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普通借地権と定期借地権の違いとは?借地権の減価償却について知っておくべき4つの基本事項

2020 06.4この記事はPRを含みます

借地権と減価償却について

土地を借りる権利である借地権と、固定資産の減価償却とは、どのような関係があるのでしょうか。結論を先に言いますと、借地権は減価償却できない、というのが一般的な規則です。

借地権にもいくつか種類がありますが、なかには減価償却に類似した会計処理をすることができるものもあります。

ここからは、借地権と減価償却について詳しく見ていきましょう。

借地権とは?

借地権とは、土地を借りてそれを利用する権利のことです。土地の上に住居や工場などを建築しようとするとき、その土地を購入するのではなく、借りることによって必要経費が少なくなるというメリットがあります。

土地を借りるとき、貸主である地主と契約を締結します。それによって借主は借地権を獲得し、その土地をいろいろな目的のために利用することができます。ただし、借地権の種類によっては、その目的が限られることがあります。

減価償却とは?

減価償却とは、固定資産を購入したとき、その金額を使用期間に分割して会計処理をすることです。仮に1000万円の機械を買い入れて、それを10年間使用した場合、各年の減価償却費は100万円となります。

商品を分割払いで購入するのと似ていますが、減価償却の対象は商品ではなく固定資産です。減価償却の対象となる固定資産は、有形でも無形でもかまいません。

更新のある借地権

借地権は一定の契約期間が過ぎたときに消滅しますが、このときに契約を更新できる借地権が、更新のある借地権です。ということは、更新のない借地権もあるということになります。

契約期間が満了すると契約が更新されない借地権がありますが、借地権としてはむしろこれが一般的な借地権です。ここでは、更新のある借地権について、どのようなものがあるのか紹介します。

旧法借地権

1992年に新しい借地借家法が制定されましたが、それ以前の法律に基づく借地権が旧法借地権です。ですから、旧法借地権というのは、1992年以前に契約された借地権のことをいいます。

旧法借地権では、借地契約は正当な理由がない限り更新されることになっていました。土地を借りている側からの申し出がない限り、借地契約は継続されるものでしたが、地主の権利を守るために新しい法律が制定されたのです。

借地借家法

普通借地権

普通借地権は、1992年以降に契約された借地権のうち、更新のある借地権のことをいいます。地主が土地を売却して、土地の所有権がもとの地主から他人に移っても、借地人はそれに対抗して、契約が続くかぎり借地権を持ち続けられます。

1992年の借地借家法により、更新のある借地権と更新のない借地権に分かれました。更新のある借地権を普通借地権といいます。では、更新のない借地権にはどんなものがあるのでしょうか。

更新がない借地権

1992年の借地借家法により、更新がない借地権が生まれました。それ以前では、土地を貸している地主は、よほどのことがない限り、借地権を更新しなければなりませんでした。

更新される借地権では、地代は入ってくるものの、土地は借地人に自由に利用されることになります。それは言い換えると、地主は一度自分の土地を他人に貸したら、自分の土地として利用することができないということになります。

定期借地権

定期借地権とは、1992年に生まれた新しい借地権のうち、一定の期間に限って土地を借りる権利のことをいいます。定期借地権には、一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権という3種類があります。

定期借地権には契約の更新がありません。また3種類の定期借地権があるのは、借主がどんな目的で土地を借りるのかということによって違いがあるからです。借地期間も建設する建物の種類も違います。

定期借地権の種類

契約更新のない定期借地権には、一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権の3種類あります。更新がないといっても、借地権の契約期間は長いので、物品のリース契約などとはさまざまな点で違っています。

また、定期借地権は減価償却の対象になるのかについて見ていきます。

一般定期借地権

一般定期借地権は、定期借地権のうち、契約期間が50年以上の借地権のことをいいます。一般定期借地権には、契約の更新はありませんし、契約期間の延長も建物買取請求権もありません。

一般定期借地権は契約期間が長いですが、そこに借主が建築した建物などは取り壊し、更地にして土地を返却しなければなりません。しかし、新たに一般定期借地権を契約し直すことは可能です。そのときに更新料などが必要になります。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、契約期間が30年以上で、期間満了後に地主が建物を買い取る借地権です。地主は、契約終了後に自分の土地に建てられた建物の所有者になり、それによって借地権は消滅します。

建物譲渡特約付借地権では、借地人は土地を更地にして地主に返却する必要はなく、その分費用負担が少なくてすみます。また、地主はその土地に建っている建物の所有者になることで、賃貸料などの収入を見込めます。

事業用定期借地権

事業用定期借地権は、住宅ではなくコンビニや工場など、事業のために必要な土地を借りる借地権です。ですから、事業用定期借地権で借りた土地に、住宅を建てることはできません。

事業用の土地を借りる権利ですので、契約期間は10年以上50年未満になっています。契約の更新はできません。また、契約満了後に建物を地主に買い取ってもらうこともできないため、土地を更地にして返却しなくてはなりません。

普通借地権の減価償却について

1992年の法律によって成立した普通借地権は更新がありますが、減価償却の対象ではありません。しかし、経理上の処理によっては、減価償却と同等の費用を計上することができます。

では、普通借地権に対してどのような会計処理をすることによって、減価償却と同じようなことができるのでしょうか。

普通借地権の減価償却1:対象とはされていない

普通借地権は、減価償却の対象とされていません。普通借地権は、更新するたびに契約期間が短くなりますが、何度でも更新できますから、半永久的に土地を借りることができるのです。

減価償却というのは、固定資産の金額を、その固定資産の使用年数によって算出するものですから、使用年数が半永久的だとすれば、そもそも借りた土地の地代を、この減価償却の計算式に算入することはできません。

普通借地権の減価償却2:借地権の更新料の支払いがなされる場合

普通借地権を更新するときに更新料を支払った場合は、それを減価償却として計算することができます。更新料を、その土地を一定期間借りるための必要経費と考えて、一定の計算式によって減価償却相当の必要経費として算出されるのです。

普通借地権によって支払う借地料は、減価償却の対象にはなりませんが、更新料を減価償却に充てることができます。

一定の方法で計算した減価相当額が必要経費に算入される

普通借地権の更新料が支払われたとき、一定の方法で計算した減価相当額が必要経費に算入されます。普通借地権の契約期間が満了したとき、その借地権の時価が、更新料の分だけ減少したと考えて、価値減少分を経費に算入するのです。

一定の方法とは、更新直前の借地権の帳簿価格に更新料の額を掛け算して出た値を、更新時の借地権の時価で割り算することです。ですから、更新直前に借地権の帳簿価格が0の場合は、経費も0です。

定期借地権の減価償却について

契約期間が決まっている定期借地権は、減価償却の対象にはなりませんし、繰延資産として償却することもできません。

また定期借地権は、契約期間が満了したときに、そこに建てている建物を撤去し、更地にして土地を返却しなくてはなりません。

定期借地権の減価償却1:対象にはなっていない

定期借地権は、借主に有利な契約になっていますが、税法上は減価償却の対象になっていません。一定期間土地を借りることが保証されている定期借地権は、その地代を減価償却に充てることができないのです。

定期借地権には、一般定期借地権・建物譲渡付借地権・事業用定期借地権の3種類あることを説明しましたが、いずれも減価償却の対象になっていないという点では共通しています。

定期借地権の減価償却2:繰延資産として償却することができない

定期借地権は、繰延資産として償却することもできません。繰延資産とは、実体のある資産でありません。また支出した金額を支出した時点ではなく、先延ばしにして会計処理をする費用のことをいいます。

定期借地権の借地料を、繰延資産という会計上の費用として処理することができません。ただし、賃貸借契約のときに支払う礼金や権利金は、繰延資産として処理することができます。

建物の減価償却

定期借地権によって建設された建物には耐用年数がありますから、それは減価償却の対象になります。定期借地権は50年という期間が設定されていますから、その期間に建て替えがあるかもしれません。建て替えがなくても、建物は減価償却の対象になります。

事業用に定期借地権を利用する場合、そこに建設した建物が借主の事業経費の一環として、減価償却の対象になるのはむしろ当然のことです。

定期借地権の減価償却類似の会計処理

定期借地権そのものは減価償却の対象ではありませんが、減価償却類似の会計処理をすることができます。減価償却は、財務会計上とても重要なことですから、どのようにすれば減価償却類似の会計処理ができるのか、考えてみる必要があります。

借地を減価償却の対象である固定資産とみなすことはできませんが、減価償却類似の会計処理によって借地料を経費として収入から差し引くことができるのです。

毎年の支払い地代を費用として計上

定期借地権を取得すると、地主に対して毎年地代を支払わなくてはなりませんから、これを費用として計上することができます。定期借地権そのものは減価償却の対象ではありませんが、地代をそれに見立てて会計処理をすることができます。

税務会計上、さまざまな規則が存在していますが、それをうまく利用して毎年支払っている地代を必要経費として計上すれば、減価償却はできなくても会計上有利になります。

借地権の減価償却について知っておこう!

1992年に新しい借地借家法が制定されて、それまでの旧法借地権と新しい法律の借地権が混在していますが、減価償却できるのかどうか、しっかりと知っておく必要があります。

借地権はすべて、基本的には減価償却の対象にはなりませんが、事業を円滑に運営するために、減価償却類似の会計処理によって、必要経費として計上することができる場合がありますので、それをきちんと理解しておくことが大切です。

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