節税効果に期待|不動産所得における損益通算の失敗しないポイント7つ
2020 06.4この記事はPRを含みます
不動産所得が赤字でも損益通算で税金が戻るのか
不動産所得は「損益通算」が可能となっているため、不動産所得で赤字になった場合でも他の黒字と相殺することができます。
不動産投資が節税になると言われている理由の1つが損益通算です。損益通算により不動産投資で赤字が発生しても他の所得で相殺することができ、赤字が減額されて払い過ぎた源泉所得税が戻ってきます。
ここでは不動産所得における損益通算について解説していきます。
不動産所得
不動産所得とは、所有不動産を利用した事業によって発生する収入のことを指します。
一般的に、不動産所得とは所有している物件や土地などを運営し、貸し付ける場合に発生する収入を指します。賃貸物件だけでなく、所有している土地に建てた看板の使用料、駐車場の運営、資産運用を目的としたワンルーム貸しなども該当します。
また、事業として運営している場合に限らず、一時的に自宅を有料で人に貸している場合も対象になります。
損益通算
損益通算とは、一定期間内で発生した利益と損失を相殺することです。
損益通算は不動産所得に限らず、株券や債券などの投資の利益にかかる分の税金を、損失が発生した場合に損益で差し引き、かかる税金を減らすことです。赤字分の方がそれでも多い場合には、確定申告を行うことで3年まで損失を繰り越して控除を受けることが可能です。
不動産所得・損益通算の計算方法
不動産所得における損益通算はどのような計算方法になるのでしょうか。
不動産所得とは、賃貸物件賃料・駐車場利用料金・更新料・敷金・保証金などの総収入金額から、減価償却費や管理費、修繕費などの必要経費を差し引いて残った所得のことを指します。
また、不動産所得で利益が出た分が、総合課税の対象となります。ここでは不動産所得・損益通算の計算方法について紹介します。
不動産所得がない場合
不動産所得がなく、サラリーマンとしての給与所得が500万円である場合、税金は約96万円になります。
課税所得金額が500万円の場合、(500万円-38万円(基礎控除))×20%(所得税率)-42万7,500円(税額控除)=49万6,500円となります。
また、住民税は(500万円-33万円(基礎控除))×10%で46万7,000円になるため、合わせて96万3,500円かかることになります。
赤字の不動産所得がある場合
200万円の赤字の不動産所得があり、サラリーマンとしての給与所得が500万円である場合、税金は約43万になります。
課税所得が300万円になるため、所得税率は10%になります。そのため、所得税は(300万円-38万円(基礎控除))×10%(所得税率)-9万7,500円(税額控除)=16万4,500円となります。
さらに住民税も(300万円-33万円(基礎控除))×10%=26万7,000円になります。
不動産所得における損益通算の失敗しないポイント7つ
不動産所得における損益通算にはどのようなポイントがあるのでしょうか。
損益通算を行うことにより、たとえ不動産所得が赤字になった場合でも、他に所得があれば相殺することで所得にかかる税金を抑えることが可能になります。そのため、節税として不動産投資を行うサラリーマンなどもいます。
ここでは不動産所得における損益通算の失敗しないポイント7つを紹介します。
損益通算のポイント1:損益通算できる所得とは
損益通算の対象になっているのは、「事業所得」「不動産所得」「譲渡所得」「山林所得」が赤字の場合のみです。
損益通算とは、複数の事業を行っていて所得があるときに、どちらかが黒字でどちらかが赤字の場合に双方を合わせて相殺するという方法です。
また、損益通算ができるのは、上記の所得4種類のみとなります。不動産所得も損益通算の対象になっているため、赤字が発生した場合には忘れずに行うようにしましょう。
損益通算のポイント2:損益通算の対象外となるケース
損益通算では、別荘などを貸し付けた場合の利益は対象になりません。
不動産所得は損益通算の対象になりますが、不動産を貸し付ける際の目的にも注意が必要です。たとえば、人が住むためのアパートやマンションなどの不動産ではなく、娯楽や保養、趣味などを目的とした別荘の運営などで得た利益は損益通算として計上できません。
そのため、不動産所得を節税として利用しようと考えている場合には注意が必要です。
損益通算のポイント3:損益通算の特例|土地の借入金利子
損益通算では、土地などの取得に関わる借入金の利息は対象になりません。
不動産所得の損失については例外があり、不動産投資のために金融機関から土地の購入費用の融資を受けた場合に発生した利息に関しては、一定額が損益通算の対象になりません。
そのため、不動産所得に大きな損失を計上していたとしても、土地に関わる借入金の利息分が還付されず、結果全額損益通算の対象にならないケースもあります。
損益通算のポイント4:青色申告による特別控除のメリット
確定申告の際に青色申告を行う場合、不動産投資では要件を満たせば65万円の控除が可能になります。
青色申告の特別控除には10万円と65万円の2種類があります。基本的には10万円ですが、「損益計算と貸借対照表を確定申告書に添付」といった要件を満たすことで65万円の控除が認められます。
他には、不動産投資が事業として認められる規模であることや、正規の簿記原則に従って複式簿記で帳簿を付ける必要があります。
損益通算のポイント5:事業的規模・事業的規模以外
損益通算では、事業的規模であるかそうでないかによって不動産所得の取扱いが変わる場合があります。
前述した青色申告で65万円の控除が認められる要件があるように、不動産投資が事業的規模に該当するか該当しないかによって、所得計算上の取り扱いが変わるケースがあります。
具体的には、事業的規模なら青色事業専従者給与が利用でき、固定資産の取り壊し、除却したことによる損失額も全額必要経費算入可能になります。
不動産所得における事業的規模の判定基準
不動産所得では、建物の貸し付けであれば特定の基準を満たすことで事業的規模と判断します。
不動産の貸し付けが事業的規模で行われているかどうかは、基本的には社会通念上事業と言える程度の規模で行われているかどうかによって判断されます。
ただし、建物の場合、アパートについては貸し付けできる室数がおおむね10室以上であること、独立家屋の貸し付けならおおむね5棟以上であることが基準として事業的規模に認められます。
損益通算のポイント6:譲渡所得がある場合に注意
一定の居住用の土地建物以外の譲渡所得の損失は、土地建物などの譲渡所得以外の所得の金額と損益通算できません。
前述のとおり、譲渡所得で計算上損失が生じた場合、損益通算の対象になります。ただし、居住用の不動産などの譲渡所得で生じた損失は、土地建物などの譲渡所得以外の所得金額との損益通算はできません。
また、土地建物などの譲渡所得以外の所得の損失も、土地建物などの譲渡所得の金額との損益通算はできません。
損益通算のポイント7:所得控除・ローン控除との兼ね合いを考える
一定のマイホームの譲渡損については損益通算することが可能です。
物件を売却して譲渡損が生じており、税制上の優遇措置を利用している場合は住宅ローン控除が適用できます。ただし物件売却で利益が出た場合、住宅ローン控除は受けられません。損益が出た場合は、住宅ローン控除との重複適用は可能となっています。
青色申告と白色申告について
確定申告で用いる青色申告と白色申告にはどのような違いがあるのでしょうか。
不動産所得などがある場合、サラリーマンでも確定申告をしなければいけない場合があります。確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、両者は書類に違いがあるだけでなく、控除の内容も異なります。
ここでは青色申告と白色申告について紹介します。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告は手続きが煩雑ですが、税務上のメリットがあります。
青色申告を行う場合、税務署への開業届を出すことと、開業後2カ月以内に青色申告の承認の申請を行う必要があります。もし2か月以内に承認の申請を出さなければ、その年は白色申告を行うことになります。
ここでは青色申告のメリットとデメリットを紹介します。
メリット:65万円の特別控除
青色申告は一定の要件を満たすことで65万円の特別控除を受けられます。
65万円の特別控除とは、収入から65万円を引くことができるというもので、計算上の収入が減るため支払う税金もその分安くなるというメリットがあります。
デメリット:会計ソフトを導入する必要がある
青色申告は複式簿記で帳簿をつける必要があるため、会計ソフトを利用しなければ難しいです。
青色申告では日々の取引の記録をもとに「仕訳帳」と「総勘定元帳」を作成し、確定申告の際には「損益計算書」と「貸借対照表」を作成し、必要書類と共に提出します。
そのため、専門的な知識がなければ会計ソフトを導入するか、税理士に依頼しなければ難しいでしょう。
白色申告のメリット・デメリット
白色申告は手続きが簡単ですが、特別控除を受けられません。
白色申告は税務署への特別な申請や手続きは必要なく、シンプルな記入で申請できます。ただし青色申告のような控除を受けることはできません。
ここでは白色申告のメリットとデメリットを紹介します。
メリット:事前の申請が不必要
白色申告は事前の申請が不要です。
白色申告の場合、税務署に開業届を出したり、承認の申請を出したりといった手続きをする必要がありません。そのため、不動産投資などの副業を持っているサラリーマンや、フリーランスで働いている人などさまざまな人が利用できます。
デメリット:特別控除がない
白色申告は特別控除を受けられません。
白色申告の場合は青色申告で受けられる10万円、もしくは65万円の特別控除を受けることができません。しかし平成26年より白色申告でも帳簿付けや領収書などの書類の保存が義務付けられたため、青色申告の10万円控除の要件とさほど変わらなくなりました。
そのため、事前に青色申告の承認申請書を提出しておけば、青色申告で10万円特別控除を受けることも可能でしょう。
正しい知識を身につけて不動産所得の損益通算で節税しよう
損益通算を利用することで、不動産投資で赤字が出ても節税に繋げることが可能です。
損益通算についてしっかりと理解しておくことで、不動産投資で赤字が出ても節税することが可能になります。しかしその方法を誤ると、節税をしたつもりでも考えていた以上に損をしてしまうことになります。
損益通算を節税に繋げるために、事前に不動産投資についての知識を学んでおき、計画を立てて行うことが重要だと言えるでしょう。