不動産の法人化とは|不動産の法人化のメリット6つデメリット5つ
2020 10.21この記事はPRを含みます
不動産の法人化とは
不動産を所有する規模が大きくなると、法人化することによって節税対策になります。
不動産を所有する投資家やオーナーは青色申告で確定申告を行うと、帳簿を付けるだけで青色申告特別控除を受けて、損失を最長3年繰越できます。しかし、不動産の規模が大きくなると法人化する事で、損失の繰越期間が最長10年に延びるというメリットがあります。
さらに法人化した場合、個人よりも信頼度が上がるので、資金調達が有利になります。
個人と法人の違い
国や自治体に収める税金に大きな違いがあります。
個人(個人事業主)と法人の違いとして、国や税務署への手続き・税金・社会的信用がありますが、税金の違いが大きいです。
個人事業主が支払う所得税は所得の5~45%で、所得に応じて税率が変わります。また、経費の範囲は法人の方が広くなります。
不動産の法人化のメリット6つ
不動産の法人化は税制面でメリットがあります。不動産のオーナーや投資家が法人化すると、経費を計上できる範囲が大きくなり、相続税対策になるので、節税対策になると言われています。
このように、個人と法人では様々な違いがありますので不動産投資において法人化するメリットを6つ紹介します。
不動産の法人化のメリット1:相続税対策
不動産の法人化で相続税が節税されます。
個人で不動産経営を行うと、賃料の収入から経費を差し引いた残額が所得となりますが、これが毎年積み重なっていくと相続財産となり、相続税として課税対象になります。
これに対して法人化した場合、所得を役員報酬として家族に分散すると、親の財産の増加が低くなり、将来相続する家族は相続税の納税資金を蓄える事が可能になります。
不動産の法人化のメリット2:所得税率より法人税率の方が低い
平成28年度税制改正で、法人税の実効税率が30%を切りました。
個人の所得税率は、所得が高い程税率が上昇し、個人の課税所得が900万円を超えると33%の所得税率で、4000万円以上では45%になります。
これに対して法人税率は年々下がり、平成28年度税制改正で法人実効税率は20%台に下がったのと、法人は課税所得が増えても基本税率が変わらないので、所得が900万円を超えると個人より税率は低くなります。
不動産の法人化のメリット3:家族に報酬を払うことができる
法人で発生した利益を役員報酬として支払い可能です。
個人の場合でも、青色事業専従者給与として配偶者に給料を支払う事が可能ですが、副業では認められないといった制約があります。
法人が不動産を所有すると、法人が賃料を得て利益を得るので、家族がその法人の役員になって仕事をすれば、役員報酬を支払う事ができます。さらに、法人は役員報酬を支払う事で、所得が分散されるので、税率が低くなります。
不動産の法人化のメリット4:短期の譲渡税率が低い
所有期間が5年以下の不動産を売却する場合、税率は法人税のほうが低いです。個人所有でかつ所有期間が5年以下の不動産を売却する時、短期譲渡所得として39.63%の税率がかかります。
これに対して法人所有の場合は、資本金1億円以下の中小企業の法人税の実効税率は平成30年度で33.59%です。単純に税率だけを比べてみると、法人のほうが低いです。尚、売却する条件によって税率が変わるので、注意が必要です。
不動産の法人化のメリット5:経費に計上できる項目が多い
法人は保険料・役員報酬・退職金を経費に計上して、節税効果を高める事が可能です。
保険料の支払いを経費として計上できるのは個人では12万円までに対して、法人は上限がないので、保険料を多く払う程、節税効果が高くなります。
役員報酬は法人が役員に支払う事で課税所得が分散されるので、節税効果が高くなります。法人は代表取締役や役員に退職金を支払う為の積立金を経費扱いにできるので、法人の課税所得の圧縮になります。
不動産の法人化のメリット6:損失の繰越期間が長くなる
不動産事業で赤字が発生した時、最長10年繰越可能です。
不動産事業で赤字を出した場合、個人事業では最長3年間しか繰越できないのに対して、法人では青色申告で最長10年繰越可能で、次年度以降の所得から差し引く事が可能です。その結果、損失を差し引く事で法人税を抑える事ができます。
法人の繰越控除期間は従来9年でしたが、平成30年4月1日以降に開始した事業年度から10年に延びました。
不動産の法人化のデメリット5つ
不動産の法人化するデメリットは、設立・運営上でコストがかかります。不動産の法人化はメリットばかりでなくデメリットもあります。法人化のデメリットは設立費用がかかる上に、電話料金・自動車保険の保険料・金融機関の振込手数料が割高になる可能性があります。
また、法人化して利益を生むと、税務署による税務調査の対象になりやすいので、常に会計処理は適切に行う必要があります。ここでは、法人化するデメリットを5つ紹介します。
不動産の法人化のデメリット1:法人の設立費用がかかる
法人化に必要な定款の認証・設立登記を行うのに、手数料がかかります。法人を設立する時、最初に会社の目的や商号・本店所在地を記載した定款を作成して、公証人役場での認証が必要なので、手数料が発生します。
次に設立登記を行うのに、資本額に応じた登録免許税をはじめとする費用がかかる上に、手続きを司法書士に依頼すると合同会社で10~15万円程度、株式会社で25~30万円程度の費用がかかると言われています。
不動産の法人化のデメリット2:赤字でも納税する必要がある
法人が赤字で所得がなくても、地方税が課税されます。
不動産の法人化にすると、国税である法人税以外にも地方税が別途課税されます。地方税は法人所得に応じた所得割の他に、法人が存在することに対して課税する均等割の税金があります。均等割は法人所得が赤字でも毎年必ず一定の税額を納めなければならないです。
東京都の場合、資本金1000万円以下で従業員数が50人以下の法人の均等割は年間7万円かかります。
不動産の法人化のデメリット3:社会保険に加入する義務がある
法人が給与を支払うと社会保険に強制加入となります。
法人は社長1人であっても役員報酬を支払うと、社会保険への加入が義務付けられる「強制適用事務所」に該当します。法人は社会保険の加入手続きを取らないと、法律で罰せられます。
社会保険料の法人負担は大きいため、不動産を法人化する時は社会保険料の負担を考慮した上で、検討する必要があります。
不動産の法人化のデメリット4:税理士費用がかかる
税理士に確定申告の財務書類作成を依頼する費用が発生します。
個人の確定申告には白色申告と青色申告があり、青色申告は複式簿記による帳簿の記帳が必要なものの、10万円まで特別控除可能です。
法人にも白色申告と青色申告がありますが、法人の場合は必要な帳簿の記載事項が多く、税務署から詳細なものを求められます。この為、税理士に必要な財務書類の作成を依頼します。
税理士に依頼する際は、10~15万円程度かかると考えましょう。
不動産の法人化のデメリット5:法人を廃止する際にも費用がかかる
解散登記・清算人選任登記と清算結了登記の手続きで費用がかかります。
法人を廃止すると、臨時に総会を開いて解散決議や清算人(基本的には代表取締役)の選任を行い、法務局で登記を行います。
この時登録免許税が発生します。法人の清算手続きが完了すると、確定申告と清算結了登記を行いますが、ここでも登録免許税が発生します。他にも、官報公告や財産処分・税理士への依頼で費用がかかり、トータルの費用は平均10万円です。
不動産の法人化のタイミング
法人化するタイミングでおすすめなのは、不動産物件を購入した時です。
それまで個人で購入した物件を法人へ移行しようとすると、登記にかかる費用や不動産所得税を再度支払う必要があるので、後から法人に移行すると無駄な費用が発生します。
個人が不動産所得を多く見込める場合は、物件購入時がベストですが、当初多くの利益が出ない物件や少額の不動産から始める場合は、不動産所得が増えてからでも遅くないでしょう。
法人税より所得税の方が高くなった時
個人から法人に切り替えるタイミングです。
所得税は累進課税で計算されるので、所得が増えれば税率も上がります。これに対して法人は一律の条件です。所得税より法人税の税率が低い時に、法人への切り替えを検討します。
一般的に家賃収入が900万円を超えた時も切り替えのタイミングになりますが、個人が専業大家かサラリーマンの副業で行っているのかによっても、条件が変わります。
法人化するための方法
法人化した不動産会社には3種類の運営形態があります。不動産会社の運営形態として、不動産所有方式・管理委託方式・一括転貸方式の3種類あります。
不動産所有方式は建物を不動産会社が所有し、管理委託方式は不動産の管理業務のみ、一括転貸方式は賃貸不動産を設立した会社に貸して会社が入居と契約を行います。節税の観点から法人化をする場合は、不動産所有方式が1番効果あります。
会社の設立
会社設立は司法書士に依頼すると進めやすいですが、独力でも可能です。
会社設立は、1)会社設立準備、2)定款作成・認証手続き、3)登記書類作成・登記手続き、4)開業届・口座開設、5)設立完了、の流れになります。会社設立の作業は独力でも可能ですが、費用面で問題なければ司法書士に依頼するとより進めやすくなります。
会社設立登記後は年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所・健康保険組合に設立届を出します。
設立した会社に建物を譲渡
税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出します。
法人の運営が不動産所有方式の場合、不動産を法人の所有にするには譲渡する必要があります。
建物を設立した法人に譲渡する時、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出すると、本来なら支払う必要がある権利金や地代を支払わなくても贈与税・法人税の課税対象外となります。
届出書の提出後、建物の賃貸契約を変更します。
不動産の法人化のメリットとデメリットを知りタイミングを考えよう
法人化の際、近年の相続税の課税強化と法人税の引き下げを考慮する必要があります。
従来、不動産の法人化を行うタイミングは「不動産収入が年間1000万円を超えた時」と言われていましたが、近年の法人税引き下げによって条件が変わりました。
さらに、相続税の課税強化も大きな要因です。しかし、法人化は設立の手続きだけでなく、社会保険やより詳細な帳簿記載が必要なので、税理士と相談の上でタイミングを検討しましょう。