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建ぺい率緩和の法改正の背景3つ|法改正前の建ぺい率の緩和条件3つ

2020 06.4この記事はPRを含みます

建ぺい率とは

「建ぺい率」とは、「土地の面積に占める住宅の建築面積の割合」を意味する建築用語です。

住宅の「建築面積」とは、一般的に土台の面積を意味し2階建ての住宅の場合は1階部分の面積をいいます。ただし、特殊な設計で2階の面積の方が大きい場合は、2階の面積が建ぺい率の計算に適用されるケースがあります。

ちなみに、住宅用の土地の面積を「敷地面積」といい、1階と2階を加えた面積は「延床面積」といいます。

建ぺい率の計算方法

住宅などの建ぺい率は、「建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100」の計算式によって求められます。

仮に100坪の敷地面積の場合、建ぺい率が50%から60%に緩和されることによって、住宅の建築面積が10坪(畳み20枚分)増加することになります。

(1)50%の場合
100坪(敷地面積)×50%(建ぺい率)=50坪(建築面積)

(2)60%の場合
100坪(敷地面積)×60%(建ぺい率)=60坪(建築面積)

建築基準法の改正で2019年に建ぺい率が緩和される

2018(平成30)年6月に国会において建築基準法の一部改正が成立したことに伴い、公布から1年以内に「準防火地域の耐火建築物」と「準耐火建築物」の建ぺい率が規制緩和されることなりました。

今回の建築基準法の改正に伴い、建ぺい率の10%緩和と接道規制の強化を図ることによって、大規模火災による「建築物の安全性の向上」にあわせて「延焼しにくい建築物への建て替」を促進する効果が期待されます。

建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について-国土交通省

建築基準法とは?

建築基準法は1959(昭和25)年に制定された国民の生命・健康・財産の保護を目的とした建築物の敷地・設備・構造・用途などに関して最低限の基準を定めた法律をいいます。

建築基準法を適性に運用するため、内閣が制定する施行令(政令)と大臣が制定する施行規則(省令)が定められており、都市計画法の規定と連動させて用途地域内の建築物を対象とした住宅の建ぺい率・容積率・斜線規制・接道規制などが規定されています。

建築基準法

建ぺい率が変化すると何が変わる?

建築基準法の改正によって、準防火地域の耐火建築物や準耐火建築物の建ぺい率が10%緩和すると、一体何がどのように変化するのでしょうか。

これからは、準防火地域内の耐火建築物や準耐火建築物にも10%の建ぺい率緩和が適用されることになるため、住宅内部の柱や壁にこれまで以上に木材の利用が増加することや、住宅をリフォームする際の内装やデザインの選択肢が増えることが期待できます。

収益性が高くなる可能性がある

建築基準法の改正に伴い建ぺい率が10%緩和されることによって、これまでより同じ敷地面積に建てられるアパートの建築面積が広くなることから、収益性の向上が見込まれる可能性があります。

さらに、準防火地域の耐火建築物や準耐火建築物の建ぺい率10%の緩和により、アパートなどの建築用資材として木材の利用が促進され、収益性の向上と相俟って設計の自由度の向上が期待できます。

物件の防火性が高くなる

建築基準法の改正後は防火性能を高めることによって、準防火地域の準耐火建築物まで建ぺい率10%が適用拡大されることになったことから、特に都市部におけるアパート建築にとって朗報となります。

建築基準法の改正前までは防火地域の耐火建築物にしか建ぺい率10%緩和が適用されていませんでしたが、建ぺい率10%の緩和措置が適用される敷地面積が小さな住宅密集地とって、防火上の安全性向上は大きな意味を持ちます。

建ぺい率緩和の背景3つ

今回の建築基準法の改正に伴う「建ぺい率10%の緩和」と「接道規制の強化」が行われる背景には、大きく3つの狙いがあるといわれています。

今回の法改正では、市街地の安全性確保を図るため準防火地域にある準耐火建築物にも建ぺい率10%の緩和が適用されましたが、その反面、いわゆる旗竿長屋ともいわれる重層長屋を対象とした「接道規制の強化」が図られることになりました。

建ぺい率緩和の背景1:建築基準法改正の背景にある3本柱

今回の法改正の背景には大きく3つの背景があり、1つには「建築物と市街地の安全性の向上」、2つには「既存建築物ストックの活用」、そして3つには「木造建築物の整備推進」という狙いがあります。

今回の建ぺい率10%の緩和と接道規制の強化は、過去の大規模火災の発生を教訓として建築物の安全確保と火災の延焼を防ぐ建築物への建て替えを促進させる狙いがあり、そのことによって市街地の重層長屋の建築が困難になります。

建ぺい率緩和の背景2:準防火地域も建ぺい率10%緩和へ

2019(令和元)年6月に「建築基準法の一部を改正する法律」によって、住宅などが密集する準防火地域における建ぺい率10%の緩和と接道規制が強化されることになりました。

建築基準法で定める建ぺい率が10%緩和された背景には、2016(平成28)年12月に発生した新潟県糸魚川市の大規模火災などを契機として、準防火地域において大規模火災時の延焼防止性能が高い建物への建替を促進する狙いがあります。

延焼防止性能の高い建築物の建ぺい率の緩和

今回の法改正によって、準防火地域に建てられる耐火建築物と準耐火建築物の基準の見直しが行われ、同地域における延焼防止性能の高い建築物の建ぺい率が10%緩和されることになりました。

ここでいう「延焼防止建築物」とは、火災発生時における外壁や開口部防火性能を高めることによって、近隣で発生した火災からの「もらい火」のリスクを緩和したり、あるいは住宅内部の火炎を外部に噴出するリスクを緩和する建築物を指します。

延焼防止性能の高い建築物の技術的基準を新たに整備

今回の法改正によって、準防火地域において準耐火建築物のアパートなどの集合住宅を建築する場合、延焼性能の高い建築物の技術的基準に適合することによって、今までより建ぺい率が10%緩和されることになりました。

新たに建築物の外壁などに防火性能の高い材料を使用することによって、室内の木材(柱や梁)を石膏ボードで多う必要がなくなるため、木材の「表わし」仕上げが可能となり設計や意匠などの面で自由度が広がります。

建ぺい率緩和の背景3:重層長屋に規制

今回の法改正によって、建ぺい率10%の緩和に加えて接道規制が強化されることになったことから、これまでのように奥まった袋地状敷地道路のみに接する重層長屋が建てられなくなる可能性があります。

接道規制の対象になる重層長屋とは、火災発生時に避難が困難となる「袋地状の道路のみに接する長屋」のうち延床面積が150m2以上のアパートなどが該当しますが、今後は地方公共団体の条例によって規制強化が図られます。

長屋とは

建築基準法における接道規制の対象となる長屋とは、アパートなどの集合住宅と異なり「廊下や外部階段がなく、全住戸の玄関が1階に並んで建て付けられた集合住宅」を意味します。

しかも、住戸の全ての玄関口が直接的に屋外道路と接していて、他の住戸の玄関口を共有していないことが適用条件となっています。なお、長屋のうち2階建ての住居用として個別に階段を設け、縦方向に居室を重ねた長屋を「重層長屋」と呼んでいます。

共同住宅に比べて規制が緩い

これまで長屋形式の住宅においては、路地状や袋地状のような奥まった敷地でも接道規制が緩かったため賃貸経営による経営的なメリットがありました。

接道規制が強化された背景には、住宅密集地に1棟あたり10戸を越えるような重層長屋が増加したことで、火災時の延焼など安全確保上の問題が顕在化したことが挙げられますが、今後は法改正に伴なって重層長屋などが認可されなくなるケースが発生します。

法改正前の建ぺい率の緩和条件3つ

建築基準法の改正以前でも、以下の3つの条件に適合している場合は建ぺい率の規制緩和が行われていました。

(1)建ぺい率の指定が異なる2つの区域に跨がっている建築物の場合
(2)防火地域として指定された区域内に耐火建築物を建築する場合
(3)都道府県などの特定行政庁が指定する角地に該当する建築物

法改正前の建ぺい率の緩和条件1:指定建ぺい率の異なる区域にまたがっている

法改正前の建ぺい率の緩和条件1つめは、建築する目的で購入した敷地が2つの異なる建ぺい率の区域に跨がっている場合は、区域ごとの建ぺい率に基づく建築面積の限度値を算出し、双方の合算した建築面積が適用されるということです。

双方の区域の合算した建築面積を全体の敷地面積を除し、求められた建ぺい率をもって敷地全体の建ぺい率として適用されますが、この計算方式を加重平均と呼んでいます。

加重平均とは

2つの用途地域に跨がった敷地において、合計した建築面積を全体の敷地面積で割って求めた建ぺい率をもって、敷地全体の建ぺい率に適用する計算方式を「加重平均」といいます。

例えば、建ぺい率60%の土地が50m2、70%の土地が50m2の場合は、以下の計算となります。
(1)敷地面積:50m2+50m2=100m2
(2)建ぺい率:(60%×50m2/100m2)+(70%×50m2/100)=65%

法改正前の建ぺい率の緩和条件2:防火地域内では10%の緩和が受けられる

法改正前の建ぺい率の緩和条件2つめは、都市計画によって防火地域に指定された区域内に耐火建築物を建てる場合に建ぺい率が緩和されるということです。

指定建ぺい率が全て80%の商業地域、指定建ぺい率が80%の論説商業地域や第2種住居地域などは、制限なしで空地を設けず敷地面積一杯に建築することが可能となっています。

防火地域で耐火建築を建築する

都市計画によって防火地域に指定された、建物が密集する市街地・主要駅近辺・大規模商業施設などは建ぺい率の緩和が適用されますが、原則として建物は耐火建築物にする必要があります。

ここでいう耐火建築物とは、主要構造がRC造・SRC造・レンガ造または耐火性能法に則り認定された防火扉などを設置した建築物をいいます。

法改正前の建ぺい率の緩和条件3:角地緩和について

法改正前の建ぺい率緩和条件の3つめは、建築主事を置いている都道府県などの特定行政庁が指定している角地については、建ぺい率が10%緩和されるということです。

ただし、緩和要件は特定行政庁ごとに「2つの道路交点の角度」「敷地と道路の接地距離の割合」「敷地面積の上限」などの取扱いが異なるため、あらかじめ詳細な事前確認が必要です。

建ぺい率に関する法改正に注意しよう!

2018(平成30)年6月に建築基準法が改正され、建ぺい率や容積率の緩和や接道規制が強化されました。

今回の法改正の目的は、「建築物や市街地の安全確保」を目的としたものであり、あらかじめ地震などによる大規模な火災発生時に備え、特に住宅密集地の延焼を防ぐため「家屋の建て替えを促進する」狙いがあることを理解しておく必要があります。

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