更地渡しの注意点8つとメリット|更地渡しをおススメするケースとは
2020 06.4この記事はPRを含みます
更地渡しとは
更地渡しとは、不動産取引において売主の負担により建物などがない状態で、土地が買主に引き渡されることを言います。売主の責任で建物解体撤去が行われたのち、買主は何もなくなった更地を購入します。
更地渡しを行う場合には、必要な手順や注意点を把握しておくことが重要です。この記事では、更地渡しの流れや注意点について詳しく紹介していきます。
更地渡しの一般的な流れ
更地渡しを行う場合にはどのような流れになるのでしょうか。
更地渡し可として不動産の売却活動を行い、実際に更地渡しとして売却できた場合には、正しい手順にて手続きを行います。仮に売買に関する順序を間違えた場合は、思わぬトラブルやコストに発展する可能性もありますので、注意する必要があります。
ここでは更地渡しの一般的な流れを紹介します。
1:売買契約を締結する
更地渡しとして売買契約を締結しましょう。
更地渡しを行う場合、建物の解体に関する責任や負担は売り主側で受け持つことになるため、それらの更地渡しに関係する取り決めを売買契約書に追加する必要があります。
具体的には、「売主の責任と負担のもとで解体すること」「解体する建物の抹消登記に関する取り決め」「土地の瑕疵担保責任」の3点を加筆しましょう。さらに、売主と買主の双方で内容を確認し、売買契約を締結しましょう。
2:建物の解体工事
実際に建物の解体工事を行いましょう。
売買契約を締結し、さらに買主が住宅ローンを利用する場合は、金融機関の融資がおりるのを待ってから、解体工事の着手を行います。解体工事自体は業者に任せておけばいいため、売主がすることはありません。
ただし、近隣への工事前の挨拶などは解体業者に同行し、これまで付き合いのあった近隣の方へ挨拶が大切です。また、測量などを行う場合も必ず同行するようにしましょう。
3:引き渡し
建物の解体工事が終わったあとは、更地で決済と引渡しを行いましょう。
解体工事が終わったら、買主から手付金などを除いた代金の残額を受け取ることで引渡しとなります。建物が解体されて更地になれば、建物があった際にはわかりづらかった境界標なども確認しやすくなるでしょう。
また、引き渡し後には売主として建物滅失登記を行わなければならないため、解体後1ヶ月以内の登記を忘れずに行うようにしましょう。
更地渡しをおススメするケース
不動産売買の際には、更地渡しをした方がよいケースもあります。
不動産売買では建物が建ったまま、リフォームなども行わない「現況有姿」での引き渡しよりも、建物を解体する更地渡しの方がよい場合があります。
ここでは、更地渡しの方法が適しているケースを紹介します。
人が住めないほど古くなってしまった建物
人が住めないほど古くなってしまった建物は、解体して更地渡しをした方がよいでしょう。
建物は空き家になると急激に劣化し、人が住めなくなります。特に何十年も空き家になっていると、柱や建材が腐食したり、窓ガラスや瓦などが割れたりと非常に状態が悪くなります。
また、空家対策特別措置法により、空き家を放置していると勧告や指導を受けることもあるため、古く利用できない建物が建っている場合には、更地渡しを行ったほうがよいです。
アリクイ等によって弱くなってしまった建物
建物がシロアリの被害などで弱くなってしまった場合は、解体して更地渡しをした方がよいです。
築年数が比較的浅く、まだ利用できそうな建物の場合でも、アリクイの被害などで建物の強度が十分ではない場合には、更地渡しとするケースが適しています。
強度がない建物では、台風や地震などの災害時に倒壊する危険性があり、人命にも関わってきます。そのため、建物をそのままにしておくよりも解体してしまった方が安全です。
入居者が見つからない事故物件
建物内で孤独死や自殺などが発生した事故物件は、解体して更地渡しとした方がよいでしょう。
心理的瑕疵のある物件では、建物が綺麗に残っていても入居者を見つけることが困難です。その場合には、建物は解体し更地にした方がよいと言えます。
更地にしたのちであっても、売主には心理的瑕疵がある旨を告知する義務があります。ですが建物を解体することで、土地のコストパフォーマンスを優先する買主を見つけやすくなるでしょう。
更地渡しを行う際の注意点8個
更地渡しを行う場合にはいくつかの注意点があります。
一般的な土地と建物の売却と異なり、更地渡しを行う場合には気を付けなければいけないポイントがあります。更地渡しではいくつかの特定のトラブルが発生しやすいため、特に気を付けなければいけません。
ここでは更地渡しを行う際の注意点8個を紹介します。
注意点1:契約内容をしっかりと確認する
更地渡しを行う場合には、通常の契約内容に追加する内容をしっかり確認しましょう。
先に紹介したとおり、売買契約書には「売主の責任と負担のもとで解体すること」「解体する建物の抹消登記に関する取り決め」「土地の瑕疵担保責任」の3点が追加されます。
たとえば、売主の責任で一切の建物、工作物、立木などを撤去するといった内容や、瑕疵担保責任は負わないといった内容について間違いがないか確認しましょう。
注意点2:ローン特約は忘れずに
更地渡しを行う場合には、ローン特約の解除期限を設定しましょう。
ローン特約とは、買主の住宅ローンの申請が承認されない場合に売買契約を白紙として、売主は買主から受け取った手付金を返金するという仕組みです。
一般的に買主は住宅ローンの融資を受ける場合が多いので、ローン特約の解除期限内に金融機関からの融資承認を売主に示すことになります。トラブルに発展させないためにも、ローン特約について決めておきましょう。
注意点3:着工は買い手の融資承認後
更地渡しを行う場合には、買主が金融機関から融資の承認を得た後で、解体工事に着手しましょう。
さきほどのローン特約に重なる内容ですが、融資承認が下りない場合やローン特約の期限内を過ぎた場合には売買契約は解除されます。
そのため、解体工事に着手した後で、融資承認が下りずに売買契約が白紙になれば、費用が無駄になるだけでなく、売却の機会損失にもつながるので、必ず融資承認の提示を受けてから着工しましょう。
注意点4:クレームによる引き渡しの遅れ
更地渡しを行う場合には、近隣トラブルからのクレームによる引き渡し遅れに注意しましょう。
更地渡しを行うためには、現在の土地に立っている建物や構造物などを全て解体し、除去する必要があります。そういった工事において、もっとも注意すべきことは近隣トラブルです。
特に、騒音や振動などが原因でクレームなどが入り、解体工事が中断となってしまえば、引渡し日までに工事が完了せず、買主への引渡しが遅れる場合もあります。
法的トラブルに発展することもある
解体工事が遅れて引渡し日に間に合わなければ、法的トラブルになる可能性もあります。
引渡し日に間に合わない場合、契約内容にもよりますが、債務不履行による損害賠償請求や、契約解除などの法的トラブルに発展するリスクもあります。
さらに、クレームが来ている最中に万が一事故でも発生すれば、話がややこしくなってしまい、最悪の場合は、裁判沙汰にまで発展するような大きなトラブルを生む可能性もあります。
注意点5:近隣への騒音・振動
近隣トラブルは、主に解体時の騒音や振動が原因になります。
解体の際に近隣の人が気になるのは、工事の期間中に出る騒音や振動です。売主が解体工事を行う際は、近所の住人に配慮をしなければ予期せぬクレームに繋がる可能性があります。
そのため、工事を開始する前に近隣の方へ配慮を行い、クレームを生む可能性を低くする必要があるでしょう。
事前のあいさつが必要
近隣の方からクレームが入らないように、事前に挨拶を済ませておきましょう。
先ほども説明したとおり、近隣トラブルを避けるためにも、解体工事の前の解体業者の挨拶周りには同行し、一言自分でも挨拶をするなど、致命的なトラブルに発展させないように十分な注意を払うことが大切です。
また、その際には、工事の説明資料などを渡しておくとより良いでしょう。
トラブルは引き渡しの遅れになる
近隣の方からのクレームや工事の際の事故は、更地渡しでの引き渡しにおいて、遅れに繋がります。
工事の際における騒音や振動はどうしようもないことですが、毎日そういったものに晒されていれば、近隣住民の方のストレスも溜まります。
クレームが入り工事がストップすることは、引き渡しの遅れに繋がりかねませんので、売主としてクレームが入らないようにできるだけの努力を行いましょう。
騒音や振動を減らす工夫をする
解体業者には、騒音や振動に十分配慮するようお願いをしておきましょう。
工事期間中のトラブルやクレーム、事故などを発生させないためにも解体業者には十分留意して工事を進めてもらうことが大切です。
そのためにも、こういった配慮をしてもらうべく、事前に業者へと依頼しておきましょう。
注意点6:固定資産税の扱い
固定資産税の清算のタイミングには気をつけましょう。
固定資産税はその年の1月1日時点での所有者に課税されます。しかし、たとえば年末までに解体工事を終えて建物抹消登記を行った場合、翌年の1月1日時点での固定資産税は小規模宅地の特例などの特例措置が適用されなくなるため、納税額が大幅に増額されてしまいます。
そのため、年をまたぐ場合には解体工事や決済、引き渡し日についてよく検討し、相談するようにしましょう。
注意点7:解約手付と違約金
解約手付と違約金についての取り決めには十分注意しましょう。
解約手付とは、売主や買主が契約履行に着手するまでの間、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を返すことで、契約を解除できる性質を持つ手付金のことです。
今回の場合、売主が解体工事に着手した時点で契約解除は不可になり、その後の解約には違約金が発生することになります。解約手付と違約金は似ているようで異なりますので、契約の際にはよく理解しておきましょう。
注意点8:地中埋設物の対応
解体工事の際には、地中埋設物の存在に注意しましょう。
現在は産業廃棄物について法規制がされていますが、一昔前にはずさんな廃棄物処理が行われていたため、地中に住宅を解体した残がいが埋まっていることもあります。
そのため、解体工事の際には、埋め戻しによる地中埋設物が存在する可能性があるため、よく注意しておきましょう。また、過去にも解体工事をしている場合は、基礎部分が埋まっている可能性もあります。
更地渡しのメリット3つ
更地渡しにはいくつかのメリットがあります。
更地渡しは売主の責任と負担により、土地上の建築物や工作物を除去して、更地の状態で引き渡すということです。実際の不動産売却では、建築物が建っている物件を「売地」のカテゴリーで販売し、さらに特記事項などに「更地渡し可」といった表示をして販売します。
更地渡しには買主側だけでなく、売主側にも複数のメリットがあります。ここではそのようなメリットについて紹介します。
建物の瑕疵担保責任がなくなる
更地渡しでは建物の瑕疵担保責任を負わないというメリットがあります。
通常、売主は買主に引き渡した建物の欠陥や不具合などの瑕疵が後から見つかった場合、瑕疵担保責任として補修などの義務を負う必要があります。
特に古い建物は瑕疵が発覚するリスクが高いですが、建物を解体して更地にすれば、建物に対する瑕疵担保責任のリスクからは解放されるでしょう。実際に、更地渡しは建物に欠陥がある場合に行われることが多いです。
買い手が見つかりやすい
更地渡しの場合、土地のみが欲しい買い手も対象にできるというメリットがあります。
更地渡し可とすれば、中古物件を探している相手だけでなく、土地のみを探している相手にも売却できます。
土地が欲しい買い手は、自宅の建設を用途とする一般の層だけではありません。収益用のアパートやマンション用地を目的とする投資家に加えて、店舗や倉庫用地が欲しい事業主まで幅広く存在するため、成約する可能性も高くなるでしょう。
地下埋設物を確認しやすい
更地渡しでは地下埋設物を確認しやすいというメリットがあります。
土地にはさまざまな地下埋設物が存在している場合があります。建物を解体することにより、建物の瑕疵担保責任を免れることができますが、土地に地下埋設物があった場合には、可能性として瑕疵担保責任を負わなければいけないケースもあります。
しかし解体工事を行って更地にすれば、地下埋設物の確認もしやすく、トラブルが発生するリスクも軽減できるでしょう。
更地渡しは綿密に計画をしましょう
更地渡しを行う場合には十分な注意を払い、慎重に計画を立てましょう。更地渡しを可能とした不動産売却は、中古物件が建っている土地よりも幅広い層に需要があるため、売り手と買い手の両方にメリットがあります。
しかし、建物がある場合の契約よりも注意しなければいけないことが多く、工事の際には解体業者に配慮してもらうことが必要になります。そのため、更地渡しでの売却の際には、売り手側は綿密に計画を立てることが大切です。