信託口口座とは?口座開設までの流れやポイントと注意点6つ
2020 06.4この記事はPRを含みます
信託口口座とは?
信託口口座とは、信託契約を結んで預けたお金を管理・運用するための口座のことです。一般的な使い方としては「家族信託」があるでしょう。
例えば、父親から預けてもらったお金を、子供が信託口口座で管理・運用して利益を得たとします。家族信託であればその利益を父親の介護に使い、父親の死後は遺志にのっとって母親の介護に使うといったようなことが契約次第では可能でしょう。
三井住友信託銀行ほか一部の大手銀行
信託口口座を開設できる銀行としてよく知られているのが、三井住友信託銀行です。また、その他の大手銀行でも、信託口口座を開設できるところがあります。
信託口口座を開設すると、委託者や受託者が破産・倒産等の事態に陥っても、信託した財産は保護される「倒産隔離機能」がはたらくというメリットがあるでしょう。
広島銀行ほか一部の地方銀行・信用金庫
地方銀行や信用金庫などではシステムが整っていないため、信託口口座を開設できる銀行は少ないでしょう。しかし、広島銀行をはじめ、地方でも一部の金融機関では、家族信託向けのサービスを提供しています。
広島銀行は、地方銀行の中でも特に信託口口座開設に積極的に取り組んでおり、広島銀行をきっかけとして、だんだんと信託口口座の普及が進んでいます。
取り扱い金融機関が少ない現状
信託口口座による運用は比較的新しい手法であり、対応している銀行はまだ少ないでしょう。信託口口座に対応しているのは、三井住友信託銀行ほか一部の大手銀行が中心です。
また、東京では選択肢があるものの、地方となると開設できる銀行がそもそも近くにないという事態も考えられます。信託口口座と言いつつ、実際にはただの屋号つきの口座で、信託口口座の扱いにならないケースもあるため注意が必要でしょう。
信託口口座開設までの流れ6つ
信託口口座は、一般的な個人の銀行口座を作るのとは違い、複雑な手続きや、入念な審査が必要です。また、用意するものや条件もあるため、開設は慎重に検討しましょう。
信託口口座開設までの流れ1:家族信託の開設を専門家に相談する
信託口口座において、専門家へ相談することが大切です。弁護士や税理士、行政書士など、お金の運用や法律、そして信託口口座に詳しい専門家を探しましょう。
場合によっては自分で開設できることもありますが、いざという時のトラブルに対応できなかったり、条件をきちんと決めていなかったばかりに信託契約を無効とされたりするケースもあります。そのため、専門家を通すのは必要不可欠といえるでしょう。
信託口口座開設までの流れ2:委託者・受託者・専門家との家族会議
信託契約においては、「委託者」「受託者」「受益者」という3つの関係があります。例えば「父のお金を子が預かり運用し、父や母の介護や葬儀に使う」というケースでは、父が委託者、子が受託者、父や母が受益者です。
信託口口座の開設や契約は、自分一人だけで進むわけではないため、専門家や委託者、受託者全員で話し合い、どれくらいの資産を誰のためにどのような手段で運用するのか、徹底的に話し合う必要があるでしょう。
信託口口座開設までの流れ3:家族信託の口座開設に必要な書類の準備・作成
たとえ家族信託であっても法律上有効な契約とするためには、書類をしっかりと作成する必要があります。この書類作成も専門家が必要でしょう。司法書士などの専門家に依頼し、有効な信託契約書を作成しましょう。
また、契約書の他に印鑑や戸籍謄本、住民票や本人確認書類なども必要でしょう。さらに、不動産など、お金以外で信託する財産がある場合は、その権利書や評価書なども必要になることがあるため、事前に確認しましょう。
信託口口座開設までの流れ4:金融機関の審査
専門家の力を借りて書類を作成したら、その書類を、信託口口座を開設する金融機関に提出し、審査してもらわなければなりません。信託には複数の人間が絡むため、金融機関としては不正がないかきちんとチェックする必要があります。
どのような目的で開設するのか、委託者と受託者はどのような関係にあるのか、トラブルなどはないかなど、一通り審査されるでしょう。審査には早くて1週間、長いと1ヶ月ほどかかることもあるでしょう。
信託口口座開設までの流れ5:公正証書による家族信託契約手続き
審査に無事合格すると、正式な契約手続きが可能になります。委託者と受託者が揃って公証役場に赴き、公証人を立てた上で契約内容を改めて確認します。お互いに納得のいく契約となっていることを確認したら、署名・捺印し、信託契約が成立する仕組みです。
またこの時、契約書は公正証書として扱われるため、公証役場、委託者、受託者はそれぞれ同じものを1通ずつ持ち保管します。
信託口口座開設までの流れ6:金融口座の開設
公正証書を作成して初めて信託口口座を開設できます。作成した公正証書を金融機関に提出しましょう。あとは、普通の銀行口座を作る時と同じように、書類に必要事項を記入し、通帳やキャッシュカードができるのを待つだけです。
その場で発行されるわけではなく、1週間から10日程は待つ必要があるでしょう。通帳やキャッシュカードの準備が整ったら、開設した口座に信託する財産を入金し、運用が始まっていくといった流れです。
信託口口座開設のポイント3つ
信託口口座を開設してみたいと考えても、口座開設を許可されるのには様々な条件をクリアする必要があります。また、比較的新しい手法で金融機関側も慣れていないことから、条件を満たしていたとしても口座開設を断られる場合があるかもしれません。
金融機関からの信用を得やすい状態を作ることが信託口口座を開設するためには大切です。
具体的には次のようなポイントを意識すると、開設しやすくなるでしょう。
信託口口座開設のポイント1:投資財産の目安は最低3000万
信託口口座へと入金する資産は、最低でも3000万円が目安となるでしょう。大規模な投資となるため、ハードルが高く手が出せない人もいるのが現状です。
例えば、三井住友信託銀行でも、信託口口座を開設するには最低3000万円からが基本となっています。支店など、個々の判断で扱いが変わる可能性もあるため、もし3000万円未満で信託口口座を開設したい場合は、直接金融機関に問い合わせてみるのが確実でしょう。
信託口口座開設のポイント2:取引見込みのある資産がある
現金での資産の他に、不動産など取引可能な信託資産があると、信託口口座の開設審査が通りやすくなるでしょう。また、現金での資産が3000万に満たなくても、不動産の資産と合わせて3000万以上になると見込めれば通る可能性もあります。
銀行によって条件は異なり、また支店ごとに異なることもあるため、いくつかの支店に相談してみるのもよいでしょう。
信託口口座開設のポイント3:専門家を通す
信託口口座は専門家を通して開設する方がよいでしょう。両親が子に財産や実家などの管理を任せるシンプルな家族信託の場合は、専門家などを通さなくてもよいと考えがちです。
しかし、たとえ家族仲が良好で不正などの心配がない場合でも、専門家を通すことで金融機関から信用を得られ、口座そのものを開設しやすくなります。また、トラブルがあった時でも対処が容易になるでしょう。
信託口口座の注意点6つ
信託口口座は家族の財産管理などに便利な存在です。しかし、そもそも「信託口口座や信託契約はどんな特徴を持っているのか」といった認識を誤っていると、自分の求める使い方ができない場合があります。
信託口口座を作るのは大変であるため、作る前に本当に目的に合っているのか確認するとよいでしょう。
信託口口座の注意点1:受託者は契約で定めた財産管理権限があるだけ
信託口口座において、財産を信託された人は「受託者」として契約で定められた範囲内で、信託された財産についてのみ管理・運用できます。あくまでそれだけであり、預かった財産が受託者個人のものになるわけではありません。
法律によって、受託者は受益者のためだけに信託財産を分けて管理しなければならないと定められています。
信託口口座の注意点2:受託者は委託者の代理人になるわけではない
信託契約は委託者の代理人になるわけではありません。例えば、委託者の代わりに銀行口座からお金を引き出したり、振り込んだりすることはできません。受託者が扱えるのは、あくまで信託された財産に限ります。
信託された財産以外に、現金や不動産などがあったとしても、信託されていない財産であるため、受託者は扱うことができないことに注意しましょう。
信託口口座の注意点3:受託者と成年後見人との区別
委託者の代理人になる制度として、成年後見制度があります。成年後見制度もまた、家族信託のように財産の管理ができる制度です。しかし、信託契約と成年後見制度は全く別の制度になります。
成年後見制度は家庭裁判所を通し、判断能力の不十分な人のかわりに後見人がお金を引き出すなどの行為を代行できるのが特徴です。しかし、信託契約の受託者には成年後見人のような権限はありません。
信託口口座の注意点4:口座凍結解除には遺言書が必要
正規の信託口口座は受託者が亡くなっても、信託した財産は受託者の財産とは別に管理されるため、口座凍結の心配はないでしょう。
しかし、何らかの理由で信託口口座を開設できず、受託者自身の口座を使って管理している場合は、受託者の死によって口座が凍結されてしまうリスクがあります。
この場合、信託した財産は受託者のものとして扱われるため、口座の凍結を解除するためには受託者の遺言書あるいは遺産分割協議書などが必要でしょう。
信託口口座の注意点5:開設までに半年かかるケースもある
信託口口座を開設するためには、家族はもちろん、弁護士や専門家、金融機関など多数の方面との話し合いが必要です。なにを信託するかによっては手続きや連携、法律上の扱いの確認が複雑になることも考えられます。
「将来に備えて子に資産を預けたい」というようなシンプルな家族信託でも、早くても2ヶ月程度は見ておくとよいでしょう。また、内容が複雑だと開設まで半年程かかるケースもあるため、余裕を持って開設手続きを進めましょう。
信託口口座の注意点6:誰でも簡単に開設できる訳ではない
信託口口座は個人の銀行口座や投資信託口座と違い、誰もが気軽に開設できるわけではありません。銀行で手続きしたいと言っても受け付けてもらえないこともあるでしょう。
信託する財産が3000万円以上など、ハードルが高いことも理由ですが、そもそも取り扱っている銀行が少ないというのも理由として考えられます。
信託口口座が本当に必要かどうか、また開設の条件を満たせるかどうかを考えた上で、信頼できる銀行を選ぶことが大切でしょう。
信託口口座について理解を深めよう
信託口口座は、成年後見制度と違った形で財産の管理ができるため、徐々に認知度が高まっています。今はまだ取り扱う銀行は限られていますが、将来的には普及し、開設しやすくなっていくでしょう。
家族に万が一のことが起きた場合などにも役立ちますが、起きてしまってからでは本人の意志確認ができないため口座開設ができません。早めに家族で話し合い、最適な形で財産の管理・運用ができるよう模索していきましょう。