不動産取引にマイナンバーが必要な理由6つ|提出する注意点2つ
2020 10.21この記事はPRを含みます
不動産取引にマイナンバーは必要
マイナンバーは、同一の取引先から不動産で年間一定金額以上受け取った場合に必要です。
不動産の売主・貸主は、取引先である法人(不動産会社)や不動産業者個人からマイナンバーの提供を求められる場合があります。これは同一の取引先からの売買や家賃・地代の受取金額を、年間ある金額を超えた場合です。
なお、個人の不動産業者でも、建物の賃貸借の代理や仲介目的の事業を行っている個人はマイナンバーの提供は不要です。
マイナンバー制度とは
マイナンバーは、社会保障・税・災害対策の分野において複数の機関にある個人情報が同一かを確認するための制度です。
従来、福祉サービスや社会保険料の減免対象を調査する場合、国と地方自治体の間で情報のやり取りを行っていましたが、管理番号がバラバラなので、時間と労力を要していました。
マイナンバー制度は、社会保障・税・災害対策において個人の特定を迅速にして、行政手続きの事務処理を改善します。
マイナンバーが必要な不動産取引3つ
個人が不動産売却と賃貸で特定の条件を満たす場合、取引先にマイナンバーを提供します。
不動産取引でマイナンバーの提示が必要なのは、不動産を売却した時もしくは賃貸を行った取引先・年間の取引金額の合計において、法令で定めた特定の条件を満たした場合です。
不動産取引の条件を説明しますが、実際の取引・賃貸においては3つの条件を満たしていることが殆どです。
不動産取引1:売却時
取引先が法人または不動産業者である個人の場合です。
個人が不動産を取引先に売却した場合、取引先が「法人または不動産業者である個人」であれば、取引先にマイナンバーを提示する必要があります。「法人」は不動産会社、「不動産業者である個人」は個人事業主の不動産業者です。
実際には不動産会社が不動産を買い取るので、必然的に個人はマイナンバーを提出する事になります。
不動産取引2:受取金額の合計が年間100万円より多い場合
不動産売買で同じ売主への支払合計が年間100万円を超す場合に必要です。
個人が取引先に不動産を売却した金額が100万円を超えたら、個人は取引先である不動産会社や個人事業主の不動産業者にマイナンバーを提出します。
実際、古いマンションの売却でも100万円を超えるので、殆どの取引において、マイナンバーの提出が必要です。
不動産取引3:不動産を貸すとき
不動産賃貸で同一の賃主への支払合計が年間15万円以上の場合に必要です。
不動産賃貸でも、家賃・地代・権利金・更新料・礼金・承諾料・名義書換料・仲介手数料を同じ貸主に年間15万円以上の場合、貸主は借主である法人や個人事業主の不動産業者にマイナンバーを提出する必要があります。
単純計算で家賃が月額12,500円以上だと、貸主は不動産会社にマイナンバーの提出が必要です。
不動産取引にマイナンバーが必要な理由6つ
不動産取引でマイナンバーが必要なのは、得たお金を税務署へ申告するためです。
売主・貸主が不動産売買や賃貸で取引が発生すると、取引先は支払調書、売主・貸主は確定申告の書類を税務署に提出します。支払調書・確定申告どちらも売主・貸主のマイナンバーが必要です。
特に取引先である不動産会社・業者は支払調書の提出が義務付けられているので、売主・貸主のマイナンバーを取引先に提示する必要があります。
必要な理由1:税務署への支払調書の提出
不動産会社や業者は、所得税法に基づいて支払調書を税務署に必ず提出します。
所得税法第225条に基づき、売主と買主または借主である不動産会社や業者との間で不動産売買や賃貸が発生すると、不動産会社や業者は売買の場合「不動産等の譲受けの対価の支払調書」、賃貸の場合「不動産の使用料等の支払調書」を作成します。
これらの法定調書の中に、不動産会社や業者は売主・貸主のマイナンバーを記載しての提出が義務付けられています。
必要な理由2:拒否された場合の手間が増える
不動産会社は税務署へ、売主がマイナンバー提示を拒否した理由を説明する必要があります。
不動産取引が発生した際、不動産会社や業者は売主・貸主にマイナンバーの提示を求めます。
しかし、マイナンバーの提示は義務ではなく任意なので、売主・貸主は拒否出来ます。
マイナンバーの提示を断られた場合、不動産会社・業者は税務署に経緯を説明する必要が生じ、手間が増えます。売主・貸主はマイナンバーを提示したほうがよいです。
必要な理由3:売主の個人番号を記入するため
税務署に提出する支払調書には、売主のマイナンバーを記載する必要があります。
不動産会社・業者は売主・貸主が提示したマイナンバーを支払調書(売買の場合は「不動産等の譲受けの対価の支払調書」、賃貸の場合は「不動産の使用料等の支払い調書」)に記載します。そして、マイナンバーを記載した支払調書を税務署に提出します。
必要な理由4:売却益や賃貸収入を確定申告で申告する
不動産で得た収入を確定申告する際にマイナンバーが必要です。
不動産を売った人は譲渡所得、賃貸収入がある人には不動産所得が発生するので、税務署に確定申告が必要となります。確定申告を行う時、提出する書類にマイナンバーの記入・写しが必要です。
譲渡所得や不動産所得は不動産の総収入金額から必要経費を引いた分を計上し、所得税を納めます。なお、譲渡所得の場合は住民税も発生します。
必要な理由5:所得に対する特別控除がある
売主・貸主は国税庁に不動産取引で得た譲渡所得・不動産所得を確定申告で申告しますが、特例で特別控除を受けられる場合があります。特別控除によって、売主・貸主は所得税額を低減可能です。
譲渡所得は、居住用財産であるマイホームを売った場合や公共事業で土地を売った場合に特別控除の特例があります。
また、不動産所得は青色申告を行うと青色申告特別控除を受ける事が可能です。
必要な理由6:正しい所得に基づいた申告を行う
マイナンバーを活用した確定申告によって、スマートに正しい所得による税額での申告ができます。
売主・貸主が確定申告を行う際、税務署は不動産業者が提出した支払調書の添付を望んでいますが、義務ではありません。
その為、取引先が支払調書を発行しない場合もあるので、売主・貸主は日々の取引内容を帳簿に記録する必要があります。
支払調書がなくても、帳簿から不動産取引分の確定申告は可能です。確定申告で、売主・貸主は正しい所得による税額での申告となります。
不動産取引でマイナンバーを提出する際の注意点
取引先はマイナンバー制度における安全管理措置が義務付けられています。
マイナンバー法により、取引先である不動産会社・業者は収集した売主・貸主のマイナンバーの安全管理措置が義務付けられています。
その為、法令で定められた目的以外での使用や他人への情報提供は禁じられ、違反した場合は厳しい罰則が設けられています。
また、取引先が収集したマイナンバーを利用して行政機関から個人情報の取得は不可能です。
不動産業を行っていない個人は提出要求できない
法律で定められているので、不動産業を行っていない個人は提出要求ができません。
買主・借主が売主・貸主のマイナンバーを提出要求するには条件があります。買主・借主が不動産業を営む法人・個人に限定されます。
その為、買主・借主が「不動産業者でない個人」の場合は売主のマイナンバーを税務署への届け出は不要です。
「不動産業を行っていない個人」とは、建物の賃貸借の代理や仲介目的の事業を行っている個人を指します。
マイナンバー収集委託の業者か確認する
業者が目的外でマイナンバーの取得や利用する恐れがあります。
不動産会社でもマイナンバーの取り扱いが多いと、マイナンバー収集を行う専門業者に委託する場合があります。その為、売主・貸主は取引先の不動産会社でない所からマイナンバーの提示を求められる事があります。
売主・貸主は不動産会社から本当に委託されている業者かの確認が必要です。両社の関連性がない場合、マイナンバーを不正利用される恐れがあります。
不動産取引時のマイナンバーについて知ろう
マイナンバーの使われ方を知る事で正しい納税意識が得られます。
不動産取引におけるマイナンバーの使われ方を紹介しましたが、税務署は売主・貸主と取引先である不動産会社・業者との間で正しい売買や賃貸が行われているかを、マイナンバーによって確実にチェックする事ができます。
これによって、所得税をはじめとする各種税金を正しく算出可能となります。マイナンバーは税の不正がない公平・公正な社会を実現していきます。