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不動産の売買契約が解除できる条件6つ|不動産売買契約の解除ルールを解説

2020 06.29この記事はPRを含みます

目次

不動産の売買契約を解除するには

不動産の売買契約の手続きが完了した後、何らかの事由によって売主または買主が売買契約を解除する場合は、売買契約書に基づいて違約金などのペナルティーが課されることがあります。

不動産売買契約の解除は売買契約書の違約条項に基づいて行なわれますが、違約条項の解除理由には「本契約に係る債務の履行を怠ったとき」と定められているため、基本的に売主と買主の双方に解除を催告する権利が認められています。

物件の売買契約についての基礎知識 | 公益社団法人 全日本不動産協会

不動産の売買契約が解除できる条件6つ

不動産の売買契約を解除するためには、買主または売主が債務の履行を怠った事実を文書によって相手に催告し、双方の合意に基づいて解除手続きを行なう必要があります。

不動産の売買契約の解除は、債務不履行による損害程度や違法性の軽重によって、必ずしも一律に解除理由に該当しないことを知っておく必要があります。ここでは、不動産の売買契約が解除できる代表的な条件6つについて紹介いたします。

不動産の売買契約が解除できる条件1:手付放棄による解除

不動産の売買契約が解除できる条件の1つ目は、買主からの「手付放棄」と売主の「手付倍返し」による解除の条項です。

手付放棄とは、買主が支払済みの手付金を放棄することで売買契約を解除することをいい、倍返しとは、売主が手付金の2倍額を買主に返金することで売買契約を解除することをいいます。

いずれも相手が契約を着手する前であることが条件であり、その間であれば解除の理由は一切問われることがありません。

不動産の売買契約が解除できる条件2:引渡し完了前の滅失・毀損による解除

不動産の売買契約が解除できる条件の2つ目は、建物の構造上の毀損や欠陥や家が建てられないような宅地の瑕疵がある場合に適用される解除の条項です。

家や土地に関する滅失や毀損などの瑕疵を契約不適合責任(瑕疵担保責任)といい、物件の引き渡し前に不動産物件の目的が達成できない事情が明確になった場合は、買主は売買契約を解除することが可能となります。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ | 一般財団法人 住宅金融普及協会

不動産の売買契約が解除できる条件3:ローン利用特約の条件に基づく解除

不動産の売買契約が解除できる条件の3つ目は、住宅ローンの契約が適用されなかった場合に適用される解除の条項です。

不動産の売買契約に適用されるローン条項には、大きく「解除条件型」と「解除権保留型」の2種類があり、前者の解除条件型のローン契約による不動産の売買契約においては、ローンの契約が成立しなければ買主の意思とは拘わらず売買契約が解除になります。

ワンストップ不動産ソリューション 株式会社オフィスSANO

不動産の売買契約が解除できる条件4:契約違反による解除

不動産の売買契約が解除できる条件の4つ目は、買主または売主が履行義務を果たしているにも拘わらず、相手が基本的な義務を果たしていないなどの契約違反に適用される解除の条項です。

契約違反による解除は、買主の代金の支払、または売主の物件の引き渡し・抵当権の抹消・所有権移転登記の協力などの基本的な義務違反があった場合に適用されますが、一定程度の期間を決めて文書を以て相手に催告する必要があります。

不動産の売買契約が解除できる条件5:譲渡承諾の特約による解除(土地は除く)

不動産の売買契約が解除できる条件の5つ目は、建物所有者の賃借権を買主に譲渡することの承諾が得られなかった場合の解除に関する条項です。

売買契約において、建物所有者から譲渡承諾を前提とした特約条項を設けていても、一定期間までに所有者から譲渡承諾が得られなかった場合に解除が可能となり、当然受領済みの手付金を返還することになります。

不動産の売買契約が解除できる条件6:契約不適合責任による解除(マンションは除く)

不動産の売買契約が解除できる条件の6つ目は、買主がお引き渡しを受けた後に発見された売主も知らなかった契約内容に適合しないものがある場合に解除できる条項です。

過去の判例においては、土壌汚染・軟弱地盤・自死や凶悪犯罪などの事例があります。ただし、実態的には必ずしも契約解除に至るケースは多くなく、売買代金に対する一定割合の賠償支払で決着するケースが多いのが実情です。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ | 一般財団法人 住宅金融普及協会

不動産の売買契約が解除できるその他の条件5つ

不動産の売買契約を結ぶ際、買主に不利益が生じないことを目的として売買契約書の作成が義務づけられていますが、売買契約書には契約解除に関する条項が設けられています。

売買契約が解除できる条件はさまざまありますが、基本的には法律に則っていることが原則となります。

解除できるその他の条件1:売買契約で定めた特約による解除

売買契約が解除できるその他の条件の1つ目は、売買契約書に定める特約条項に違反した場合に可能となる解除です。

売買契約書に定める特約は、当該の売買契約のみに有効な事項を定めるものであるため、一般条項で定めた事項より効力が優先されます。

ちなみに、建物に関すること以外に敷地・隣接地・周辺環境などに関する事項が含まれていますが、売主と買主の双方が履行義務を怠ると契約解除の対象になります。

解除できるその他の条件2:両者の話し合いによる合意解除

不動産の売買契約が解除できるその他の条件の2つ目は、売主と買主の双方の話し合い(合意)によって解除できる条項であり、「私的自治の原則」という法律によって保証されている行為です。

売主と買主の双方の合意の下に成立した売買契約は、基本的に契約条項に拘束されるのは当然のことですが、どちらか一方から解除の申し出があった場合でも双方が合意すると解除できるのも当然のことといえます。

私的自治の原則 | 中小企業法務|弁護士西川将史のサイト

解除できるその他の条件3:クーリング・オフ

不動産契約を解除できるその他の条件の3つ目は、不動産の売主が「宅建業者」である場合に適用されるクーリング・オフによる契約解除の条項です。

不動産物件の売買契約においては、適用が不動産会社(宅建業者)以外には適用されないので注意が必要です。宅建業者などの仲介業者を介すことなく、個人から戸建住宅や分譲マンションを直接譲渡してもらった場合は、クーリング・オフが適用されません。

クーリング・オフ(テーマ別特集)_国民生活センター

解除できるその他の条件4:制限行為能力者による無効・取消し

売買契約を解除できるその他の条件の4つ目は、未成年者や成年被後見人などの制限行為能力が取り消しになった場合の契約解除の条項です。

制限行為能力者とは、未成年者や成年被後見人などの民法上で完全な法律行為を単独で行うことができない人のことをいい、制限行為能力者が結んだ契約は、後に無効になることや取り消しになることがあります。

民法の基本

解除できるその他の条件5:消費者契約法による契約の取り消し

不動産の売買契約が解除できるその他の条件の5つ目は、消費者契約法による契約取り消しが認められた場合の売買契約の解除の条項です。

消費者契約法による消費者保護の効果として、消費者が事業者と契約をする場合に、情報の量や質、内容が異なるため、交渉力に格差が生じます。消費者の利益を尊厳するために、消費者契約法が施行されています。

消費者庁

不動産売買契約の解除違約金のルール3つ

不動産の売買契約において、売主と買主のどちらかが「履行すべき債務を怠る」契約違反によって契約解除に至った場合は、相手に対して解除違約金を支払わなければなりません。

ちなみに、売買契約において契約解除を行なう場合は、契約違反の事実を明確にすること、契約違反の事実が違法であること、一定程度の期間を定めて文書で催告すること、の3つの要件が必要です。

不動産売買契約の解除違約金のルール1:違約金とは

不動産売買契約における違約金とは、売買契約の成立後に債務不履行による契約違反の際に相手に支払う金銭のことをいいます。

違約金と損害賠償金は実質的には相違ありませんが、法的な見地から違約金は「没収される金銭」と位置付けされています。

不動産売買契約の解除違約金のルール2:損害賠償額の相場

不動産売買における損害賠償額の相場は、売買契約額によって異なるため一概にいえませんが、宅建業者が扱う売買契約では違約金と損害賠償金の合計が売買金額の20%を越えない範囲とされています。

不動産売買契約においては、「損害賠償額の予定」か「違約金額の明示」が一般的です。損害賠償額の予定がない場合は相手の損害額を被害者が立証責任を負うため、時間がかかるなど被害の拡大が懸念されます。

不動産売買契約の解除違約金のルール3:手付解除期日

不動産売買契約における手付解除期日とは、理由を問わず契約解除(手付放棄・手付倍返し)ができる期間として「債務履行に着手するまで」と定めています。

売買契約の手付解除期間は、手付解除が理由を問われることなく契約解除が可能であることから、法的に不安定な立場を保護するために期日が定められています。

マンションの不動産売買契約の解除事例3つ

マンションなど不動産の売買契約を締結する際は、まずは売買契約の内容をしっかり確認することと併せ、わからないことの説明を受け理解を深めることが何より重要です。

もし、重要事項の説明を受け売買契約の締結を済ませている場合は、売買契約書の内容を精査した上で冷静に話し合うことが重要ですが、後になって齟齬が生じないように話し合いの内容を書面で残すことが肝心です。

マンションの不動産売買契約の解除事例1:マンション購入申込直後のキャンセル

マンションの購入申し込みを行なった直後にキャンセルした場合は、購入手続きの開始前であれば違約金なしでキャンセルを受け付けてもらえます。

なお、購入手続きを開始して以降のキャンセルにおいては、事前審査の段階であれば違約金なしのキャンセル扱いになります。また、事前審査を通過した後のキャンセルであっても本審査に入る前であれば、違約金なしのキャンセル扱いで済むと考えて差し支えありません。

マンションの不動産売買契約の解除事例2:マンション契約後キャンセル

マンションの売買契約が成約した後にキャンセルした場合は、仮に本審査が通過した段階まで手続きが進んでいれば、売買契約書に基づいて違約金が発生することになります。

なお、本審査通過後の契約解除は「手付解除」に該当するため、成約時に支払った手付金が返還されることがありません。

マンションの不動産売買契約の解除事例3:ローンが通らなかった場合のキャンセル

マンションの売買契約が成約後に住宅ローンが通らなかった場合は、「住宅ローン特約」よって契約解除となるため違約金の支払義務はありません。

マンションの売買契約においては、「住宅ローン特約」の条項が盛り込まれているのが一般的です。住宅ローンが通らなかった場合は、売買契約が白紙撤回されるだけでなく手付金も全額返還となります。

不動産売買契約の解除はトラブルに発展する可能性がある

不動産売買契約において契約解除の事態に至ってしまうと、トラブルに発展する可能性が避けられません。

契約解除などによるトラブルを防ぐためにも、売買契約書や重要事項説明の内容をよく理解しておくことが重要です。なかでも契約書に盛り込まれている特約条項や違約条項について、正しく理解しておくことが何より肝心です。

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