告書を受け取る
- 確定申告書を作成・提出する
- 納税する
順番に解説します。
①年間取引報告書を受け取る
まず、仮想通貨取引の年間取引報告書を受け取りましょう。
仮想通貨の口座を開設している場合、仮想通貨取引所から、1月1日から12月31日までの1年間分の取引状況を記載した「年間取引報告書」が交付されます。
交付されていない場合は、仮想通貨取引所に問い合わせてみてください。
また、年間取引報告書を使用すると、総平均法での所得計算がしやすいため便利です。
②確定申告書を作成・提出する
年間取引報告書を受け取ったら、暗号資産の計算書を作成します。
国税庁のHPに「暗号資産の計算書(総平均法)」という資料があるため、それをダウンロードし、資料の指示に従って、所得計算を行います。
今回の方法では、移動平均法による計算は使用できないためご注意ください。
計算が完了したら、所得額を確定申告書に記載します。
仮想通貨の所得区分は「雑所得」です。
確定申告書が作成できたら、提出します。
書類の提出方法は、税務署へ郵送するか、電子申告(e-Tax)です。
ここまでの手順は、国税庁の資料「スマホで確定申告(暗号資産編)」で、画像付きで解説されていますので、詳しく知りたい方はご確認ください。
③納税する
最後に、確定した税金を納付します。
支払い方法は、
- 金融機関や税務署の窓口での現金納付
- QRコードを発行してコンビニエンスストアなどで納付
- e-Taxを使ったオンラインでの納付
があります。
仮想通貨取引の確定申告でよくある質問
仮想通貨取引の確定申告でよくある質問に回答します。
仮想通貨の確定申告はどこでできる?
仮想通貨の確定申告は、税務署またはWebで申請できます。
仮想通貨の確定申告だけが特別というわけではないため、通常の確定申告の中で雑所得に含めて申請します。
仮想通貨のマイニングで利益を得た場合は?
仮想通貨のマイニングで得た利益も確定申告の対象です。
また、ステーキングやレンディング、エアドロップなどの報酬で仮想通貨を受け取った場合も確定申告が必要です。
日本円に換金したタイミングではなく、報酬を得たタイミングで所得が発生するためご注意ください。
仮想通貨で商品を買った場合の確定申告は?
仮想通貨で商品を買った場合にも確定申告が必要です。
たとえば、次の手順で買い物をしたとします。
①1BTCが10万円のときに1BTCを購入
②1BTCが20万円のときに、1BTCで20万円相当のPCを購入
20万-10万=10万円が課税対象になります。
仮想通貨の売買で損した場合の確定申告は?
仮想通貨の売却により損失がでた場合は、利益額や他の項目との計算によります。
たとえば、1年間に次の2つの利確を行ったとします。
①1BTCが50万円のときに1BTC購入し、1BTCが10万円のときに売却して40万円の利益
②1BTCが20万円のときに1BTC購入し、1BTCが40万円のときに売却して20万円の損失
この場合は、40万−20万=20万円が課税対象になります。
また、仮想通貨取引による利益は雑所得に当たりますが、仮想通貨取引以外の雑所得とも損益通算ができます。
仮想通貨の売買で損した場合、他の税区分の利益と相殺できる?
仮想通貨の売却で損失が出た場合に、他の税区分で得た利益との相殺はできません。
たとえば、自社商品を販売して利益が出ていたとします。
そのときに仮想通貨取引で損失が出ていても、商品販売と仮想通貨取引は税項目が異なるため、足し合わせて相殺することはできません。
相殺できるのは、同じ税区分内の利益と損益のみです。
仮想通貨で利益が出たら確定申告をしよう
今回は、仮想通貨の取引により得た利益に対する、確定申告について解説しました。仮想通貨取引で得た利益を含め、年間で20万円以上の収入がある人は、確定申告が必要です。
仮想通貨に対して税金が発生するタイミングは、
- 仮想通貨を取引したとき
- 仮想通貨で決済したとき
- 仮想通貨で他の仮想通貨を購入したとき
と複数あります。収益計算が複雑なので、定期的に記録しておくのがおすすめです。
確定申告をしなかった場合、税金が追加されるなどのペナルティが発生します。忘れずに手続きを行いましょう。