原状復帰とは?賃貸人が負担する5つの原状復帰|費用相場も紹介
2020 06.29この記事はPRを含みます
原状復帰とは?
賃貸住宅における原状復帰については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で定めています。
それによると、「賃借人の使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗や毀損を復旧する」ための原状復帰は、賃借人の負担となります。
また、原状復帰は「賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」ことを明確化しています。
原状復帰と原状回復の違い
「原状復帰」と「原状回復」は、ほぼ同じ意味を持っていますが、使われる場面が異なります。
まず、「原状回復」は公的な場面で使われ、「原状復帰」は主に建設業界で使用されます。
例えば、「原状回復」は不動産契約内容に表記されます。一方、建設業界では「原状回復」をするために「原状復帰」の工事を行います。
賃貸人が負担する原状復帰5つ
原状回復させるためには、賃貸人(経営者・大家)もしくは賃借人(入居者)が負担して、発生した損傷や汚れをもとの状態に戻さなければいけません。
普通に住んでいれば当然できる汚れや損傷は賃貸人が負担し、それ以外は入居者の負担となります。
国土交通省が示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」などを参考に、賃貸人が負担する原状復帰事項を紹介します。
賃貸人が負担する原状復帰1:クロスの変色
日照などの自然現象によって起こったクロス(壁紙)の変色は、「普通に住んでいれば当然できる汚れや損傷」になり、クロスの補修・張替えは賃貸人負担で原状復帰を行うことになります。
また、画びょうやピンで開けた穴も同様です。
ただし、タバコのヤニや臭いによるクロスの損傷、くぎやネジによるクロスの穴、ペットによる傷や臭い、落書きによるクロスの汚れ、などによってクロスを張り替える場合は、賃借人の負担となります。
賃貸人が負担する原状復帰2:フローリングの色落ち
日照などで発生したフローリングの色落ちは、クロスの変色と同様、「普通に住んでいればできる汚れや損傷」となり、フローリングの張替えは賃貸人の原状復帰となります。
また、家具などの設置による床、カーペットのへこみなども同様に賃貸人の負担によって原状復帰します。
ただし、賃借人の過失・不注意によってできた汚損、ペットによる傷などによるフローリングの修繕は賃借人の負担となります。
賃貸人が負担する原状復帰3:テレビ・冷蔵庫などの後部壁面の電気焼け
テレビ・冷蔵庫などによって後部壁面が電気焼けを起こした場合も、原則として経年変化や通常の生活による摩耗であると判断されます。
ただし、賃借人が清掃を怠った結果、発生したキッチンの油汚れ、長期間結露や水漏れを放置したことによるカビや腐食などによって壁面が汚れた場合は、賃借人の過失となります。
賃貸人が負担する原状復帰4:建具の破損
網戸や窓、ふすま、障子、柱などの建具が、地震や台風などの自然災害で破損した場合、その原状復帰費用は賃貸人の負担となります。
また、経年劣化や新しい入居者確保のために、賃貸人負担で張替えや修繕をする場合もあります。
なお、賃借人の過失や故意による毀損が原因の修繕は、賃借人の負担となります。
賃貸人が負担する原状復帰5:設備の故障
賃貸人が設置した設備、例えば浴槽、風呂釜、給湯器、コンロ、エアコンなどの取替えや修理は、賃貸人が負担します。
これは、次の入居者確保のために行う場合も同様です。
ただし、賃借人に過失がある場合、不適切な使用方法もしくは用法違反による設備の毀損は、賃借人が原状復帰を負担します。
原状復帰のために賃貸人が行うべきこと8個
通常、建物の価値は時間の経過とともに減少するため、賃借人が普通に使用していれば、退去時に入居前の状態よりも建物の価値が減額しているとしても当然です。
一方、賃貸物件は、新しい入居者確保のために賃貸人の負担で原状復帰し、なるべくきれいな状態にするのが一般的です。
ここからは、賃貸人が原状復帰のために行うべきことを具体的に紹介します。
行うべきこと1:フローリングのワックスがけ
フローリングの日焼けや色落ち、ワックスの剥がれなどは、通常の生活をしていてもおこるため、フローリングのワックスがけは、賃貸人の負担となります。
フローリングのワックスがけは、6畳の部屋で8,000円~15,000円程度が相場といわれています。
フローリングのワックスがけは、後述するハウスクリーニングに含まれている場合があります。
行うべきこと2:エアコン内部の洗浄
賃貸人支給でエアコンが設置してある物件に新しい入居者が入る前には、一般的に賃貸人の負担によってエアコンの内部洗浄が行われます。
喫煙などの強い臭いや汚れが付着していなければ、賃借人が負担することはないでしょう。
エアコン内部洗浄の費用は、1台あたり12,000円前後で清掃業者が行います。ハウスクリーニングと併せて行われる場合が多いでしょう。
行うべきこと3:設備
賃貸人は、自身が設置した設備、浴槽、風呂釜、給湯器、コンロなどの交換や修理も、原状復帰として行う必要があります。
いずれも生活に欠かせないもので使用頻度も高く、特に給湯器やコンロ、エアコンなどは10~15年で寿命を迎えます。これらの取り換えは工賃込みで10万円前後です。
なお、これらも他の項目と同様、賃借人の過失による毀損を修繕する場合は、賃借人の負担となります。
行うべきこと4:クロスの張り替え
前述したとおり、経年変化によるクロスの変色や電気焼け、細かい傷などは、賃貸人の負担によって原状復帰を行います。
クロスの寿命は10~20年と言われており、入居者が変わるタイミングでクロスの張り替えをする場合があります。
クロスの張り替え費用の相場は、6~12帖で50,000~70,000円程度といわれています。
行うべきこと5:クッションフロアの張り替え
クッションフロアとはキッチンやトイレなど、水回りの床に敷かれている弾力のある床材のことです。物を落としても割れにくい、水に強い、階下への騒音・振動を防ぐなどの目的で利用されます。
クッションフロアは、日常生活の中で傷や汚れが出てくるため、多くの場合入退去時に賃貸人負担で張り替えられます。
張り替え費用の相場は、1戸あたり40,000~50,000円程度です。
行うべきこと6:ハウスクリーニング
入居者が退去した際、原状復帰としてハウスクリーニングを行います。
清掃場所は、キッチン・浴室・トイレ・ベランダ・窓などで、特に換気扇やコンロ、トイレ、浴室などは消毒もかねて手の届かない場所まで念入りに行います。
フローリングのワックスがけや、エアコンの内部洗浄を含む場合もあります。
たばこのヤニや臭いで汚染されている場合や、ハウスクリーニング特約で費用負担が契約書に記載されている場合は、賃借人が負担します。
行うべきこと7:鍵の交換
鍵の取り換えは、原状回復のためだけでなく、防犯の危険を回避するために、新しい入居者が入るタイミングで必ず行われます。これは、賃貸人の負担となります。
鍵を交換する費用の相場は、15,000円程度です。
なお、賃借人の過失による破損や紛失などがあった場合や契約書に「鍵交換費用の特約」が記載されている場合は、賃借人の負担によって鍵の交換が行われます。
行うべきこと8:建具の交換・修繕
網戸や障子、ふすまなどの建具が経年変化によって劣化してきた場合、賃貸人の負担によって修繕や取り換えを行います。
また、畳がある場合は、畳の裏返しまたは表替えを行います。
網戸や障子、ふすまなどの張り替えは5,000~10,000円、畳の表替えは20,000円前後(6畳)で行えます。
賃貸人が負担する原状復帰に必要な費用の相場
賃貸人が負担すべき原状復帰のための費用は、状況によって大きく幅があります。
一般的に、賃貸人がハウスクリーニングや鍵の交換は入退去のタイミングで行います。そして、必要に応じて小規模から大規模の設備の交換・修繕が行われます。
ワンルームのハウスクリーニングと鍵の交換費用の相場は、併せて30,000~50,000円程度で、クロスの張り替えや設備の修繕などが加わると、数万単位で上がっていくことがあります。
不動産投資する時は原状復帰の基本を押さえて費用も見込んでおく必要がある
賃貸物件は初期投資費用だけでなく、保守費用も発生します。また、原状復帰に関しては、賃貸人と賃借人の間で、トラブルが発生することもあります。
最低限のハウスクリーニングや鍵交換費用はそれほどではありませんが、設備・機器の交換や修繕費用が重なると、その額は決して安くはありません。
不動産投資をする際は、事前に原状復帰の費用も見込んでおく必要があります。