仮想通貨投資で利益を得た場合には、雑所得として申告しなければなりません。
しかし、仮想通貨投資に関する課税区分は複雑です。もし、課税区分を誤って確定申告をすると、追徴課税の対象となりかねません。
そこでこの記事では、仮想通貨に関する税制や雑所得に該当するかについて、分かりやすく解説します。
※以下の情報は、全て2022年6月現在の情報です。
目次
仮想通貨で得た収益は雑所得にあたる
仮想通貨に関する課税は、株式投資の扱いとは異なります。
仮想通貨投資によって得た収益は、雑所得として申告しなければなりません。
解説者
この雑所得の特徴は、以下の通りです。
総合課税が適用される
仮想通貨投資の収益には、総合課税が適用されます。
総合課税とは、雑所得や給与所得などを合算した所得額に対して課税される計算方式です。
累進課税制度が採られており、所得金額が上がるにつれて税率も高くなります。
最大税率は55%にも達するため、仮想通貨投資で大きな利益を得た場合には、多額の納税が必要です。
株式投資と異なり、仮想通貨投資では分離課税が適用されません。
分離課税とは、特定の収益のみを所得額から切り離して低い税率を適用する制度です。この制度によって、株式投資の場合では収益に対する課税額が抑えられています。
これに対して、仮想通貨投資では分離課税が認められていないため、税制の面で不利な扱いとなります。
そのため、仮想通貨投資で巨額の利益を得た際には、莫大な納税額が必要です。
補足担当者
たとえば、取得時よりも相場価格が高騰したコインを用いて、別の銘柄とトレードすると利益確定と見なされます。トレードが成立した時点で、元の銘柄における利益額に対して納税が求められます。
しかし、交換後の銘柄で相場の暴落が発生してしまうと、納税に必要な現金を用意できません。
この事例のように、仮想通貨同士のトレードによって税金が支払えなくなるケースも多発しています。仮想通貨投資では、納税資金を確保するための迅速な対応が必要です。
このように現行の制度では、仮想通貨投資に対して大きな税負担が課されています。
損益通算できない
雑所得にあたる仮想通貨投資では、損益通算が認められません。
損益通算とは、発生した損失を同年の利益から差し引く会計処理です。利益の押し下げによって、納税額を抑える効果があります。
仮想通貨の損失を相殺できるのは、同一年に得た雑所得の範囲内に限定されています。給与や不動産所得からの減額は不可能です。
解説者
仮想通貨投資で大きな損失が発生した場合でも、税負担の減免を受けられないため、リスクが残ります。
このように、雑所得に該当している仮想通貨投資では、損益通算できないデメリットが存在しています。
繰越控除できない
仮想通貨投資では、損失の繰越控除ができません。
繰越控除とは、損失を翌年以降の会計に持ち越し、納税額を抑えられる制度です。
仮想通貨投資はこの繰越控除の対象ではないため、その損失を翌年以降に持ち越しできません。
仮想通貨投資では、一度に巨額損失が発生するリスクもあります。しかし、巨額の損失が発生した際でも翌年以降の会計には持ち越せず、税負担は軽減できないのです。
この側面からも、繰越控除が認められている株式投資と比較して、仮想通貨投資は不利な制度設計となっています。
仮想通貨収益が20万円未満の場合どうなる?
仮想通貨による収益が年間20万円未満の場合、税金はどのような扱いとなるか解説します。
納税者の就業形態や収益額によって、確定申告への対応が変わります。自身の状況と照らし合わせて、適切に判断しましょう。
なお、確定申告に関する詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
仮想通貨の確定申告が必要な人は?課税のタイミングや計算方法を解説
サラリーマンや公務員の場合
サラリーマンや公務員で、仮想通貨による収益が年間20万円未満の場合、確定申告は不要です。
ただし、仮想通貨の他にも雑所得があり、それらを合計して20万円を超える際には確定申告をしなければなりません。
補足担当者
また、雑所得の収益が年間20万円未満の場合でも、市区町村に対して住民税申告の提出をしなければなりません。これは、住民税の税額を算出するために必要な申告です。
住民税の申告は、仮想通貨投資の収益に関係なく提出が求められます。
なお、確定申告を提出する場合には、住民税申告をする必要はありません。
個人事業主やフリーランスの場合
個人事業主やフリーランスの場合、仮想通貨投資の収益に関わらず、確定申告に記載しなければなりません。
たとえ仮想通貨投資による収益が年間20万円に達していない場合でも、雑所得として届け出る必要があります。
仮想通貨における取得価額の計算方法
仮想通貨における取得価額の算出方法を説明します。
取得価額の計算には、総平均法と移動平均法の2通りがあります。税務署への申告によって、いずれかの選択が可能です。
長期的な視点ではどちらも同じ取得価額となりますが、単年の会計においてはメリット、デメリットが存在します。
総平均法
総平均法では、会計年の間に取得した仮想通貨の取得単価における平均値を採用します。
会計年のどの時点においても同じ取得価額が適用されるため、シンプルな点がメリットです。
一方でデメリットは、実際の市況価格との乖離が大きくなる点です。
常に変動する相場価格に対して単一の取得価額を適用するため、取引単体での差異が大きく感じられます。
また、会計年が終了するまで取得価額が確定しない点もデメリットです。
総平均法は取得価額が統一されておりシンプルな一方で、実態の取引との差異が大きい算出方法です。
移動平均法
移動平均法は、期初から仮想通貨を取得する度に平均額を求める手法です。
仮想通貨を入手した際に毎回平均額を算出するため、実際の相場変動と近い取得価額が適用されます。
一方でデメリットとして、会計管理が煩雑になります。
移動平均法では、仮想通貨を取得する度に平均単価を計算しなければならないからです。
解説者
そのため、取引記録や取得単価に関するデータを残し、取引の度に平均取得単価を記録しなければなりません。
このように、移動平均法は取引の実態に即した計算ができる反面、手間がかかる算出方法になります。
仮想通貨へ分離課税がおこなわれる可能性
仮想通貨投資への分離課税の適用について、説明します。
現行の仮想通貨投資では総合課税が適用されるため、累進課税が適用されます。
仮想通貨投資で高い利益を出すほどに税率も上がる仕組みとなっており、重い税負担が課題です。
そこで、仮想通貨を分離課税の対象とすべきとの世論が出ています。
分離課税とは、特定の収益を所得額から独立させ、独自の税率を適用する制度です。
たとえば、株式投資の場合では分離課税が適用できるため、低い税率が適用されています。 加えて、損益通算や繰越控除も可能です。
投資にとって追い風となる制度ですが、現時点では仮想通貨投資への分離課税適用への移管計画はありません。
分離課税への移管は、法整備の議論に挙がった段階であり、当面は総合課税の対象となります。
法定通貨のFX取引も、分離課税に移行するまでに長い時間を要しました。仮想通貨投資は登場してから日が浅く、ルールの改定には時間がかかる見込みです。
補足担当者
仮想通貨にかかる税金は雑所得として正しく計上しよう
仮想通貨投資に対してかかる雑所得について、説明しました。
現行の制度では、仮想通貨投資の収益は雑所得に分類されます。雑所得のため累進課税が適用され、重い税負担がのしかかります。
仮想通貨投資をする際にはこの税負担を考慮して、納税資金を手元に用意しなければなりません。
また、正しく収益を算出するため、仮想通貨の取引記録を残しておく必要があります。 取引記録に沿って、正しく申告をしてください。
もし申告漏れがあると、追徴課税が課される恐れもあります。そのため、仮想通貨にかかる雑所得の仕組みを理解して、投資に挑戦しましょう。