不動産投資における賃貸物件のクーリングオフ適用条件7つを解説
2020 06.29この記事はPRを含みます
クーリングオフとは
私達は日常生活の中でさまざまな買い物をしますが、これらは自分と販売者の間で売買契約を結んだことになります。
訪問販売や電話での勧誘で相手の勢いに押されてしまい、気がついたら必要ない物の売買契約を結んでいたという話を聞いたことがあると思いますが、そのままでは、売り主だけが得をして購入者は不必要なものを買わされ損をしたということになってしまいます。
そうした購入者が定められた要件のもとで、売買契約を解除することができるという制度がクーリングオフです。英語でクーリングオフとは「cooling off」と表記し「頭を冷やす」という意味です。
投資用の賃貸物件はクーリングオフできるのか
不動産投資用の賃貸物件の契約をクーリングオフすることはできます。
賃貸物件の建築など不動産投資は土地や建物の売買から始めることが多いですが、相手の勢いに押されて土地や賃貸物件の契約をしてしまった場合、購入者の金額は大きく、不利益になります。
そのためクーリングオフは宅建業法第37条の2第1項において法律的に認められている制度です。
第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
賃貸物件のクーリングオフ適用条件7つ
賃貸物件の売買などにもクーリングオフは認められていますが、無条件に契約解除できるようでは売り主に対して不公平さが生まれてしまいます。
そのような事態を避けるために、クーリングオフとしての契約解除の履行には適用条件が定められています。
クーリングオフ適用条件1:宅建業者が売主である
不動産業と宅建業は同じではありません。不動産業には売買や仲介、賃貸や管理などが含まれますが、宅建業はそのうちの売買や仲介といった取引を取り扱う業種のみが含まれます。
不動産の売買においては宅地建物取引士という資格を持った人しか、契約内容などの説明と契約内容を記載した書面への記名押印はしてはいけないと、宅地建物取引業法で定められています。
部屋を賃貸する時、不動産屋で契約前に書類などの説明をする人が宅地建物取引士です。この宅地建物取引士の資格を持っている人が売り主の場合は、宅地建物取引業法にのっとってクーリングオフができます。
第三十七条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。一 当事者の氏名(法人にあつては、その名称)及び住所二 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示二の二 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項三 代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法四 宅地又は建物の引渡しの時期五 移転登記の申請の時期六 代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容八 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容九 代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置十 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容十一 当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容十二 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の貸借に関し、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。一 前項第一号、第二号、第四号、第七号、第八号及び第十号に掲げる事項二 借賃の額並びにその支払の時期及び方法三 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的3 宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
クーリングオフ適用条件2:不動産の売買契約である
クーリングオフの適用対象となるのは土地や建物など、不動産の売買契約のみです。マンションなどの部屋を借りる賃貸契約には適用されません。
不動産投資における賃貸物件の購入の場合は、「物件の購入後」に賃貸として部屋を貸し出すので、建物の購入時点ではクーリングオフが適用されます。
クーリングオフ適用条件3:物件の引渡しをしていない
土地の売買であれば、よほどのことがない限り引き渡しはスムーズに進みますが、引渡しが行われない場合はクーリングオフの適用対象となります。
建物の場合は必ずしも引渡しがスムーズに進むとはいえない場合があります。すでに賃貸物件として稼働している建物の場合などは、売買契約が締結していても住居者のこともあり、引渡しが難しい場合もあります。
また、売主側に問題がなくてもクーリングオフができる場合もあります。
クーリングオフ適用条件4:物件の手付金だけを支払っている
土地や建物などの不動産の売買は高額の取引になることがほとんどですが、代金のうち手付金を先に支払うという購入者の方も多いでしょう。手付金を支払った後に、契約を解除したくなった場合もクーリングオフができる可能性があります。
書面にて契約を交わし、手付金を支払っている場合には8日間のクーリングオフの行使期間内に手続きを行いましょう。
クーリングオフ適用条件5:説明を受けてから8日以内
不動産の売買契約のクーリングオフができる期間は「申し込みの撤回ができる旨及びその方法を“書面”で告知、説明をされた日から起算して8日以内」です。
「契約の申込日や契約締結日から」と勘違いしやすいので注意しましょう。売り主が書面で告知をしない場合は、8日以内の制限は適用されませんし、口頭で説明をされたとしても書面が無ければクーリングオフが適用されます。
クーリングオフ適用条件7:宅建業者の特定場所以外での契約
不動産売買の場合、「どこで契約をしたか」ということが重要になってきます。宅建業者が常駐している場所で契約を締結することは購入の意思があったものとみなされます。
ファミレスや喫茶店、自宅や勤務先で契約をした場合はクーリングオフの適用条件に当てはまりますが、購入者側から「○○に来てください」と申し出た場合は、購入の意思があったものとみなされクーリングオフは適用されません。
宅建業者の特定場所:宅建業者の事務所
宅地建物取引業法第37条の2では、宅建業者の事務所やその他国土交通省令、内閣府令で定められた場所以外での売買契約締結について、クーリングオフを認めています。
宅建業者の事務所には、宅建業者が常駐しているという前提があります。その事務所に来て売買契約を行うことは「購入をする意思がある」とみなされますのでクーリングオフは適用されません。
宅建業者の特定場所:宅建業者の店舗
大手不動産会社の支店を目にすることもあると思いまが、このような支店は賃貸業を主にしている場合が多く、必ず宅建取引士が常駐しています。
そういった店舗に入店して売買や賃貸の契約を締結すると、やはり購入や賃貸をする意思があったとみなされますので、クーリングオフは適用されません。
宅建業者の特定場所:宅建業者のモデルルーム
マンションや戸建て住宅などのモデルルームに足を運び、売買契約を締結してもクーリングオフは適用されません。やはり購入する意思があるとみなされてしまうからです。ですが中には、将来の参考にしたいなどの理由からモデルルームに足を運ぶ人もいます。
そのような人が販売員に押されて契約をしてしまうということも考えられるため、そのような場所にも専任の宅建取引士を常駐しておくことが、宅地建物取引業法施行規則第15条で定められています。
モデルルームで契約を求められたら、その人が宅建取引士なのかを確認しましょう。
第十五条 宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。
賃貸物件経営者がクーリングオフできる条件2つ
不動産投資における賃貸物件の経営という点に着目をして考えると、クーリングオフはしづらいと言えるでしょう。元から建っている物件を賃貸用として購入するのか、自分が所有する土地に賃貸物件を建設するのかなど契約の内容によって適用される法律が違ってくるからです。
クーリングオフできる条件1:賃貸アパートの場合
アパートなど賃貸物件を経営するには、まず建物を準備しなくてはいけません。
自分が所有する土地に建物を建てるのであれば建設会社と建築の契約を交わさなければいけませんが、土地を購入して建物を建てる場合は、その契約が「土地の売買契約」なのか「建物の建築請負契約」なのかを確認しましょう。
既存の建物を購入する場合は、前述した適用条件に当てはまるのかを確認しましょう。
クーリングオフできる条件2:賃貸マンションの場合
賃貸マンションの場合もアパートの場合と変わりません。
不動産会社との建物の売買契約の段階で、条件を満たしていれば、クーリングオフすることができます。
入居希望者によるクーリングオフは適用対象外となります。あくまでも賃貸マンション購入時に必要な条件をクリアしているのであれば、買主によるクーリングオフが可能ということです。
賃貸物件のクーリングオフ適用条件を確認しよう
クーリングオフは、申込者等が売買契約前項前段の書面を発送した時に、その効力が発生します。
クーリングオフには一定の条件があることを事前に確認し、契約の際には信頼できる不動産会社を選んで、よく考えて書面にサインすることが大切です。
今後、不動産の売買契約をする予定のある人は、不利益な契約をしないで済むようにクーリングオフに関する条件を確認しておき、内容証明で送る等、発送したことを証する努力が必要ではないでしょうか。