不動産の手付金とは?手付金の種類4つと考えられるリスクを解説
2022 07.2この記事はPRを含みます
不動産の手付金とは
「不動産の手付金」とは、不動産売買時に買主から売主に支払われる金銭です。
これは、不動産売買の契約が結ばれた際に支払われるもので、この手付金によって、たとえば相手方が解約を申し出た際など、債務不履行の有無を問わず解約が認められます。
あるいは、相手方に債務不履行があった場合に、損害賠償もしくは違約金として使用されるも金銭でもあります。
この不動産手付金は、契約時の取り決めによって、売買代金の一部に充当されるのが一般的です。また、手付金の受け渡しには、契約の成立を表す意味合いもあります。
手付金の相場
手付金の相場は、物件価格の5~10%となっています。ただし、これは法的に定められたものではなく、あくまでも目安の数字です。
売主によって、高額の不動産手付金が設定される場合もあれば、すぐに買い手のつきそうな土地や物件は少額に設定される場合もあります。売主の合意さえあれば、手付金ゼロで不動産契約を結ぶことも可能です。
手付金は、ローンではなく基本的に自己資金から支払うことになります。
手付金の支払いのタイミング
手付金は、不動産売買契約が結ばれるタイミングで、基本的に現金で支払われます。
ただし、状況によっては振込で支払われることもあります。売買契約書へサインするのと同時に手付金を支払うことにより、売主と買主の合意が成立した証となります。
不動産売買は、契約を締結した後一定期間を経てから、残金の支払いや引き渡しが行われることが多く、手付金の支払いには、その間の契約を法的に安定させる意味合いも含まれています。
不動産の手付金の種類4つ
不動産売買の手付金は、違約手付金・解約手付金・損害賠償の予定のある付金・証約手付金という4つの種類に分かれ、手付金によって内容も異なります。
それでは、それぞれの手付金の性質と、どういった状況で効力を持つのかなど、その内容について詳しく見ていきましょう。
不動産の手付金の種類1:違約手付金
「違約手付金」は、締結した契約に違反があった場合、つまり債務不履行時に意味を持ちます。
買主側に違約があった場合、売主に支払う損害賠償とは別に、違約金として手付金が没収されます。また、売主側に違約があった場合には、手付金を買主に返還するのと同時に、同じ金額を違約金として支払うことになります。
そのため、手付金に違約手付の意味を持たせた不動産契約も多く存在しています。
不動産の手付金の種類2:解約手付金
「解約手付金」は、解約権を留保させる性質を持っています。
解約手付金として手付金の受け渡しが行われた場合、契約成立から契約の履行に着手するまでの間は、売主または買主どちらか一方だけの意思で契約を解除することが可能です。売主側の事情で解約を申し出た場合は、手付金の倍額を買主に返還する必要があります。
一方、買主側の事情で解約を申し出た場合、手付金を放棄することで解約が成立します。その際に、解約に伴う損害賠償が発生することはありません。
不動産の手付金の種類3:損害賠償の予定のある手付金
売主もしくは買主の一方に契約違反(債務不履行)があった場合に備えて、不動産契約時にあらかじめ損害賠償の金額を決めておくことがあります。これを、「損害賠償の予定のある手付金」と言います。
実際に債務不履行があった場合、売主側であれば手付金の倍額の返金が必要となり、買主側であれば手付金が没収されます。
損害賠償額の予定に関する契約条項については、当事者の一方に不利になる可能性もあるため、そのことに関連した法律も定められています。
不動産の手付金の種類4:証約手付金
「証約手付金」は、不動産売買が成立した証として、買主から売主に対して交付されるものです。
売買契約を締結するまでには複数の交渉段階があり、どの時点で契約が成立したのか明確でない場合があります。その際、証約手付金を交付することにより契約の成立が明示されます。
また、買主が支払った手付金を売主が受け取るという行為で、双方が不動産売買に合意したことを明確に意思表示することにも繋がります。
手付解除の事例
続いて、具体的な手付解除の事例を見て行きましょう。
どのような場合に「手付解除」が起こりうるのか、売主側と買主側の双方の立場からの事例をご紹介しますので、参考にして下さい。
買主側による手付解除(手付金放棄)
まず初めに、買主側による手付解除の事例を見て行きましょう。
土地の売買契約時に定めた「契約の履行に着手するまで又は所定期日までは手付解除できる」という特約条項に基づいて、買主が手付解除を申し出ましたが、売主側ではすでに契約の履行に着手していたため、買主に対し違約金の支払いを求めて提訴しました。
原審では売主の請求が認容されましたが、控訴審では履行の着手後も手付解除できる旨の特約であるとして、売主の請求が棄却されています。
このような特約条項を用いる場合は、疑義が残らないよう、契約時に解釈を明確にしておくことが必要です。
売主側による手付解除(手付金倍返し)
次に、売主側による手付解除の例を見て行きましょう。
たとえば、売主と買主の売買契約が成立し、売主は買主から手付金を受け取ったとします。その後、他の人からより高額で不動産を買い取りたいという申し出があり、売主は最初の契約を解除することに決めました。
この場合、売主側の都合で解除を申し出ているため、受け取った手付金に加えてペナルティとして同額を支払うことにより、契約解除が成立しました。
売買契約書にあらかじめ手付金放棄による解除に関する条項が盛り込まれている場合に、手付金放棄による解除が可能です。
手付金の支払いで考えられるリスク
ここからは、手付金の支払いで考えられるリスクと対策について見て行きましょう。
ここまで見て来たように、不動産の手付金を支払うことは売買の保証となりますが、その一方でいくつかのリスクを負う場合もあります。
これから先、不動産売買を考えている人は、リスク面に関してもしっかりと把握しておきましょう。
ローンの審査が通らなかった場合
契約を締結したものの、ローン審査が通らず不動産の購入ができなくなる場合もあります。
手付金を支払う前に、手付金が返金される条件について、契約書をよく確認しておくことが大切です。
契約書に「融資利用の特約」(ローン特約)が付いていれば、売買契約締結後に住宅ローンの利用ができなかった場合も、契約を解除することが可能です。
融資利用の特約の具体的な内容についても、契約書を事前に確認しておくことが必要となります。
不動産会社が倒産してしまった場合
不動産売買の契約が成立した後に、売主である不動産会社が倒産してしまうというケースも考えられます。
そのような場合に備えて、宅地建物取引業法では、一定金額以上の手付金などの授受がある場合、保全措置を講じるよう義務付けています。
また、リスクに備えて、不動産保証協会では「一般保証制度」という無料のサービスを提供しています。
保証には条件が伴いますが、この制度を利用することにより、取引終了まで不動産保証協会が手付金の返還を保証してくれます。
不動産売買契約の手付金の仕組み・手続き方法
「不動産」は非常に大きな買い物です。動く金銭の額も大きく、購入に至るまでの手続きも複数の段階に分かれています。
そのため、契約を結ぶ際も慎重になる必要があります。
以下に、不動産売買契約の手付金の仕組みや手続方法、または契約解除の方法についてご紹介して行きます。手続きに一定の条件や期限が設けられていることもありますので、色々なケースに備え、知識を蓄えておきましょう。
契約解除の方法
契約解除に関しては一定の要件が設けられていますが、売主もしくは買主のどちらからでも申し出ることが可能です。具体的には、以下のような方法で手続きします。
売主側が契約解除を申し出る場合は、契約解除の意思を買主に伝え、手付金の倍額を返還し契約を解除します。
買主側が契約解除を申し出る場合は、具体的には内容証明郵便などを使って、手付金の放棄と契約解除の意思を売主へ知らせます。これで契約解除が可能となります。
契約解除する場合の期限
契約解除する場合、売主もしくは買主のどちらかが契約の履行に着手するまでに申し出ることが必要です。
「契約の履行の着手」というのは、具体的には、売主が売却する不動産物件の修復を始めたり、買主が内金を支払った場合などが該当します。
ただし、どのような内容の行為が契約の履行に該当するのかはケース・バイ・ケースです。その都度、不動産業者や専門家へ確認することが大切です。
住宅ローン特約の場合の契約解除
住宅ローンの本審査が売買契約書の期日までに内定しなかった場合に限り、契約を白紙に戻せる特約として、住宅ローン特約(融資利用の特約)があります。
売買契約書に住宅ローン特約の条項が付いていれば、手付金はそのまま買主に返還され、損害賠償も発生しません。
買主が不動産購入にローンを利用する際、融資が受けられるかどうか確定していない段階で売買契約を締結するため、買主を保護する目的でこの特約が設けられています。
契約する前に手付金の返還条件をしっかり確認しよう
不動産売買において、万一の場合に手付金が返還されないというリスクを避けるため、手付金を支払う前に、不動産業者などの専門家から返還時の条件を詳しく説明してもらうことが大切です。
特約条項などはあらかじめ解釈を明確にし、売主側と買主側で解釈の食い違いがないようにしておくことが肝要です。
なお、不動産保証協会の一般保証制度(無料)を利用する場合は、不動産業者が不動産保証協会に加入していることが前提条件となります。利用する業者についても、事前にしっかり調べておくとよいでしょう。