建蔽率・容積率オーバーの物件を購入したときの売却方法4つ紹介
2020 06.4この記事はPRを含みます
建蔽率とは
建蔽率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指します。式にすると建蔽率=建築面積/敷地面積×100%です。
建築面積とは、建物を上からみたときの水平投影面積のことです。基本的に建物の1階部分の床面積ですが、2階以上で1階部分より出っ張っぱっているところがあるときは、出っ張り部分を加算した床面積になります。
敷地100㎡で建蔽率60%の場合、建築できる面積は60㎡です。
容積率とは
容積率とは、敷地面積に対する建築できる総床面積の割合のことをいいます。式にすると、容積率=総床面積/敷地面積×100%です。
敷地100㎡で容積率200%の場合、建築できる総床面積は200㎡になります。2階建てなら1階100㎡・2階100㎡、3階建てなら1階100㎡・2階60㎡・3階40㎡という具合に床面積を確保できるでしょう。
建蔽率と容積率の関係とは?
建蔽率と容積率は、建蔽率が固定で容積率が増えれば建物の階層が多くなり、容積率が固定で建蔽率が減れば建物の階層が多くなるという関係があります。
敷地100㎡で建蔽率60%で容積率が100%から200%に増えた場合、建築面積60㎡に対して床面積が100㎡から200㎡になるのだから、2階建から3階建に階層が増えます。
容積率120%で建蔽率が80%から50%に減った場合、2階建から3階建になります。
理想的な「建蔽率と容積率」とは?
理想的な「建蔽率と容積率」は、一般的に建蔽率60%以上、容積率120%以上といわれています。建蔽率も容積率も小さ過ぎると思ったような建物が建てられなくなるからです。
建蔽率や容積率は、敷地に対して最大の建築面積や床面積の割合を指します。定められた率以上にならなければ良いのです。防災や景観、住環境などを勘案して建蔽率や容積率が定められています。
建蔽率と容積率の調べ方
建蔽率と容積率は、都市計画法で指定される用途地域によって定められています。市役所の都市計画課などに行けば調べることが可能です。建蔽率と容積率の数値だけなら、行政機関のWebページを閲覧すれば簡単に調べることができます。
不動産の購入や売却を考えている人なら、近くの不動産仲介会社を訪問してみるのもよいでしょう。建蔽率や容積率だけでなく、付随するいろんな話をしてくれるのでおすすめです。
既存不適格とは?
既存不適格とは既存不適格建物のことで、現在の建築基準法では違反になるが、建築当初は違法でなかった建物のことです。新築後に建築基準法が改正されて適合しない建物になったものを、既存不適格といいます。
既存不適格建物は違法建物ではありません。法律改正は不可抗力によるところが大きいからです。違法建物は違法建築物といい、建築基準法に違反しているのをわかったうえで、収益などを優先させて建てたものです。
完了検査を受けているか否か
新築時に完了検査をうけているか否かが、適法な建物かどうか判断材料になってくるので、大事になります。
建物を建築するときに、建築確認申請を提出し、建築完了時に完了検査を受けて、検査済証の交付を受けましょう。検査済証があれば、完了検査をうけている建物ということになります。
完了検査の検査済証が確認できれば、建築当初は適法であったということです。改正された建築基準法に違反していたとしても、検査済証があれば既存不適格建物です。
都内では多い既存不適格の物件が多い
建物が密集している東京都内は、既存不適格の建物が多いです。防災の必要性などから、建築基準法を初めとする建築に関連する法律が改正されることで既存不適格が増えたのです。
関連法律には建築基準法や消防法、都市計画法および都市緑地法、都市公園法などが挙げられます。建物は法律が替わったからといって、容易に変更できるものではありません。後づけの法律改正なのである程度はやむを得ないことと言えます。
建蔽率・容積率オーバーの基準とは?
正確に測定した建蔽率・容積率が、指定されている率を超えている建物は、建蔽率・容積率オーバーの物件です。違法建築もしくは既存不適格かのいずれかに該当します。
建蔽率は建物の水平投影面積のことですが、例外があります。一定の基準以下の出窓や1m以下の軒などは含まれません。また容積率についても、共同住宅(マンションなど)の一定以上外部にむき出している共用廊下やエレベーター車路空間などが例外になります。
建ぺい率・容積率オーバーの物件の罰則とは?
建ぺい率・容積率オーバーの物件の罰則は、既存不適格の場合はありませんが、違法建築に当たる場合は勧告などの罰則があります。しかし、勧告があっても多大な費用がかかることなので所有者は直ぐに従う例は少ないです。
違法建築物に対して近隣住民からの苦情が殺到したり、違法内容が消防法違反など重大な事故につながる可能性がある場合は、勧告ではなく指導や要請となります。従わない場合は、強制的な命令に変わります。
違反建築物
違反建築物(違法建築物)に重大な問題が発生する恐れがある場合は、強制的な措置を行政から受けることになります。違反建築物の所有者は代償を払わなければなりません。
建築完了の検査を受けた後、利用部分を増やすために増築工事などをして容積率オーバーになることが多いです。これは、建築確認済証があっても違反建築物になる例でしょう。建築確認申請の後、申請した容積以上の建築をして、完了検査を受けない悪質なケースもあります。
既存不適格物件
既存不適格物件は、建築当初は適法に建てられた建物で、現在に至る過程で法律改正があり、法律に適合しなくなった建物なので、行政による罰則はありません。ただ、消防法に抵触する場合は勧告を受けます。危険であると判断された場合は、相当の期間をおいて指導などを受けます。
既存不適格物件が容積率オーバーの場合は、利用している間は何の問題もありません。違法建築物との明らかな違いです。
建蔽率・容積率オーバーの物件を買った時の対処法
建蔽率・容積率オーバーの既存不適格物件を買った時は、違反建築物ではなく、容積率オーバーでも適法になる可能性があるという認識をしっかり持つことが大事です。
建蔽率・容積率オーバーでも、既存不適格なら何の問題もないです。もし知らずに違反建築物件買ってしまった場合は、仲介した不動産会社に抗議しなければなりません。不動産会社が重要事項説明義務違反を犯している可能性があります。
1:「既存不適格」は「違反物件」ではない
「既存不適格」は「違反物件」ではないので、不適格が建蔽率・容積率オーバーしていても何ら行政からの罰則を受けることはありません。収益物件なら一般物件よりも床面積が多い分、多く収入を得ることができるので、お得な買い物をしたことになります。
だたし、持ち続けている場合に限られます。確認申請や改装・改築、建替えなどを要する場合は、問題となります。容積率オーバーを是正しなければなりません。
2:一見してオーバー物件でも「適法」にできる
建蔽率・容積率オーバーの既存不適格の説明を受けた物件でも、「適法」にできる可能性があります。土地や建物の登記簿の敷地面積や、床面積が実際の面積と違う場合があるからです。
敷地面積は再測量することで、登記簿記載の面積よりも増える場合があります。また測量技術の進化で、昔の測量面積に誤差がある可能性も考えられます。
容積率オーバーでも、床面積で算入しなくてもよい部分がないかを確認しましょう。例えば建物内車庫や共用廊下などです。
建蔽率・容積率オーバーの物件を売る方法
建蔽率・容積率オーバーの物件を売却する方法を4つ紹介しましょう。所有している限り、問題はないのですが、売却となると買い手が付き難いなどの問題が生じます。
既存不適格物件なら違法ではないので、利回りがよいなどの理由で買い手が付く可能性がありますが、違反建築物の場合はかなり難しくなります。
1:古家付き土地として売却
建蔽率・容積率オーバーで違反建築物の場合、建物の価値を0円と考えて、古家付き土地として売却するという方法があります。この場合、家は空家であることが条件になります。
想定される買主は、土地のみを探していて、購入後古家を取り壊して更地にすることを考えている人です。取り壊し費用は買主負担となりますが、取り壊し費用相当金額の減額を要求してくると思われます。そういった場合、物件の稀少性などで交渉しましょう。
2:住宅ローンの制限
建蔽率・容積率オーバー物件は住宅ローンが付きにくいので、売買代金を安くして手持ちの現金で買える買主を探すという方法です。金融機関の担保評価を事前に確認しておきましょう。
賃貸建物などの収益物件なら、収益還元率が高い場合、高評価が付くケースもあります。しかし、住宅として売却するなら、売買代金を減額して、売るより仕方がありません。覚悟を決めて、根気よく買主を探すことになります。
3:買取業者を利用する
建蔽率・容積率オーバー物件は住宅ローンの制限などがあり、一般の買主を見つけるのが困難なので、買取業者に買い取ってもらうという方法も視野に入れましょう。
買取価格は買取業者の査定に基づきますが、相場価格よりも安くなります。
4:リフォームして活用する
建蔽率・容積率オーバーの物件の売却が難しい場合、売却するのではなく、リフォームして賃貸に出すなどして活用しましょう。
賃貸で得られる収入に、将来売却したときの代金を加算した金額と、今売却可能な売買代金(買い手が付く金額・買取業者の買取価格)を比較して有利な方を選びましょう。
建蔽率・容積率オーバーの物件の悪い問題とは?
建蔽率・容積率オーバーの物件の悪い問題は、相場価格での売却が難しいということです。
建蔽率・容積率オーバーの物件の売却方法をみてきましたが、売買代金は思っている以上に減額されます。なので、ある一定期間は所有して活用したほうが良いです。
金融機関からマイナス評価を受ける
建蔽率・容積率オーバーの物件は、金融機関からマイナス評価、すなわち担保価値の低い物件という評価を受けます。
建蔽率・容積率オーバーの物件を担保に融資し、焦げ付いた場合、担保物件が売れなければ資金回収ができないので、どうしても担保価値を下げざるを得ないのです。
建蔽率・容積率オーバーの物件が既存不適格なら相応の担保力を認めますが、違反建築物なら担保力なしで融資不可とする金融機関が多いです。
社会的評価が下がる可能性がある
建蔽率・容積率オーバーの物件が既存不適格の場合は問題ないですが、違反建築物だった場合は、所有者の社会的価値が下がる可能性があります。
売買代金が安いから、収益物件で収入が多いからといった理由で違法建築物件を購入することは、後々高い代償を支払う可能性も高くなると覚えておきましょう。
建蔽率と容積率オーバーの物件が何かを知って対策をしよう
建蔽率と容積率オーバーの物件には、既存不適格と違反(違法)建築物があり、どのような結果になるのかを知った上で、対策をしましょう。
建蔽率・容積率オーバーの物件でも適法になる可能性があります。購入した場合は、長期的に利用することや活用することを考えましょう。