仮想通貨の歴史を語るうえで、中国の存在は欠かすことができません。
中国政府はかつて、ビットコイン(BTC)の最大の市場でした。
さらに、クアンタム(QTUM)など、中国の技術者が開発して以降、大きな時価総額に達している仮想通貨も存在します。
今回の記事では、中国が仮想通貨市場に与えた影響と歴史を紹介します。
政府が段階的な規制強化を進め、ついには全面的に仮想通貨取引を禁止する方針を発表した理由について、詳しく解説していきます。
中国政府の方針と今後の展望を掴むことは、投資判断の材料になると思いますので、是非最後までご覧ください。
※以下の情報は、全て2022年4月現在の情報です。
目次
中国と仮想通貨の歴史
中国が仮想通貨に対して規制を設けたのは、2013年に入ってからです。
それまでは、ビットコイン(BTC)の最大の市場として、中国は君臨していました。
ここからは、規制強化前の中国の実績と段階的に強化してきた規制の歴史について解説していきます。
2013年まで:最大のビットコイン取引市場
仮想通貨の規制を行う以前の2013年までは、中国は世界的にも大きい仮想通貨市場でした。
現在も世界最大級の取引量を誇るBinance(バイナンス)は、もともと中国で設立された取引所です。
また、クアンタム(QTUM)の創設者であるパトリック・ダイ氏のような優秀な技術者を排出しています。
さらに、仮想通貨OTC取引業界のキーパーソンであるジャオ・ドン氏も中国出身の方です。
このように、もともと中国という国は、仮想通貨取引量が世界最大の市場であっただけでなく、仮想通貨の管理や運営の技術もある国だったといえるでしょう。
2013年:ビットコイン(BTC)関連の銀行取引を禁止
2013年、中国国内の銀行がビットコイン(BTC)関連の取引をすることが禁止されました。
この発表は中国政府の発表ではないものの、中国人民銀行をはじめ、工業情報化部や金融監視機関が合同で公表しています。
銀行取引を禁止する理由は、ビットコインを筆頭とする仮想通貨が、どこの国家にも、またはその中央銀行にも、裏付けがないものとしているためです。
この時点では、中央集権体制のもとに成り立っている法定通貨と異なる新しい通貨に対して、国民に危機感を投げかける意味合いもあったのでしょう。
2017年:新規コイン公開(ICO)を禁止
2017年には、中国において新規コイン公開(ICO)を禁止することを表明しました。
一般的に、新規コイン公開と訳されるICOとは、新たなブロックチェーンプラットフォームを立ち上げた事業者や開発者が、市場にそのプロジェクトを公開し販売することで、資金調達をすることができる仕組みです。
しかし、中国政府はこのとき、ICOは新規事業の失敗の可能性が大きい、リスクのある資金調達方法であると指摘しました。
この禁止により中国政府は、人民元の国外への流出を抑え、相対的に仮想通貨やその他の法定通貨に対して優位性を高めることを期待しています。
2019年:ビットコイン(BTC)マイニングの制限
2019年には、中国政府はビットコイン(BTC)のマイニング行為に対する制限を設けました。
マイニングとは、ブロックチェーン取引の承認作業の手助けを行うことで、「マイナー」と呼ばれる作業主に対しては報酬が発生します。
もともと中国は、ビットコインのマイニング規制が起きる以前に、世界のビットコインマイニング全体の4分の3以上を占めていた期間があります。
豊富な資源や水力発電の恩恵を受けて、内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、四川省や雲南省といった地域が中心となって、マイニングを行っていました。
しかし、消費電力の大きさや環境問題への懸念を理由として、中国政府がマイニング規制を行って以降、マイニングの中心は中国からアメリカ、カザフスタンなどに移行しています。
2020年:中国政府の仮想通貨取引の規制強化
2020年には、中国政府がこれまで行ってきたビットコイン(BTC)のマイニング規制や仮想通貨取引の規制をさらに強化することを発表しました。
具体的には、中国国内の仮想通貨取引所の活動制限を強化して、中国国内においてはほとんど取引所として機能できないようにしたのです。
中国政府は、マネーロンダリングと詐欺の取り締まりのためだとしています。
2021年:中国国内での仮想通貨取引やマイニングを全面禁止
2021年には、中国国内の仮想通貨取引やマイニング行為を全面的に禁止にする発表を出しました。
この規制の内容は厳しく、中国在住の人がインターネットを経由して、国外の取引所を利用する行為も違法としています。
これにより、ビットコイン(BTC)の中国での流通は限りなく0に近くなってしまいました。
CryptoCompareによると、中国人民元建のビットコインの流通量は、世界全体の0.01%にも届かない状況になっています。(2022年4月時点)
引用:産経新聞 『ビットコイン採掘「1強」の中国がシェアゼロに 拠点は壊滅』
また、産経新聞によると2021年7月以降、中国発のビットコインマイニングは世界シェアが無くなっています。
中国の規制強化とビットコイン(BTC)価格の関係
以下のチャートは、ビットコイン(BTC)の過去から現在までの価格推移を表しています。(2022年4月時点)
中国国内での新規コイン発行(ICO)の規制を発表した2017年9月には、ビットコインの価格は3日間で30%程度の暴落を見せました。
また、2021年6月には、仮想通貨取引とマイニングの全面禁止を受けて、5ヵ月ぶりに3万ドルを割り込む形となりました。
中国政府の仮想通貨に関する規制が、ビットコイン価格に大きく影響していることは明らかでしょう。
中国が仮想通貨取引を規制する理由
中国が仮想通貨を規制する大きな理由として、以下の2つが挙げられます。
- 国際的なエネルギー問題の深刻化
- デジタル人民元の開発
国際的な環境問題への取り組みと中国政府の方針が、大きな原因となっていると言えます。
国際的なエネルギー問題の深刻化
中国が仮想通貨の規制をする理由として、国際的にエネルギー問題の深刻化があげられます。
仮想通貨のマイニングを行うときには、複雑な計算を必要としているため、大きな電力が必要な巨大コンピューターが使われるのが一般的です。
2020年、ビットコイン(BTC)のマイニングにかかった消費電力は、チリやバングラデシュの一国における一年間の総消費電力を越えています。
電力供給のための資源が枯渇すれば、地球規模の環境問題、エネルギー問題となりかねないため、中国はマイニングの規制を行ったと言われています。
デジタル人民元の開発
中国は、デジタル人民元という新たなデジタル通貨の開発を行っています。
簡単に送金や決済ができるデジタル人民元は、仮想通貨と性質や利用場面が似ているため、仮想通貨をいち早く国内市場から退出させたいという思惑があります。
デジタル人民元については後述します。
デジタル人民元とは
仮想通貨の規制強化の一因となっているデジタル人民元には、以下のような特徴があります。
- 中国政府が発行する法定通貨
- 3段階のステップを踏む実用化のスケジュール
- スマートフォンのアプリで決済可能
ここからは、デジタル人民元の特徴について、一つずつ解説していきます。
中国政府が発行する法定通貨
デジタル人民元とは、中国の中央銀行が発行するデジタル法定通貨(CBDC)です。
ブロックチェーンの技術により、取引承認の妥当性が通貨としての価値の証明をする仮想通貨とは異なり、デジタル人民元は中央集権体制のもと発行される法定通貨の一種です。
国家からのお墨付きがあるため、比較的安心して利用できる上に、仮想通貨のように送金や決済が手数料を抑えて瞬時に行えます。
その利便性の高さから、今後ますます利用者の拡大が進むことが期待されています。
3段階の実用化スケジュール
デジタル人民元には、以下のような3段階の実用化スケジュールが定められています。
- 第1段階:中国人民銀行から仲介機関にデジタル人民元を発行
- 第2段階:仲介機関から消費者に配布
- 第3段階:消費者の利用開始
デジタル人民元は、法定通貨の信用、すなわち国家権力の信用にかかわる大きなプロジェクトです。
そのため、中国政府は人民銀行にデジタル人民元を限定して発行させることで、徐々に市場に普及させて行きたいという狙いがあります。
スマートフォンアプリで決済可能
デジタル人民元は、仮想通貨や電子マネーのようにスマートフォンアプリで決済が可能です。
使用方法もほとんど同様で、ユーザーのスマートフォンにデジタル人民元の専用アプリをインストールし、表示画面のQRコードを決済の時に読み取ってもらうだけです。
アプリは、個人情報の入力とデジタル通貨専用のウォレットを開設後に登録することで、誰でも簡単に使い始めることができます。
中国の通貨に対する今後の見通し
中国の通貨に対する今後の見通しとして、以下のような予測が立てられます。
- 仮想通貨の規制はさらに厳しくなる
- デジタル人民元を基軸通貨にする動きが拡大する
- 一帯一路のリーダーとしてデジタル通貨をけん引する
ここからは、これらの見通しの内容や根拠について解説していきます。
仮想通貨の規制はさらに厳しくなる
中国政府は今後、仮想通貨に対する規制をますます厳しくすることが予想されています。
現在は、仮想通貨取引やマイニングの禁止をしていますが、今後はその禁止事項を破った者への罰則を強化していくという見方があります。(2022年4月時点)
デジタル人民元を基軸通貨にする動きが拡大する
中国政府は、デジタル人民元を国際的な基軸通貨にすることを目指しています。
現在の世界の基軸通貨は米ドルが主流ですが、デジタル通貨にはいまだに基軸通貨が存在していません。
世界各国の中央銀行がデジタル通貨の開発に取り組んではいるものの、実用化の動きや成功例がないためです。
もし中国のデジタル人民元が実用化スケジュールの通りに進めば、中国は世界で唯一のデジタル通貨保持国家になり、仕組みや規格などのルール作りで優位に立てます。
そうなれば、人民元自体の通貨的価値も向上することが期待できるでしょう。
一帯一路のリーダーとしてデジタル通貨をけん引する
中国政府は、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の経済連絡網である「一帯一路構想」を掲げており、そのリーダーとしての役割を担おうとしています。
デジタル人民元が発行されれば、一帯一路構想に参加する国家の中でも、国家の裏付けがある国際的な送金手段として、確かな地位を確立することができるでしょう。
中国の動向を注視しながら仮想通貨に投資しよう
中国はかつて、世界でも屈指の仮想通貨取引量を記録し、マイニングにおいても大きな世界シェアを誇っていました。
しかし、中国政府の一帯一路構想を下支えするデジタル人民元の存在や、消費電力の大きいマイニングを行うことによって地球環境問題の悪化を踏まえてて、2013年から徐々に規制を強化してきました。
中国政府の決定が仮想通貨市場に与える影響は大きく、今後もその傾向は続くことが予想されます。
中国国内における仮想通貨取引やマイニングの重罰化といったニュースに注目して、仮想通貨に投資することをおすすめします。
これから仮想通貨に投資を検討している方は、以下の記事でおすすめの取引所を紹介しています。