kinple金融(kinyu-)の世界をsimpleに

【種類別】フリーレント会計処理の特徴6つ|法人税・消費税上の取扱いは?

2020 06.4この記事はPRを含みます

フリーレントとは

フリーレントって何だかご存知ですか?賃貸物件を探していると、目にする「フリーレント物件」どんな物件なのでしょうか。そのままの意味で、フリー(無料)レント(賃貸料)なのですが、無料なのはもちろん一定期間です。

近年目にすることの増えてきた「フリーレント物件」ですが、入居時は、なにかと初期費用がかかるので、費用が抑えられ人気があります。貸主としても、物件を選んでもらいやすくなるメリットがあります。

フリーレントの会計処理の種類

貸主も、借主もメリットのある魅力的な「フリーレント物件」ですが、実際借りたときの会計処理はどうなるのでしょうか?入居は開始していても無料なので現預金に動きはありません。もちろん貸主側にも現預金の受取はないです。現預金の支払いの発生がないのに「仕訳をする」処理ができるのでしょうか?

実は、フリーレントの会計処理は、「仕訳なし」の処理と「仕訳をする」処理の2種類があります。

濱田会計事務所|フリーレントの「借主側」の会計処理と消費税の関係

仕訳なしとする処理

一般的なのが、「仕訳なし」とする処理です。実際に現金の動きがないので、無料の期間は値引きや免除と考えて、処理を必要としません。帳簿と現金の動きが一致するので、わかりやすい処理です。

簿記などの知識がなくても理解しやすい処理です。では、もう一方の「仕訳をする」処理はどうでしょうか。

仕訳する処理

実際、物件を借りているのだから、仕訳の計上をするべきと考える場合は「仕訳をする」処理も選択できます。契約期間が定まっている場合に選択することが多いです。契約期間の支払総額をもとに仕訳する金額を算出し、計上します。

現預金の発生で考えるのではなく、賃貸契約の総額を契約期間の分と考えるとうなずけます。

【種類別】フリーレント会計処理の特徴

フリーレントの会計処理は2種類ありました。どちらにしようか悩んでしまうかも知れません。どちらを選んでも、間違いではありませんが、会計処理の選択の参考になるように、フリーレント会計処理の特徴を種類別にみていきましょう。

「仕訳なし」と「仕訳をする」処理の違いを理解して、フリーレント会計の処理を選択しましょう。

仕訳なしとする処理の特徴4つ

まずは、お金の動きに忠実な「仕訳なし」とする会計処理の特徴をみていきましょう。何もしないのだから簡単ですが、本当になにもしなくて大丈夫なのでしょうか?「仕訳なし」とする処理は一般的なのでしょうか?

「仕訳なし」とする処理には特徴が4つあります。

フリーレント会計処理の特徴1:非常にシンプル

実際の現預金の動きと揃えて、フリーレント期間は仕訳なしとする会計処理は非常にシンプルな処理です。フリーレント期間は仕訳をせずに、支払いが始まったら、通常通りの仕訳を起こすだけです。

家賃の発生に合わせて、家賃を計上していきます。通常の経費の計上となんら変わりがありません。例えば4月から入居してフリーレント期間が3か月であれば、7月分から仕訳をおこします。4月から6月の3か月は、仕訳をしません。

フリーレント会計処理の特徴2:実務で採用されていることが多い

実際には賃貸が始まっているのに、会計で仕訳を起こさないと不安に感じると思いますが、実務ではこの方法が一番多く採用されています。ただし、契約期間が定まっていない契約の場合が多いです。

もし仕訳を起こそうとしても、支払いが生じていないので起こしようがないと思う人も少なくないでしょう。

フリーレント会計処理の特徴3:中小企業で使われる

フリーレント期間に「仕訳をしない」会計処理は、多くの中小企業で選択されています。人員が少なく高度な会計処理をするのが難しい中小企業では、決算の開示先も限られているため、簡単な会計が好まれ、さらに中小企業の会計ルールも満たすからです。

少額の家賃であれば、「仕訳をしない」会計処理が簡単ですが、多額の場合には会計上の収益にも税務上にも多少なりとも影響がでます。

フリーレント会計処理の特徴4:少額の仕訳は発生する

「仕訳なし」と言っても実際は賃貸に関係する仕訳は起こすことになります。フリーレント期間に無料なのは家賃だけで、一般的に共益費や水道光熱費などは、発生する契約がほとんどだからです。

費用は「発生主義」で、収益は「実現主義」で認識するのが会計基準の原則となっています。よって、共益費などは「発生主義」により計上するのが好ましいでしょう。フリーレント期間でも発生した共益費などの仕訳を起こします。(共益費/現預金)

仕訳する処理の特徴

フリーレント賃貸は、すぐに解約されると貸主は不利益をこうむります。そのため、契約期間を定めた契約をすることが多いです。契約期間を決め、途中解約ができない契約にすることでリスク回避します。

契約期間が決まっている契約の場合は賃料総額が確定するので、「仕訳をする」会計処理を選択できます。契約期間が定まっていることにより、正確な毎月の計上家賃額が算出できるからです。さらに途中解約ができない契約であれば、なお正確さが増します。

フリーレント会計処理の特徴5:フリーレント期間を含む賃貸借期間で按分

契約期間が定まっている場合は、賃料総額をフリーレント期間も含めた賃貸期間で按分して仕訳をおこします。これにより、賃貸期間中は、平均して経費が計上されます。キャッシュフローとは一致しません。

現預金の動きとは金額が一致しないため、多少高度な会計処理になります。ただ、初めに賃料総額をもとに按分してしまえば、それほど難しい仕訳ではありません。

フリーレント会計処理の特徴6:中途解約ができない契約の場合に行われる

契約期間を定めていても、中途解約になると、せっかく按分して計上していた金額が支払い総額と一致しません。したがって、「仕訳をする」会計処理は、中途解約ができない契約の場合に行われます。

中途解約ができる契約の場合には「仕訳なし」の会計処理が好ましいでしょう。なぜなら、按分のもととなる支払総額に根拠がないからです。仮に予定で総額を算出していたとしましょう。もし、途中解約をせざるを得ない場合には、後々の経費が実際の支払いより減ってしまいます。

【種類別】フリーレント会計処理の法人税・消費税上の取扱い

フリーレント会計処理の2種類は理解できましたか?では、法人税・消費税上の取り扱いはどうなるのでしょうか。会計処理によって税金に影響はでるのでしょうか?

実は従前の税務上の取扱は、「仕訳する」会計処理が妥当であるとされてきましたが、現在は2種類とも認められています。今の日本では、フリーレント会計について正確な規定がないため、根拠のある仕訳であれば認められるのでしょう。

仕訳なしとする処理の取扱い

近年、フリーレント期間は値引きと認識されていて、「仕訳なし」処理の場合にも、税務上も損金として計上しなくても問題ありません。賃貸料の発生時から、仕訳にともない損金に計上することとなります。

会計上と税務上の経費と認められるものには、違いがあります。税務上経費と認められるものを損金としていますが、フリーレント期間の会計については、会計と同じ経費が損金と認められます。

仕訳なしとする処理の取扱い1:法人税上の取扱い

「仕訳なし」の処理を選択している場合、法人税上も損金に計上する必要はありません。フリーレント契約期間は、実質支払っていないので「仕訳なし」の処理と同じく損金は発生しないのです。会計上の家賃と損金計上の家賃がイコールなので、明朗です。

仕訳なしとする処理の取扱い2:消費税上の取扱い

「仕訳なし」の処理を選択している場合、法人税上と同じく、消費税上も取扱われません。消費税は、あくまでも対価に支払ったものが課税扱いとなるため、この場合は課税仕入に該当しません。

後に課税仕入に該当してきます。会計期間をまたいだ場合には、後期の消費税の支払いが減ります。後期に売上があがる予定がある場合にはメリットがあります。

仕訳する処理の取扱い

「仕訳をする」会計処理を選択した場合、税法上も仕訳とイコールの取り扱いとなります。いわゆる発生主義に基づいた会計となります。フリーレント賃貸期間も、実際はすでに入居しているので、全期間の支払総額から按分して仕訳をおこしているからです。

仕訳する処理の取扱い1:法人税上の取扱い

按分して賃貸料を計上した場合、法人税上はもちろん計上した賃貸料を損金に計上する必要があります。総支払金額から按分するので、実際には支払ってはいませんが、「仕訳なし」の会計処理と比べると、フリーレント期間の含まれた期間の損金が増えることとなります。

損金が増えるということは、増えた分法人税が免除されるということです。ただし、後に反映する損金が減ります。

仕訳する処理の取扱い2:消費税上の取扱い

按分して賃貸料を計上した場合、消費税上も仕訳をおこした分を損金に算入することができます。

消費税を計算するうえで、消費税の発生は「課税仕入を行った日」に発生することとなっています。そして発生は「法人税法や所得税法上の費用計上時期と一致する」ことが原則になっているからです。「仕訳なし」の会計処理と比べると、フリーレント期間も損金を計上できるので、その分の仮払消費税が増えます。ただし、後の期間の仮払消費税が減ります。

フリーレント会計処理の仕訳例

では、実際にはどのような仕訳をするといいのでしょうか。実際の仕訳をみてみましょう。「仕訳なし」or「仕訳する」の会計処理の選択によって、法人税や消費税上の取扱われる期間が変わるので、契約期間の定めがある場合には家賃の負担をしたい時期を考え、会計処理の選択をしましょう。

ただし、税務上は会計の仕方の継続性を重要視しています。処理方法をころころ変えると、ある期間には13か月分計上されたり、ある期間には11か月分計上されたりするからです。一貫性のある会計が求められます。

フリーレント会計処理の仕訳例:仕訳なしとする処理

「仕訳なし」なのでフリーレント期間は仕訳の必要がありません。ただし、先述のとおり水道光熱費などは発生しますので、水道光熱費/現預金の仕訳を計上します。フリーレント期間終了後からは、実際に支払った賃貸料を仕訳します。(地代家賃/現預金)

このように仕訳をしないと、引っ越し時期には経費の計上ができませんが、後々計上することになります。法人税・消費税にも後々反映されるので、フリーレント期間の家賃を引っ越し時期に計上したい場合には適しません。

フリーレント会計処理の仕訳例:仕訳する処理

「仕訳をする」会計処理の場合は、契約期間の支払い賃貸総額÷支払い回数の契約期間、毎月計上します。(地代家賃/未払金)フリーレント期間終了後は、毎月実際の支払い分も計上します。(未払金/現預金)

このような仕訳をすると、引っ越し時期にも按分した分の家賃の計上ができ、それにともない法人税・消費税にも反映します。少し仕訳には手間がかかりますが、引っ越し時期に家賃を計上したい場合には適しています。

フリーレント会計処理と特徴を理解しよう

フリーレントでの会計処理について解説しましたが、いかがでしたか?

仕訳なしと処理する場合と、仕訳する場合とでの方法と処理の特徴について解説しましたが、いずれの処理方法であれ、損金計上できる家賃のトータルは変わりません。

仕訳なしと処理する場合がシンプル、明瞭で分かりやすいと思いますが、仕訳ありの場合、法人税上計上する損金が増えるということになり、増えた分法人税が免除されるということもあります。

どちらの処理がご自身の状況にふさわしいかを検討し、フリーレントを取り入れる際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

\ お金の勉強をしよう/
ページの先頭へ