修繕積立金は経費になりうる?経費として計上したときのメリット4つを紹介
2020 10.21この記事はPRを含みます
修繕積立金とは?
分譲マンションでは、10~15年に一度程度の頻度で建物の共有部分を修繕することが多いです。これが「大規模修繕」と呼ばれるものですが、建物全体の修復なので多額の資金がかかります。
そこで管理組合を通じて毎月お金を徴収して「大規模修繕」のために資金を積み立てますが、これを「修繕積立金」と呼びます。
この記事では「修繕積立金」をマンション投資の「経費」にすることについてのメリットやデメリットについて解説していきます。
修繕積立金の目的
分譲マンションには共用部分の「大規模修繕工事」が必ずあります。
・第1回大規模修繕工事(11~15年目)外壁・屋上の防水・電気設備など
・第2回大規模修繕工事(21~25年目)外壁・屋上の防水・電気設備・玄関ドア・サッシ・手摺交換・排水管更新など
・第3回大規模修繕工事(31~40年目)ほぼ建物全体
「大規模修繕」に備えて月々積み立てるのが「修繕積立金」です。
修繕積立金を経費計上できる要件
国税庁はマンション投資の「修繕積立金」を必要経費にできる要件を4つ挙げています。
1.区分所有者は管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負っている
2.管理組合は修繕積立金を区分所有者に返還しない
3.将来の修繕等のためにのみ使用され、ほかに流用しない
4.長期修繕計画に基づいて合理的な方法で金額が算出されていること
管理規約に従って適正な金額の「修繕積立金」が毎月きちんと支払われている証拠が必要です。
修繕積立金の相場
実際に修繕する時になって修繕資金不足になるトラブルを防ぐために、国土交通省は「修繕積立金の相場の目安」を定めました。
目安は15階未満、5,000㎡未満の条件で、専有面積1㎡あたり218円(平均値)です。
修繕積立金の金額は次のような計算式で求められます。
「専有床面積あたりの修繕積立金額×購入したいマンションの専有床面積(㎡)+機械式駐車場の加算額」となります。
修繕積立金を経費化するメリット4つ
マンションの一室を事務所や店舗として事業用に使ったり、賃貸物件として貸し出して家賃収入を得たりする場合、管理組合に支払う修繕積立金は、「修繕積立金を預けている」状態なので、経費にすることができます。さらに消費税については不課税となります。
ここでは修繕積立金を経費にするメリットを4つあげてみましょう。
メリット1:業績の予測がしやすくなる
マンションの経年劣化による資産価値の下落は避けられません。古い建物は家賃を下げなければ空き室が増え、資産価値が下がります。それを避けるためには建築後10~15年に一度の大規模修繕が必要ですが、その時には膨大な資金がかかります。
管理組合や管理会社から大規模修繕についての情報を得て、あらかじめ修繕費を積み立てて準備することで、安定した不動産経営を行っていくことができるでしょう。
メリット2:業績の計画が立てやすくなる
大規模修繕に備えるための資金を調達することは、建物の資産価値を落とさないためにも重要ですが、銀行からの借り入れで調達することはおすすめできません。そこで、月々の徴収する家賃や賃料に修繕費を上乗せし、少しずつ積み立てていくことをおすすめします。
分譲マンションは賃料の約5~6%、賃貸アパートは賃料の約4~5%を目安にして、家賃に上乗せした分の金額を修繕積立金専用口座を作って準備するとよいでしょう。
メリット3:先を見据えた修繕費用のやりくりできる
マンション投資をする時、銀行からの借り入れで資金調達することが多いのが実情です。借入金を返していくのと同時に建物も老朽化して、大規模修繕費の捻出に悩むこともあるでしょう。
家賃に上乗せした修繕積立金を、そのまま家賃収入の口座に入れておくのではなく、修繕積立金専用の口座を作って積み立てると、固定資産税や管理会社への支払い、共用部分の光熱費などによる取り崩しの心配がなくなります。
メリット4:生命保険料として積み立てられる
法人名義で生命保険に加入し、毎月生命保険料を積み立て、その解約金を修繕費に回すことで、納める税金を安くする方法も検討してみるべきでしょう。保険の選び方のポイントは2つあります。
1.生命保険料が全額必要経費として認められる、法人名義のアパートやマンションであること
2.解約戻し金が多い保険であること
アパート経営をしている個人事業主の方には、会社を設立し、アパートを法人名義にすることをおすすめします。
修繕積立金を経費化するデメリット2つ
マンションやアパートなどの不動産投資で修繕積立金を経費で計上する際には以下のようなデメリットが発生する可能性があります。
1.余剰な保険になる可能性
2.修繕計画が予定と違う形になった時の対処
詳しく見てみましょう。
修繕積立金を経費化するデメリット:余剰な保険になる可能性
法人名義で保険に加入した場合には、修繕積立金を経費として計上できますが、すでに加入している人にとっては、余剰な保険になる可能性があります。
さらに、保険に加入し支払ってきた金額よりも解約返戻金のほうが少なくなることが多いうえ、解約による返戻金は利益として取り扱われるため、その年に修繕を行うなどして返戻金と同額の支出を行わないと税金を支払う必要があります。計画を明確にしてから加入しましょう。
修繕積立金を経費化するデメリット:計画通りの修繕が必要になる
大規模修繕の流れは次のようなものです。
・建物調査
・報告書・見積書の提出
・工事計画の立案
・工事のご契約
・工事説明会
・大規模修繕工事(リニューアル)の実施
・竣工・引渡し
・アフターメンテナンス
工期がずれた時には、さらに資金が必要になることがあります。修繕積立金を経費化した時は、計画通りのタイミングで大規模修繕が行われるか、管理組合などを通して情報を収集しましょう。
修繕積立金の仕訳方2つ
修繕積立金を経費として計上する仕分け方を2つご紹介します。
マンションを賃貸物件として貸し出している場合には、条件を満たしていれば修繕工事が行われた時点で経費として計上することが可能といわれています。
ここでは仕訳処理の具体例をご紹介します。
仕訳方:実際の修繕工事を経費として処理
修繕積立金を支払った時点で「積立金」として処理し、修繕工事が完了したときに「修繕積立金」から経費である「修繕費」に振り替えることができます。
賃貸物件としてマンションの1室を貸している場合には修繕工事を行った年に必要経費として計上するため、修繕工事を行うよりも前から「修繕費」として処理することができません。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
修繕費 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 修繕積立金 |
仕訳方:修繕積立金を修繕費として計上
修繕積立金を支払った時に「修繕積立金」で処理し、修繕工事が終わったら「修繕積立金」から「修繕費」に振り替える方法があります。
ここでは普通預金口座から100,000円を「修繕積立金」として積み立てる仕訳と、修繕工事後に積み立てていた1,000,000円の「修繕積立金経費」を「修繕費」として支払った仕訳の例を見てみましょう。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
修繕積立金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 修繕積立金 |
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
修繕費 | 1,000,000円 | 修繕積立金 | 1,000,000円 | 修繕工事 |
アパート経営でも修繕積立金は必要?
賃貸アパートを経営する方も、修繕積立金を経費にするとよいでしょう。
銀行からの借入金で資金調達することが多い賃貸アパートの場合は、大規模修繕を行う時、かかった費用をオーナーが全額負担しなければいけません。そのときになって慌てないように計画的に積立金を準備する必要があります。
物件の修繕計画は資産価値にも大きく影響してくる
10~15年に一度、必ず必要になる大規模修繕は、投資している物件の資産価値に影響する大切な問題です。
「生命保険をうまく利用して積み立てる」「家賃に修繕積立金を上乗せして徴収する」など、さまざまな方法で対応することができますが、一度に多額の資金が必要な工事なので、大規模修繕直前になって資金不足にならないよう、綿密な資金計画を立てて備えましょう。