不動産業界の概要|4つの仕事の分類と動向のポイント9つ
2020 10.21この記事はPRを含みます
不動産業界の概要
近年の不動産業界の動向としては、長く続く不景気により、新築よりも中古物件の需要が高まってきています。そのため、企業側は老朽化した中古マンションのリノベーションやリフォームをして、収益を上げようとする傾向が高まっています。
また、貸家も増えてきています。これは相続税に対する節税や、副業としての家賃収入を得るためで、不景気対策も含まれているでしょう。
不動産業とは
不動産業界とは、土地や建物などに関わる仕事をする業界を指します。不動産業界の仕事は、建設、販売、賃貸借、管理の4つに分けることができます。
そのため、不動産業界と言っても、商業施設やビルなどを開発するデベロッパーから、住宅を建てるハウスメーカー、物件の売買や賃貸を仲介する不動産業者や住宅販売会社、またそれらの不動産物件を管理する管理会社など、とても幅広いです。
不動産業界の仕事の分類4つ
不動産業界は建設、販売、賃借、管理の4つに分けることができます。これらのどの部分に関わるかによって、その企業の仕事も大きく変わります。
そのため、不動産業界の仕事に就くことを希望している場合や、これから物件の購入や賃借を検討している場合には、それが不動産業界のどの分類に属しているか把握しておく必要があるでしょう。
分類1:不動産開発・建設業
タワーマンションや商業施設の建設、住宅地の開発など、街づくりや大きな規模の企画・開発はデベロッパーが行います。デベロッパーは事業を企画して、実際の建物を建てるのは設計会社やゼネコンなどになります。
また、ハウスメーカーは街づくりではなく、個人に住宅を販売することをメインに家を建てるのが一般的です。これらが不動産業界の不動産開発や建設業に当たります。
分類2:不動産流通業(販売・仲介)
不動産業界の中でも不動産流通業は、買いたい、売りたい、貸したいなどのニーズに対応します。
顧客双方の間に立ち物件を紹介したり、契約条件や引き渡しの調整を行ったりするなどの、不動産の仲介役や販売代理、販売を担います。そして、仲介の場合は、仲介手数料によって利益を得ることになります。
不動産仲介業者や販売業者などがこれに当たるでしょう。土地や建物は価値の高いものなので、信用や信頼が重要となります。
分類3:不動産管理業
不動産業界の仕事は土地や建物を販売したり、誰かに貸したりすれば、それで終わりというわけではありません。土地や建物を使ってもらうための宣伝や、賃貸の場合は家賃の回収や契約の管理、建物のメンテナンスなど、いろいろと行うことがあります。
特に、入居者からのクレーム対応や、保険のトラブルが発生した時の対応などは重要となります。大家がこれらを自ら行っている場合もありますが、管理会社に任せているという場合も多いでしょう。
分類4:不動産保証業
賃貸借契約を結ぶ際の保証料とは、不動産保証会社が連帯保証人となってくれるサービスの手数料のことです。このサービスを利用すると、借主が家賃滞納のような債務不履行を発生させた際に、貸主に立替払いをしてもらうことができます。
親族に保証人を頼みづらいという人は多く、身寄りのない一人暮らしで保証人を頼める人がいないということも多くなってきています。そのため、不動産業界では不動産保証業のニーズは高まってきていると言えるでしょう。
【分野別】不動産業界の今後の動向のポイント9つ
不動産業界はその時代のニーズや景気などに左右され、その価値や動向は大きく変わることもあります。そのため、就職や転職をするにしても、投資をするにしても、まずは不動産業界の現状と今後の動向を把握しておくことは重要です。
また、同じ不動産業界でも4つの分類ごとに現状と今後の動向は少しずつ異なるので、それらのことを理解しておく必要があるでしょう。
中古マンション市場
不景気が続く現状では、新築よりも中古マンションの方が価格は安く、需要も高いと言われています。しかし、老朽化した中古マンションをそのまま売りに出しても、買い手からはあまり魅力を感じてもらうことできないかもしれません。
そのため、リノベーションやリフォームをして、中古マンションを綺麗することで価値を高めて販売、賃貸にするという企業が増えています。
ポイント1:リノベーション市場
リノベーションした中古マンションはまるで新築のような見た目となり、また新築よりも手頃な物件ということで、その人気は高まっています。
リノベーションでは単に壁紙やクロスなどを貼り替えて、内装を綺麗にするだけでなく、間取りを変えてしまうような大改装を行う場合もあります。
そのため、何年も前に建てられた中古マンションでも、今の時代に合った間取りで再生することができるので、これからも伸びる市場だと期待されています。
ポイント2:リフォーム市場
リフォームは老朽化した部分を補修して、新築に近い状態に修繕することです。リフォームもリノベーションと同様に、老朽化した中古マンションの価値を高めてくれて、新築よりも手頃な値段となるため、人気が高いでしょう。
リフォームやリノベーションは、テレビや雑誌などでも取り上げられることが多く、今後もその需要がすぐに落ちるとは考えにくいです。
東京都心部
ただでさえ土地や建物の価値が高い東京都心部ですが、2020年の東京オリンピックに向けて東京のまちづくりが進められてきました。しかし、東京オリンピックは新型コロナウイルスの影響によって、1年延期となってしまいました。(2020年4月時点)
このオリンピックの延期や新型コロナウイルスの影響は、不動産業界だけでなく多くの場で混乱を生んでいるでしょう。また、政府の対策も不透明な部分が多く、今後どのような影響が出てくるのか、いろいろな憶測がされています。
ポイント1:新規マンション開発計画
東京オリンピックに向けて、いろいろな場所で新規マンション開発が行われてきました。これらは東京のまちづくりという意味もありますが、オリンピックに参加する選手を受け入れる、選手村としても活用するために建てられたものもあります。
選手村としての建物は、オリンピック大会後に賃貸や分譲の住宅に整備して販売される予定となっていました。しかし、東京オリンピックが2021年に延期されたため、その予定も延期となりました。
ポイント2:オリンピック後の供給過多懸念
オリンピックが開催されれば、大きな経済効果が期待できます。
しかし、そのオリンピックの経済効果に合わせて開発や設備投資などを行うことで、 オリンピック後には価値が下がったり、使い道や需要が減ったりするなど、設備や開発したものが過剰な状態として残ってしまうという懸念もされています。
これはオリンピック開催が延期された今でも、変わらない課題点と言えるでしょう。
一戸建て
一戸建てもマンションと同様に、中古の需要が高まってきています。中古一戸建ての場合も、リフォームやリノベーションによって価値を高めて売買や賃貸などに出されることが多いでしょう。
また、一戸建てをリフォームやリノベーションするだけでなく、家主が貸し出しやすくなる仕組みや環境に整えるなど、中古市場の活性化を試みる企業も多くなってきています。
ポイント1:自宅を貸し出しやすくする環境
マンションやアパートなどの共同住宅は人気が高いでしょう。
しかし一戸建てには、騒音での隣人トラブルや、収納スペースの広さ、洗濯やお風呂の時間を気にしなくて良いなどのメリットがあります。そのため、家主が貸し出しの方法がわからないという場合でも、一戸建ての賃貸管理に力を入れる管理会社に相談することが可能です。
自宅を貸し出すための方法を教えてもらえたり、それに必要な環境を整えてくれたりするため、人気は高まってきています。
ポイント2:リフォーム
中古の一戸建てが人気の理由の1つとして、新築よりも価格が手頃ということがあります。また、業者や企業が先にリフォームやリノベーションをして売りに出すということもありますが、先に中古物件を購入してから、自分たちの好きなデザインにすることも可能です。
自分たちでリノベーションをする際に、注文住宅よりも費用が抑えられるということも人気の理由です。そのため、リフォームやリノベーション業者の需要が高まっています。
ポイント3:省エネ型住宅の取組み
国はZEHやLCCM住宅などの省エネ型住宅を増やすことを、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画においての政策目標として設定していて、住宅や建築物の省エネ化に向けた取組みが進められています。
また、2015年7月には建築物省エネ法が制定されています。環境問題は今後も向き合っていくべき問題であるため、建築物の省エネに対する取り組みは広がっていくと考えられます。
消費者意識
国が省エネ型住宅の取組みを進めているため、不動産業界はそれに従う必要があるでしょう。その、省エネ型住宅の延長として、自家発電システムや蓄電池、HEMSなどを組み合わせて、家庭で使うエネルギーの消費量を減らすスマートハウスへの動向も高まっています。
省エネにすることは、環境問題への対策となるだけでなく、その家に住む人にも直接的でわかりやすいメリットがあります。
ポイント:スマートハウス
スマートハウスとは、家庭で使うエネルギーの消費量を減らす住宅です。具体的には、自家発電システムなどを備えて、エネルギーを作ることができ、蓄電池にエネルギーを溜めて、効率良くエネルギーを使うことで省エネを実現します。
これらが実現することによって、スマートハウスでは光熱費を抑えることが可能です。環境問題も重要ですが、このわかりやすいメリットは消費者の意識を惹きつけているのではないでしょうか。
旧耐震基準マンション
1981年に建築基準法の耐震基準は大きく改訂されました。そのため、1981年を境目にして、旧耐震基準と新耐震基準と言われるようになりました。
旧耐震基準マンションは値が下がりやすいというメリットがあるものの、震度5以上の地震を想定した耐久性がないこともあり、修繕費用がかかりすぎてしまうデメリットもあります。
また、不動産業として旧耐震基準マンションを扱うのであれば、特に注意しておくべき点があります。
ポイント:マンションの建替え
旧耐震基準マンションには、できるだけ早く建替えが必要なものがあります。しかし、区分所有となっているマンションを建替えるには、住民の5分の4の賛成が必要となります。そのため、なかなかマンションの建替えができない場合もあります。
また、建替えを見越して新しい住民を受け入れることができなくなり、空室が多くなってしまうことも考えられます。このような古いマンションの建替え問題は、今後も増えていくと予想されるでしょう。
不動産業界の課題3つ
不動産業界では2020年の東京オリンピックの延期や、国が進める省エネ型住宅の取組み、旧耐震基準マンションなどいろいろな課題があります。これら以外にも、不動産業界全体が抱えている課題がいくつかあります。
不動産業界の課題1:人口減少への対応
日本が抱える社会問題の1つに、少子高齢化があります。少子高齢化で若い世代の人が減ってしまうことで、マンションやアパートの需要が減ると言われています。また、今後は日本の人口減少も進むと予想されています。
人口減少は住宅の需要を下げるだけでなく、その後の街の開発や商業ビルのテナント状況、空き家の増加など、いろいろな問題を引き起こす可能性があるので、不動産業界はその対応が必要となるでしょう。
不動産業界の課題2:IT化への対応
物件探しをする際には、インターネットで検索するということが当然のようになってきました。そのため、物件を探す側である、顧客のためのIT化は進んでいると言えるでしょう。
しかし、不動産業界ではIT化の対応が遅れています。例えば、主な連絡手段が電話やFAXであることや、契約時には対面で重要事項を説明、退去時の立会い、郵送での書類のやりとりなど、他の業界よりもITによる効率化は進んでいないでしょう。
IT化への対応も、今後の課題となるのではないでしょうか。
不動産業界の課題3:ブロックチェーン技術の応用
不動産業界のIT化は、ブロックチェーン技術によって少しずつ進みはじめています。ブロックチェーン技術とは、仮想通貨を実現した技術で、重要データをネットワークで共有することができます。
このブロックチェーン技術を応用すれば、不動産データの連携や共有ができるシステムができたり、取引が自動になったりと、不動産業界全体で作業効率を上げることが可能になると言われています。
不動産業界の売上高・シェア
不動産業界でも、日常生活の中でよく利用されるのは不動産仲介会社です。
大手不動産仲介会社の売上高の推移は、公益財団法人不動産流通推進センターが2019年に発表した内容によると、三井不動産リアルティグループは1,706,843(百万円)、住友不動産販売は1,326,357(百万円)、東急リバブルは1,245,530(百万円)となっています。
不動産業界の動向と課題を学ぼう
不動産業界は景気や時代の影響を受けやすく、いろいろな課題を抱えています。
不動産業界で仕事をするつもりであったり、これから住宅の購入や賃貸の契約を検討したりしている人は、しっかり事前に情報を集めておきましょう。