空き家問題とは何か?空き家問題の解決法4つと放置することのリスク
2020 10.21この記事はPRを含みます
空き家問題とは
「空き家問題」は、ここ数年しばしば話題になっています。
住む人がいなくなり管理されないまま放置された「空き家」が、都市部だけでなく地方も含めて全国的に急増している問題です。
空き家問題がこれほどまでにクローズアップされるのには、深刻な理由があります。
この記事では空き家問題が引き起こす社会的なリスクや原因、そして解決策について紹介していきます。
空き家問題の原因3つ
まずは、空き家問題がどのような原因で起きるのかを見ていきましょう。
空き家問題が生じる主な要因である「高齢化」「固定資産税」「新築物件」の3つにポイントを当てて解説していきます。
空き家問題の原因1:高齢化
空き家が発生する一般的な理由は、家の所有者が高齢で、老人ホームや介護施設、子供宅などに居を移してしまうことが挙げられます。
さらに少子化のため、空き家になった住宅に子供が戻ってくることもそう多くはありません。
こうした現象は、過疎化の進んだ地方だけでなく都市部でも頻繁に起こり得るため、空き家の数は全国的に増加傾向にあります。
空き家問題は、日本の抱える大きな社会問題の1つであり、少子高齢化や人口減少とも深くかかわっているのです。
空き家問題の原因2:固定資産税に関する問題
居住するための家屋の敷地として使用されている土地は、固定資産税を軽減する住宅用地の特例という制度が適用されます。
土地を更地にしてしまうと、この軽減措置が適用されなくなるため、空き家を取り壊さずボロボロになってもそのままにするというケースも多く見られました。
現在は2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」において、その空き家が環境悪化や倒壊の危険がある「特定空家」に指定されると、この軽減措置は適用されなくなっています。
空き家問題の原因3:新築が供給過多
空き家問題は意外なことに、新築物件の供給過多も原因の1つと言われています。
この場合の新築物件とは「自分で新しい家を建てて住みたい」という希望によって建てられた家だけでなく、資産運用や都市開発などの名目で供給される賃貸住宅も含みます。
現在、住宅需要がすでに飽和状態にある地域でも、こうした新築物件が世帯数を超えるペースで住宅市場に供給されています。
将来的にはこれらの新築物件も空き家となる可能性は高く、負の連鎖に陥っているといえる状況にあるでしょう。
空き家問題はどんな問題があるのか
続いて、空き家問題にはどのようなリスクがあるのかについてみていきます。
空き家問題は、その空き家の所有者だけでなく近隣住民にもさまざまなトラブルを招くことがあります。
空き家放置によるリスク7つ
空き家放置は法律や税制上のリスクだけでなく、個人の財産、近隣住民や環境に与える社会的問題など、様々なリスクがあります。
ここでは、空き家がそのまま放置されることで起きる問題を大きく7つに分けて解説します。
放置によるリスク1:税金がかかる
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」において、環境や衛生悪化、倒壊の危険のある空き家については、所有者が適切な管理を行うよう行政指導が入ることとなりました。
行政指導のもと適切な対処をしなかった場合、税制上の優遇措置がなくなり、徴収される税金の額も大幅に増える場合があります。
このように、空き家を放置することは、所有者にとって大きなデメリットにつながります。ただし、安全や環境に配慮した空き家の処置を行うことで、特定空家等の指定は解除されます。
放置によるリスク2:景観が悪くなる
風雨にさらされた空き家は、窓ガラスが割れたり屋根や壁面の崩落、倒壊などの危険があります。
また、建物自体の劣化だけでなく、樹木や雑草が生い茂り、容易に人が立ち入れないお化け屋敷のようになってしまうこともあります。
老朽化が進んだ空き家は、安全面のリスクもさることながら、ボロボロの見た目が周囲の景観を悪くすることがあります。
場合によっては重大な住民トラブルの原因になることがあるので注意が必要です。
放置によるリスク3:住宅の価値が低下する
放置されている期間が長ければ長いほど、空き家の劣化は進みます。そして修繕費用もかさむため、放置された空き家に買い手がつくことはほとんどありません。
すぐには人が住めないほど老朽化した空き家は、当然のように住宅としての資産価値も低下します。
このように、空き家の所有者にとっては、空き家を放置し続けることも将来的には大きなリスクを伴うことになります。
放置によるリスク4:利益を得る機会を失う
現状では住む人のいない空き家とはいえ、きちんと維持や管理をし、住宅として賃貸に出せば家賃収入などの利益を得られる可能性もあります。
土地に加えて建物(住宅)があるにも関わらず、有効利用せずに放置することは、空き家所有者にとっては利益を得る機会を損失していることになります。
空き家から利益を生み出すには、一般的に空き家バンク等を通した移住希望者への売却や賃貸の斡旋が代表的な例です。
また、近年はシェアハウスや民泊への活用法もみられるようになっています。
放置によるリスク5:犯罪の温床となる
放置された空き家でも、家財道具が残っている場合が多くあるため、知らないうちに不審者が入り込んでいることがあります。
単に寝床として空き家に不法滞在しているならまだしも、人が寄り付かないのをいいことに、内部で犯罪が行われて取り返しのつかない悲劇を生むこともあり得ます。
また、人のいない空き家は放火のターゲットにされることも多くあります。
空き家の放置することは、犯罪を引き起こす大きな要因ともなり得るのです。
放置によるリスク6:住宅施策の非効率化
空き家問題を行政上の観点からみると、空き家を放置し続けることは、住宅施策の非効率化問題につながります。
空き家の所有者に降りかかるリスクだけでなく、行政や地域にも不利益をもたらす場合があります。
空き家を含めた土地や建物を有効活用せずに死蔵することは、新しい住民の受け入れやお店の開店につながる機会を損失していることになります。
地域の活性化は、こうした住宅施策の効率化によってももたらされるので、空き家放置は行政的に見てもリスクの大きな行為と言えます。
放置によるリスク7:住民税の減少
住宅施策の非効率化によってもたらすもう一つの負の側面が、「住民税」の減少による地方自治体の財政破綻です。
ある研究によると、空き家率が30%を超えると自治体の財政は破綻するといわれています。国内でも、2007年に財政破綻した北海道の夕張市の空き家率は33%でした。
新しい住民の引っ越し(流入)がないまま、放置された空き家が増え続けると、住民税の税収が減少することから自治体の財政破綻につながる可能性があります。
空き家問題の解決法4つ
所有者だけでなく、行政的にも大きな損失をもたらす空き家問題についての解決方法はあるのでしょうか。
空き家問題の解決法として考えられる策や現在行われている施策を4点挙げていきます。
空き家問題の解決法1:移住希望者へ売却する
空き家問題の解決法の1つめは、移住希望者に売却することです。
近年はIターンやJターン転職と言われる、移住とともに地方で働くことを希望する人も増えています。
移住希望者への売却は、その移住希望者の住居として空き家を活用しようというものです。空き家を空き家のまま放置させないという「空き家問題」の根本的な解決策と言えるでしょう。
空き家問題の解決法2:空き家バンクを活用する
空き家問題の解決法の2つめは、空き家バンクの活用が挙げられます。
空き家バンクは空き家を有効活用したい所有者と利用希望者をつなぐシステムで、主に自治体や自治体から運営を委託された組織によって運用されています。
不動産業者の取扱品目としての空き家は、買い手がなかなかつかず利益が見込めないため積極的な売買の対象にはなっていませんでした。
しかし、自治体が主体となる空き家バンクは営利を目的とはしておらず、移住希望者への売却の斡旋も含め、住宅施策の充実策の一環として取り入れるところが増えています。
空き家問題の解決法3:シェアハウスに利用する
シェアハウスとは1つの物件を複数人で共有して住居にするスタイルになっています。
空き家問題の解決法として、空き家をシェアハウスに活用するという事例も増えてきています。
空き家の所有者は、事前に修繕やリフォームで初期投資が必要ですが、1世帯に貸し出すのとは違い、複数人からの継続した家賃収入が見込める利点があります。
また借り手側も、複数人で部屋を分けて共有するため一人当たりの家賃も低く抑えられ、異業種の人との交流も増えるといったメリットがあります。
空き家問題の解決法4:民泊の経営をする
2018年に住宅宿泊事業法(民泊新法)という新しい法律が施行されたのに伴い、シェアハウスと同様、空き家を民泊経営に活用するという方法が注目されています。
民泊新法は、個人宅を宿泊施設として有償で提供するというビジネスモデルに対して、従来の旅館業法とは別にルールを定め、健全な民泊サービスの提供を促進する目的で制定されました。
増加する訪日外国人の宿泊先や、地方では農業体験とセットの農家民泊など、活用の場が増えることが期待されています。
空き家問題における注意点
最後に、空き家問題において、所有者が注意すべき点を1つ挙げておきます。
空き家問題の最終的な解決方法の1つとして、空き家そのものを「解体」することです。もし空き家を解体することになった場合の注意点についてみておきましょう。
解体を行うとき
空き家を住居として継続活用するのに比べ、壊して更地にしてしまえばそれで終わりの解体はハードルが低そうですが、解体には決して少なくない額の費用がかかります。
解体で出た廃材や家具の処理費用も含めると、場合によっては数百万円の単位でお金がかかることがあるので注意しましょう。
また、自治体によっては解体費用を助成する補助金制度を設けているところがあります。もし空き家対策として家屋の解体を検討する場合は、事前に自治体に確認しておきましょう。
空き家問題のリスクを理解しよう
全国的な社会問題としてクローズアップされている空き家問題について紹介しました。空き家の増加は所有者だけでなく社会全体に数多くのトラブルを生じさせます。
空き家を負の遺産として次世代に残さないためには、空き家問題のリスクを私たち一人一人がしっかり理解することが重要です。
空き家問題の解決への道のりはまだ半ばといったところですが、今後も解決に向けて継続的に社会全体で取り組んでいく必要があるでしょう。