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鉄骨造の耐用年数と減価償却費の考え方|計上のポイントと注意点5つ

2020 10.21この記事はPRを含みます

鉄骨造の耐用年数とは?

建物の構造には、木を建材としている木造(W造)やアルミニウムを構造材としているアルミ造(AL造)などがありますが、その中のひとつに鉄骨造があります。鉄骨のSteelを略してS造と表記されます。

鉄骨を使用しているので耐用年数は長く感じますが、実際の耐用年数はどれくらいなのでしょうか。

鉄骨造の構造別の法定耐用年数3つ

鉄骨造といっても実は、骨格材として使用されている鉄骨の厚さによって軽量鉄骨造、重量鉄骨造と分かれています。

鉄骨の厚さが違えばそれぞれの耐用年数は違ってきますが、その耐用年数は法律で定められています。

耐用年数は、法定耐用年数、物理的耐用年数、経済的耐用年数と3種類あります。法定耐用年数とは、不動産がもつ評価額に対して公平に算出ができるようにするために、一定の基準を国が定めた建物の種類別の耐用年数のことです。物理的耐用年数、経済的耐用年数については、後述します。

ではどの厚さの鉄骨造がどれくらいの法定耐用年数があるのでしょうか。

鉄骨造の構造別の法定耐用年数1:鉄骨造(S造)骨格材の厚さが3㎜以下

鉄骨造の骨格材である鉄骨は、厚さによって耐用年数が決められています。3mm以下の鋼材の耐用年数は19年と定められています。

厚さが4mm未満の鉄骨は軽量鉄骨と呼ばれますが、その鉄骨を使用した建築構造を軽量鉄骨造といいます。

軽量鉄骨造は、鉄筋コンクリート造(RC造)などと比べてもコストが低く抑えることができます。

鉄骨造の構造別の法定耐用年数2:鉄骨造(S造)骨格材の厚さが3mm超4mm以下

軽量鉄骨のなかで鉄骨の厚さが3mm超4mm以下の場合、耐用年数は27年となります。厚さとしては1mmしか変わりませんが、耐用年数は8年も長くなります。

軽量鉄骨造はあらかじめ工場で部材を制作や加工をしておき建設現場に搬入した後、その場で部材を組み立てる「プレハブ工法」を用いることが多く、工事も効率的に進むので工期が短くなり人件費も安くなるなどコストが抑えられます。

鉄骨造の構造別の法定耐用年数3:鉄骨造(S造)骨格材の厚さが4㎜超

鉄骨造の骨格材の厚さが4mmを超えると、耐用年数が34年とさらに長くなります。

鉄骨の厚さが6mm以上のものは重量鉄骨と呼ばれ、この鉄骨を使用した建物構造を重量鉄骨造といいます。

重量鉄骨は形がH型をしているので、かなりしっかりとした構造にも使用されることが多く、ビルやマンションなどの建物建築にも用いられます。

鉄骨造の法定耐用年数と用途4つ

鉄骨は厚さによって法定耐用年数は決められていますが、建物は「構造=何の材料を使用して建てられているか」と「用途=どのような目的でその建物を使用するのか」ということにより法定耐用年数が決められています。

鉄骨造の法定耐用年数と用途1:住宅用の鉄骨造

住宅として使用するという用途をもって建てられた鉄骨造の場合、法定耐用年数は骨格材の厚さによって以下のように定められています。

・厚さ3mm以下の場合は19年
・厚さ3mm超4mm以下の場合は27年
・厚さ4mm超の場合は34年

3mm以下の場合は主に一戸建てや低層マンションやアパート、3mm超え4mm以下の場合は中層マンションやアパート、4mm超の場合は中層以上のマンションに用いられることが多いです。

鉄骨造の法定耐用年数と用途2:店舗用の鉄骨造

店舗を開く用途で建てられた鉄骨造の法定耐用年数は以下のとおりです。

・厚さ3mm以下の場合は19年
・厚さ3mm超4mm以下の場合は27年
・厚さ4mm超の場合は34年

店舗用の鉄骨造の場合、住宅用途目的の鉄骨造と法定耐用年数は変わりません。

鉄骨造の法定耐用年数と用途3:事務所用の鉄骨造

事務所として使用する用途で建てられた鉄骨造の場合の法定耐用年数は、以下のように定められています。

・厚さ3mm以下の場合は22年
・厚さ3mm超4mm以下の場合は30年
・厚さ4mm超の場合は38年

住宅用途や店舗用途の鉄骨造よりも法定耐用年数が長いのは、基本的に使用時間が就業中の時間に限られる、法で定められたメンテナンスなどを行わなければならない、などの理由が挙げられます。

鉄骨造の法定耐用年数と用途4:飲食用の鉄骨造

飲食店として使用する用途で建てられた鉄骨造の場合の法定耐用年数は以下のように定められています。

・厚さ3mm以下の場合は19年
・厚さ3mm超4mm以下の場合は25年
・厚さ4mm超の場合は31年

店舗用途や事務所として建てられる鉄骨造と比べると、どの厚さも法定耐用年数が短くなっています。

建物のメンテナンス等は事務所などと同じように法で定められていますが、他の用途の建物に比べると集客も多く、稼働時間も長くなりがちです。なので安全面などの点から法定耐用年数が短くなっています。

鉄骨造のと法定耐用年数と減価償却のポイント5つ

減価償却とは、不動産などの資産を購入した場合の代金を法定耐用年数に基づいて、毎期の必要経費として計上するために用いられる計算方法です。

減価償却は土地や建物だけではなく、付属されている設備であったり、工場などでは機械や業務用自動車、事務所の応接セットであったり、業務上で使用しある程度の資産価値があるものを計上することができます。

ポイント1:毎年計上することができる

例えば、資産として200万円の建物を購入して法定耐用年数が5年の場合、5年間にわたって毎年40万円ずつ減価償却費用として計上できます。

これは資産を購入した時に購入金額を全額必要費用としてしまうと、その年度だけ費用が大きくなり赤字となってしまい、その年度の正しい利益金額がわかりません。

またその次の年度からは、購入した資産を使用して利益をあげることになり、購入した年度にくらべると利益がかなりあがったことになり、かかってくる税金の金額も大きくなってしまいます。

そのような事態を避けるためにも、毎年計上できるようにして正しい利益金額が分かるようにしているのです。

ポイント2:毎年法定耐用年数が下がる

減価償却の計算方法には定額法と定率法の2種類あります。

定額法とは、減価償却対象の建物などの資産を耐用年数の期間中、毎年、同額を減価償却していく方法です。初めの1年から最後の年まで減価償却の金額は変わりません。

定率法とは資産を毎年、一定の割合で減価償却を計上する方法で、初めの1年は償却の金額は大きいものの年々償却額が小さくなっていきます。

定額法でも定率法でも、最終的に減価償却費として計上できる金額は同じですが、定率法は収益力が下がってくる後年の負担金額を小さくできるのがメリットです。

ポイント3:耐用年数を超えている中古住宅でも減価償却はできる

中古の建物の場合、すでに法定耐用年数を超えているということもあるでしょう。

減価償却の考え方は対象資産の耐用年数から計算しますので、耐用年数を超えた資産に対しては減価償却できない、と思われてしまうこともあります。

法定耐用年数を超えた中古の建物でも購入したら減価償却を行うことができます。ただし計算方法が通常とは違ってきます。

償却年数の計算式は、償却年数=法定耐用年数×0.2となりますが、償却年数が2年未満となる場合は原則として償却年数は2年となります。

ポイント4:法定耐用年数が下がると課税が増える

マンションなど賃貸物件を購入して減価償却を計上した場合、法定耐用年数が過ぎると課税金額が増えます。

これは法定耐用年数期間が終わることによって経費としての支出がなくなり、その分が利益として計上されその利益に税金がかかってくるからです。

ポイント5:評価額が上がると節税になる

土地や建物を所有していると、毎年、固定資産税がかかってきます。

固定資産税は「固定資産評価額」を元に算出されていますが、所有している土地が更地だった場合は評価額もグッと上がってしまいます。

評価額があがると固定資産税もあがってしまいますが、建物を建てると更地の時に比べて土地に対する固定資産税は安くなります。これは建物を建てることにより、土地の用途が決まってしまうからです。

減価償却資産の耐用年数表〔抜粋〕

鉄骨造以外の法定耐用年数3つ

鉄骨造以外にも、建物の建築構造には木材を骨格材としている木造(W造)、鉄筋とコンクリートを組み合わせた骨格材を用いている鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋と鉄骨とコンクリートを組み合わせている骨格材の建物である鉄筋鉄骨コンクリート造(RSC造)、軽くて加工がしやすいアルミニウムを使用したアルミ造(AL造)などがあります。

これらの建築構造の建物にもそれぞれ法定耐用年数は定められていますが、それはどれくらいなのでしょうか。

鉄骨造以外の法定耐用年数1:木造

日本で古くから行われている建築構造は木造です。木造はWoodの頭文字をとってW造と表記されます。

日本で木造の建物が多いのは、骨格材となる木材が入手しやすかったことと日本の多湿の気候に木材が合っていたことなどが挙げられます。

木造建築物の法定耐用年数は以下のとおりです。
・住宅用途では22年
・店舗用途では22年
・事務所用途では24年
・飲食店用途では20年

3mm以下の鉄骨造の建物よりも木造建築のほうが法定耐用年数は長くなっていますが、3mm超の鉄骨造になると木造よりも年数は長くなっています。

鉄骨造以外の法定耐用年数2:鉄筋コンクリート(RC造)

鉄筋コンクリート造は英語のReinforced Concreteの頭文字をとってRC造と表記され、コンクリートを鉄筋を組んだ型枠の中に流し込み固めたものが骨格材となります。

熱に弱く錆びやすいものの引張力に優れた鉄筋と、引張力に弱いものの熱に強く錆びないコンクリートのいいところを組み合わせて建物に必要な強度を出しています。

鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は以下のとおりです。
・住宅用途は47年
・店舗用途は39年
・事務所用途は50年
・飲食店用途は34年もしくは41年

飲食店用途の法定耐用年数は、木造内装の割合が延面積の30%を超えるか超えないかで法定耐用年数が変わってきます。

鉄骨造以外の法定耐用年数3:鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)

鉄骨鉄筋コンクリート造はSteel Reinforced Concreteの頭文字からSRC造と表記されます。

鉄筋の型枠の中心に鉄骨をいれ、そのまわりをコンクリートで固めた骨格材で、鉄筋コンクリートの強さに鉄骨の強さも組み合わせた建築構造です。

鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は以下のとおりです。
・住宅用途は47年
・店舗用途は39年
・事務所用途は50年
・飲食店用途は34年もしくは41年

鉄筋コンクリート造と同じく、飲食店用途の法定耐用年数は、木造内装の割合が延面積の30%を超えるか超えないかで法定耐用年数が変わってきます。

法定耐用年数を確認する方法

建物の法定耐用年数を確認するには、その建物がどのような構造でいつ建てられたのか、を確認すればわかります。

中古物件を購入する時などは、仲介をしてくれる不動産会社などに聞けばいいですが、チラシなどに築○○年などと表記もされています。

法定ではなく耐用年数を知りたい場合は以下の計算式で求めることができます。
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

鉄骨造の耐用年数は建物の寿命ではない

法定耐用年数は減価償却を行う資産が利用に耐えうる年数のことです。

物理的耐用年数とは、建物でいえば、鉄骨造や木造など骨格材などの品質維持や構造している物の仕組みが維持できる年数のことで、経済的耐用年数とは建物などの不動産的価値がなくなるまでの年数のことです。

それぞれの構造の法定耐用年数は述べたとおりですが、その年数がそのまま建物の寿命になるわけではありません。例えば世界遺産である法隆寺は世界最古の木造建築で、建てられたのは1400年以上も前のことです。

「メンテナンスをいかにこまめに行うか」ということも建物の寿命を延ばす一因です。耐用年数=建物の寿命ではない、ということを理解しておきましょう。

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