滞納家賃の時効は何年?時効の成立条件4つと時効の中断方法を紹介
2020 06.4この記事はPRを含みます
家賃の滞納にも時効がある
権利を行使することができる一定の期間に、その権利を行使しないでいると、権利自体が消滅してしまうことを「消滅時効制度」といいます。
例えば、お金を人に貸したものの法律によって定められた一定期間を越えてしまった場合、そのまま何もせずに放ったらかしにしていると、その借金自体が無かったことになってしまいます。
この消滅時効制度は、家賃を滞納した場合にも適用されます。
家賃の滞納は5年で時効になる
時効によって消滅する期間は、一般的な債権(借金)は民法167条によって、10年とされています。毎月定期的に支払う家賃のように、短い期間ごとに発生するようなものについては、民法169条によって5年が時効とされています。
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
時効の起算点は民法改正法施行で変わる
家賃の時効期間は、延滞となった起算点によって消滅時効にかかってきます。毎月払いの家賃が、それぞれの延滞となった起算点から支払期間として、時効が消滅していくことになります。
つまり、家賃が滞納して時効が成立したといっても、すべての滞納分が合計で時効になるわけでなく、毎月分ずつ時効になっていくということになります。
時効の起算点は、民法改正法施行によって2020年4月から改定することになりました。
2020年3月まで
家賃の滞納の時効について、2020年3月までは、民法第169条が適用され、時効の成立は5年と定められています。
例えば、現在より5年以上前の家賃が一か月分支払われずにそのまま滞納していた場合、家を借りていた者が気づかず、承認などをしていない限りは、時効は消滅するというものです。
2020年4月以降
民法改正法では、家賃の滞納の時効は、現在の第169条が削除され、改正民法第166条に集約されることになりました。
改正民法第166条の規定は、債権(借金)者は、権利を行使することができることを知った日から起算して5年間、または、権利を行使できるときから、10年間権利を行使しなければ、時効は消滅することになっています。
そのため、家賃の滞納における時効の消滅は正前と変わらず5年となります。
第百六十六条 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
滞納家賃の時効の完成条件4つ
家賃を滞納して、その分の時効を成立するためには、条件が必要となります。そのために、下記の4つの完成条件を満たす必要があります。
・家賃滞納から5年以上経過していること
・時効成立まで滞納している家賃を一切支払っていないこと
・滞納した家賃の回収を行っていないこと
・借主が貸主に対して時効の援用
この4つの条件の、それぞれについて詳しく説明していきます。
1:家賃の滞納から5年以上経過している
通常の債権(借金)は、滞納してから10年間行使しないときは、時効が消滅しますが、家賃の場合は、5年間となっています。そして、その5年を一日でも過ぎれば、消滅時効は成立することになります。
家賃の滞納した時期は、支払期限を起算点として計算するわけですが、その根拠となる日は、賃貸借契約書の記載されている家賃支払日となります。また、家賃支払日が月末と決められていた場合には、翌日1日からの計算です。
2:時効成立まで滞納家賃を一切払っていない
家賃の消滅時効を成立されるための条件として、滞納した家賃を一切支払っていないということも必要です。
なぜ滞納した家賃を一切支払わないことが条件になるのかというと、もし少しでも支払ってしまうとその家賃を支払っていない、ということを滞納者が認めていることになるからです。
家賃の支払いが遅れていることを一度認識してしまっているため、支払いを忘れていたということが理由にならなくなってしまいます。
3:滞納家賃の回収手続きを何も行っていない
もし家賃の滞納について貸主が気づき借主に対して回収手続きを行ったら、そこで消滅時効は中断されてしまいます。
時効が中断されると、今までの時効期間はリセットされて、初めからまたカウントされていきます。つまり、滞納をし続けたとしても時効はいつまでも成立しなくなり、支払わなくてはいけない義務が消滅することはなくなってしまいます。
そのため、家賃の滞納の回収手続きなどを行なわなければ消滅時効は成立するでしょう。
4:借主が貸主に時効の援用を行う
最後に、家賃の滞納の消滅時効を成立させるためには、借主が貸主に対して時効の援用を行う必要があります。
時効の援用というのは、借主が滞納している家賃の時効が成立したことを、貸主に対してアクションを行い、受理してもらうことをいいます。
その方法は、内容証明郵便によって、消滅時効を援用するという意思を貸主に対して明確にします。その内容証明を貸主が受け取った時点で、時効の援用が成立することになります。
滞納家賃の時効の中断方法3つ
家賃を滞納した人に対して、借主が何もしない場合そのまま時効が成立してしまい、家賃を回収することができなくなってしまいます。
その消滅時効を中断させるにはいくつかの方法があります。消滅時効の中断というのは、その方法を行うことで今までカウントされていた時効期間をすべてリセットし、なかったことにするというものです。
これからは、滞納家賃の時効の中断方法3つについて詳しくご紹介していきます。
1:裁判上の請求
消滅時効を中断させるためには、滞納者に対して、滞納している家賃の請求をすることが必要です。その請求の方法にはいくつかの手段があります。
家賃滞納での民事訴訟の流れとしては、まず貸主が家庭裁判所に訴状を提出し、家庭裁判所は訴状の受付、審査をしたあとに滞納者に訴状を送付します。滞納者からの答弁書が提出されたら家庭裁判所の受理のあと、貸主は受領します。家庭裁判所はそこで判決を行います。
訴状の提出
家賃滞納で消滅時効を中断させるための裁判をはじめるには、訴状の提出が必要です。
その具体的な書類の記載方法は、原告(貸主)と被告(滞納者)の氏名・住所、請求する金額と趣旨、請求の原因などの記載をします。
その後、被告から送られてきた答弁書にその請求の趣旨や原因について認めるかどうかということが記載されており、証拠書類や証人尋問等の準備をしていきます。裁判官の審理のあとに和解するかどうかを決めます。
支払督促
家賃滞納の時効を中断させる方法で、訴状の提出をして時間や手間をかける方法以外に、催告書を送る方法もあります。
支払催促は何度連絡しても返答やリアクションのない場合などには、まず時効を中断させるのに有効な手段です。催告書の内容は「返答がないようでしたら裁判を行いますね」といった内容になります。
方法は内容証明郵便で、いつ、だれが、だれに、どのような内容であるかということを明確に定めておく必要があります。
調停申し立て
調停というのは、裁判所で双方が話し合うことをいいます。
調停の手続きの流れは、まず貸主が調停の申し立てを裁判所に行います。裁判所から調停期日の指定があり、そのあと双方の当事者たちは、調停の期日までに呼出しがあります。
調停は裁判のように勝ち負けで決めずに、裁判官を交えての双方の話し合いで解決する方法です。円満に解決するために設けられた制度です。
どうしても折り合いがつかない場合、調停不成立となります。
即決和解申し立て
即決和解申し立てというのは、当事者双方が、和解や合意などの見通しがついている場合に、その和解したという証明書を裁判所で作成してもらう手続きのことをいいます。
この即決和解申し立ての良いところは相手の滞納者が決められた事項を守らなかった場合、即時に強制執行することができるというところにあります。
裁判の手続きをしてから執行するのと、裁判をしないで強制執行するのとでは3ヶ月から4ヶ月の期間の差があります。
2:債務の承認
滞納者が家賃の滞納分を1円でも納めると、債務を承認したということになり、時効は中断します。
つまり、滞納者が遅れている家賃があることを認めて、納める意思のあることを表明したということになるのです。
さらに、この債務の承認は、消滅時効の期間が満了したあとに納めても時効の中断をする効果があります。そのため、時効が成立したあとにでも債務の承認を行えば、また時効をはじめからやり直さないといけなくなります。
3:差押え
訴訟を起こしたり支払催促のために裁判所への申し立てを行ったり、裁判所が滞納者に対して強制執行などの許可を出せば、貸主は滞納者へ財産の差押さえをすることができます。
差押えをすれば、家賃滞納の消滅時効は中断することになります。
民法改正で時効の中断制度も変わる
2020年の4月からの民法改正では、時効の中断についても変わります。
時効の中断というのは、今までの時効期間がすべてリセットされるといったものでした。また時効の停止というのは、停止する理由のある期間は時効がストップしその理由がなくなればまたその続きから時効が進行するというものでした。
民法改正法では停止と中断といった誤解されやすい文言から時効の完成猶予、時効の更新といった用語に変更されることになりました。
時効の完成猶予・更新へ
時効の進行が止まり、そのあと停止していた理由がなくなった場合、時効がそこから継続されるという時効の停止、そして時効の期間が全部リセットされてゼロに戻るという時効の中断は、時効の完成猶予、時効の更新という名目に変わり、そしてその内容についても整理されることになりました。
仮差押えや仮処分など、これまでは時効の中断の事由になっていたものが、民法改正法では、時効の完成猶予の事由となりました。
家賃滞納者との契約解除の条件3つ
貸主は、家賃が収入源であるためそれがきちんと毎月入ってこないのは非常に困ります。しかし、それはいつでも起こりうる貸主のリスクであるといえます。
家賃を滞納している借主には、いつまでも部屋に居続けられるよりも、退去してもらった方がいいのですが、なかなかそう簡単にはいかないものです。
家賃滞納者と、契約を解除するための条件にはどのようなものがあるのでしょうか。
条件1:3カ月以上の長期滞納
家賃の滞納が3カ月以上の長期滞納者は要注意です。
それ以上待っていても、よほどの予定がない限り支払ってもらえる可能性が少ないといえるでしょう。しかも滞納は解消されずに増えていくばかりと予想もされます。
そうなると貸主としては時間の経過が直接損害となってしまいます。そういう方にはできるだけ早く退去してもらわないといけません。
強制退去は、「建物明渡請求」という裁判手続きによって実行することができます。
条件2:借主に支払の意思がない
強制退去を実行するには滞納者である借主に家賃の滞納分の支払う意思のないことを確認しなければいけません。
家賃を滞納するような人に信頼性がないため、出来ればすぐにでも出ていってもらいたいと貸主が思っていても滞納者が支払う意思があるなら、むやみに退去させるわけにはいきません。
事情によってやむを得ず滞納している場合もあるため、近々解消できる目途があるというようなことがある場合は、しっかりと確認はしておくべきでしょう。
条件3:貸主と借主の信頼関係の破綻
家賃滞納者を強制退去させるには、それ相応の条件が必要となってきます。
様々な対処を試み尽くしたけれども、もう何も手立てがなくなってしまった、最後の手段に出るしかないということに陥った場合は、信頼関係の破綻となります。
どんなに話し合っても解決の糸口がつかめずに信頼関係が破綻した場合は、強制退去を考えるときとなるでしょう。
滞納家賃の時効について知り踏み倒しを防ごう
このように家賃を滞納された場合の対応には、さまざまな方法があります。
民法でもその状況によって対応の仕方が違っており、滞納者を守ったり、貸主を守ったりする法律がそれぞれに定められています。それらの法律や手続きなどをよく理解しておくことで、家賃の踏み倒しなどの損害を受けずにトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
2020年4月から変わる民法改正法と合わせて、自身でしっかりと確認しておくことがおすすめです。